- 「もう年だから新しいことを覚えるのは無理」「記憶力が衰えてきた」そんな風に思っていませんか?
- 実は、脳科学の最新研究は、私たちの「加齢=衰え」という固定観念を根底から覆す驚くべき事実を明らかにしています。
- なぜなら、年齢を重ねることで向上する能力があり、感情や認知の習慣化によって、生涯にわたって成長し続けることができるからです。
- 本書は、単なる行動の習慣化を超えて、感情・認知・身体を統合した生涯学習のアプローチを科学的根拠とともに提示してくれます。
- 本書を通じて、「足るを知り、今に感謝しながら、一生懸命に成長するスパイラル」を描く方法を学ぶことができるでしょう。
堀田秀吾さんは言語学者(法言語学、心理言語学)で、明治大学法学部教授です。1999年にシカゴ大学言語学部博士課程を修了し、言語学博士(Ph.D. in Linguistics)を取得されました。その後、2005年にはヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程を修了するなど、言語学と法学の両分野で深い知識を積み重ねてこられました。
堀田さんの研究の特徴は、司法分野におけるコミュニケーションを、社会言語学、心理言語学、脳科学などの様々な学術分野の知見を融合して多角的に研究していることです。法廷での言葉の使い方が判決にどう影響するか、人の心理や行動に言語がどのような作用を与えるかといった、実社会に直結する研究を国内外で展開されています。
研究活動だけでなく、企業の顧問や芸能事務所の監修、ワイドショーのレギュラー・コメンテーターなど、幅広い分野で活躍されているのも特徴的です。『科学的に元気になる方法集めました』『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』『図解ストレス解消大全』など、学術研究を一般の方にも分かりやすく伝える著書を多数執筆されています。
学問と実生活の橋渡しをすることで、より多くの人が科学的知見を日常に活かせるようになってほしいという想いが込められています。
今回の投稿は前回に続く形の本書のご紹介の2本目です。前回の投稿はこちら「習慣は、“技術”である!!『科学的に証明された すごい習慣大百科』堀田秀吾」からぜひご覧ください。
科学が証明する「加齢による能力向上」ー 一歩先に進むための新しい視点
「勉強するのに遅すぎるということはない」この言葉の背後には、驚くべき科学的事実があります。
「他人の感情を正しく読み取る能力は50代がもっとも高い」 「語彙力のピークは60代後半から70代はじめ」 「歳をとることは衰えていることではなく、一歩先に進むことだと解釈してください」
これらの研究結果は、私たちの加齢に対する認識を根本的に変えてくれます。確かに記憶力のテストでは若い人に劣ることがあります。しかし、他人の感情を目を見ただけで正しく読み取る能力については、50代の成績がもっとも良いんです。
さらに興味深いのは、抽象的思考力、空間推理力、推論的推論力などは中年以降も向上し続けるという事実です。そして語彙力のピークは60代後半から70代に達します。つまり、年齢を重ねることで、人間関係や複雑な思考において、むしろ優れた能力を発揮できるようになるということです。
私がこの研究結果で特に感銘を受けたのは、「一歩先に進む」という解釈の転換です。
多くの人が加齢を「失うもの」として捉えがちですが、実際には「得るもの」の方が多いかもしれません。
若い頃の瞬発力や記憶力とは異なる、深い洞察力や人間理解力、豊かな語彙による表現力など、年齢を重ねることでしか得られない能力があるんです。
この視点の転換は、学習に対するモチベーションを根本的に変えてくれます。「もう覚えられない」ではなく、「今の年齢だからこそ理解できることがある」「経験を重ねた今だからこそ、より深く学べる」という前向きな姿勢を持てるようになります。
実際、30分程度の読書でも学力が向上するという研究結果もあります。
適度な読書習慣を続けることで、脳の可塑性を活かしながら、年齢に関係なく学習能力を高めることができるんです。
感情と身体をつなぐ習慣術 ー 怒り・思いやり・感謝が免疫力に与える影響
習慣化というと、多くの人が行動の習慣(運動、読書、早起きなど)を思い浮かべると思います。しかし、本書が教えてくれるのは、感情の習慣化が身体に与える驚くべき影響です。
「怒ると6時間以上も免疫力が下がる」 「他者への憤りや敵意の感情を抱くと、24時間以上も免疫力が低まりつづける」
この研究結果には驚きました。怒りという感情が、これほど長時間にわたって私たちの身体に悪影響を与え続けるとは思いませんでした。しかも、ただ気分が悪くなるだけでなく、免疫システムという生命維持に直結する機能に影響するんです。
一方で、希望的な知見もあります。
「心が穏やかになる映像を観ると免疫系機能が高まる」 「思いやりのある行動をとると免疫力がさらに増加する」
思いやりの行動を取った後、1時間後にはIgAレベル(免疫指標の一つ)が正常に戻りますが、その後約6時間にわたって再び徐々に増加するという研究結果があります。
つまり、思いやりの行動は、その場だけでなく、長時間にわたって私たちの免疫力を高め続けてくれるんです。
この知見から学べるのは、感情のマネジメントも習慣化できるということです。
怒りをコントロールし、思いやりを実践することは、単なる道徳的な行為ではなく、科学的に裏付けられた健康法でもあるんです。
食事の習慣についても興味深い発見があります。お皿のサイズを小さくするだけでカロリー摂取量が減るという研究結果は、マインドフルネスの重要性を示しています。食べることに集中し、「マインドフルネス」を意識することで、自然と健康的な食事習慣が身につくんです。
感謝日記をつけることで幸福度が上がるという研究も、感情と身体の密接な関係を示しています。感謝という感情を意識的に育てることで、主観的幸福感が向上し、それが身体的な健康にも好影響を与えるという好循環が生まれます。
これらの研究から分かるのは、私たちの感情と身体は切り離せないということです。
だからこそ、行動の習慣化と同じように、感情の習慣化にも意識的に取り組む価値があるんです。
利他的行動による持続可能な幸福 ー 自己との対話から他者との関係性構築へ
習慣化の最終的な目標は何でしょうか。私は、それが持続可能な幸福と成長だと思います。
そして、その実現のために重要なのが、セルフアファーメーションと利他的行動の習慣化です。
「ポジティブな表現で現在進行形で表す。研究者によって方法は多少異なるものの、セルフ・アファメーションをする際に概ね一致していることは、病気などのネガティブなことは言わず、なりたい自分をイメージして、ポジティブな表現のみを言うという点です。そして、できるだけ現在進行形や現在の状態で表すことがポイントです」
セルフアファーメーションは、単なるポジティブシンキングではありません。科学的な根拠に基づいた認知の再構築技術なんです。重要なのは、現在進行形で表現することです。「私は成功する」ではなく「私は成長している」「私は学び続けている」というように、今この瞬間の自分を肯定的に捉え直すことができます。
これは「足るを知る」という精神につながります。
今の自分を受け入れつつ、同時に成長への意欲を持ち続ける。この微妙なバランスが、持続可能な成長の鍵なんです。
そして、最も興味深いのが利他的行動の科学的根拠です。
「人間は利他的な行動に対して『ごほうび』が与えられるように設計されている。では、なぜ人は、他人のために行動すると自分にもよい影響があるのでしょうか。それは人間が社会的な動物だからです。人はもともと身体的にはそれほど強くはなく、集団で協力しなければ生き延びていけやすい状況だったのです。そのため脳は利他的な行動に対して『ごほうび』を与えるように設計されているのです」
この進化論的な視点は、とても重要だと思います。利他的行動が自分にとっても良い影響をもたらすのは、偶然ではなく、人類の進化の過程で獲得された仕組みなんです。
子孫を残すための生殖行動に快楽が伴うように、種の存続に必要な協力行動にも「ごほうび」が設計されているということです。
つまり、他者のために行動することは、道徳的に正しいだけでなく、私たち自身の幸福と健康にとっても最適な選択なんです。思いやりの行動が免疫力を高めるという先ほどの研究結果とも一致します。
感謝日記をつけることで幸福度が上がるのも、同じメカニズムです。
感謝という感情は、他者や環境に対する肯定的な認識を含んでいます。それを意識的に記録することで、利他的な視点が育まれ、結果として自分の幸福感も高まるんです。
私が本書から学んだ最も重要なことは、個人の習慣化と社会との関係性は切り離せないということです。自己との対話を深め、自分を肯定的に捉え直すセルフアファーメーションの習慣。他者への思いやりや感謝を実践する利他的行動の習慣。これらが相互に影響し合いながら、持続可能な成長のスパイラルを生み出すんです。
「足るを知ること、今に感謝して、一生懸命に成長するスパイラルを描くこと。」
この言葉通り、習慣化は単なる自己改善のテクニックではありません。それは、科学的根拠に基づいた人生哲学であり、年齢に関係なく実践できる生涯学習のアプローチなのです。
勉強するのに遅すぎることはありません。感情を習慣化するのに遅すぎることもありません。利他的行動を始めるのに遅すぎることもありません。今この瞬間から、私たちは「一歩先に進む」ことができるんです。
まとめ
- 科学が証明する「加齢による能力向上」ー 一歩先に進むための新しい視点――「勉強するのに遅すぎるということはない」のです。加齢を味方に変える学びの論点は必ずあります。
- 感情と身体をつなぐ習慣術 ー 怒り・思いやり・感謝が免疫力に与える影響――行動の習慣化と同じように、感情の習慣化にも意識的に取り組む価値があるんです。
- 利他的行動による持続可能な幸福 ー 自己との対話から他者との関係性構築へ――幸福のための持続的成長を支えてくれるもの、それは、セルフアファーメーションと利他的行動の習慣化です。
