- どうしたら、時間の使い方が上手になるでしょうか。
- 実は、すぐやるという習慣が重要かも。
- なぜなら、すぐやるということは、やる気を起こさせ、さらに自己肯定感を高めるからです。
- 本書は、そんなすぐやる人の特徴について説く1冊です。
- 本書を通じて、よりよい時間という貴重な資源の使い方について考えるヒントを得ます。
行動をいかに作れるかがキー!?
著者の外山美樹(とやま・みき)さんは、1973年生まれ。筑波大学大学院博士課程心理学研究科中退後、博士(心理学)を取得し、現在は筑波大学人間系教授として活躍されています。専門は教育心理学であり、モチベーションや実行力に関する研究を長年続けてこられました。
著書には『勉強する気はなぜ起こらないのか』(筑摩書房)、『行動を起こし、持続する力──モチベーションの心理学』(新曜社)、『実力発揮メソッド──パフォーマンスの心理学』(講談社)などがあり、「行動と心理」の架け橋をわかりやすく解説するスタイルに定評があります。
そして今、わかってきているのは、ほんの少しの考え方の差が、その後の行動を大きく変えるということです。
「すぐやる」人になるためには、意志の力を鍛えるしかない──そう思っている方は多いかもしれません。けれど本書では、その前提自体に疑問を投げかけます。
心理学では、「こころのエネルギー」をどう捉えるかによって、人の行動が大きく変わるとされています。
たとえば、「こころのエネルギーは使うと減る」と考える人は「有限型」とされ、疲れたら休むことを当然とします。一方で、「こころのエネルギーは減らない」と考える人は「無限型」とされ、自然と行動を継続しやすい傾向にあるといいます。
実際、600を超える心理学研究からは、「最初の判断(意志決定)」に多くのエネルギーを使ってしまうと、その後の行動に支障が出る(パフォーマンスが低下する)ことが明らかになっています。これは「自我枯渇」と呼ばれる現象です。
また、有名な「マシュマロ実験」にも触れられています。4歳児の時点で“待つ”力(自制心)が強かった子どもたちは、10年後、20年後、さらには30年後にも、学業成績や幸福感、健康度において良好な結果を示す傾向にあったというのです。
ただし、その実験結果がすべてではなく、「意志の強さ=成功」ではないことも、本書では慎重に扱われています。
むしろ著者が繰り返し伝えているのは、「意志の力に頼らずとも行動できる環境や思考のデザイン」が重要だということです。
ちなみにマシュマロ実験(マシュマロ・テスト)については、こちらの1冊「【自制は時制!?】マシュマロ・テスト 成功する子、しない子|ウォルター・ミシェル,柴田裕之」もぜひご覧ください。

自分の中にスイッチを!?
「すぐやる」ために必要なのは、大きな目標ではなく、小さな行動を積み重ねること。著者の外山さんは、抽象的な目標や曖昧な指示が、いかに行動の遅れを生むかを、ヨットの例を交えて示します。
たとえば、「たくさん勉強する」という目標では、行動の指針が曖昧になり、脳が判断を保留してしまいます。けれど、「毎日1時間やる」といった具体的で測れる目標にすることで、行動へのハードルは一気に下がるのです。
印象的だったのは、「20秒我慢」というエピソード。人間は「20秒我慢する」と言われるだけで、自分に言い訳をする余地が減り、実際にやり始めやすくなるのだそうです。
さらに著者は、「難しいが可能な目標」を設定することが、モチベーション維持に効果的だと説きます。目標が簡単すぎると自己評価につながらず、逆に難しすぎると挫折を招きやすい。絶妙なラインでの目標設定が、「自信」や「達成感」につながるといいます。
難しい目標の設定は、パフォーマンスを高める以外にも大きなメリットがあります。設定した難しい目標を達成することによって、自信や達成感、満足感が高まります。
こうした細やかな工夫の積み重ねこそが、「すぐやる人」の思考パターンをかたちづくっているのです。
if-thenのスイッチを持つ
「すぐやる人」に共通するもうひとつの鍵が、“if-then”という行動スイッチを持つことです。
本書では、「目標意図」と「実行意図」の違いが丁寧に説明されています。たとえば「痩せたい」は目標意図にすぎません。それだけでは、具体的な行動にはつながりません。
そこで登場するのが、「もし○○だったら、△△をする」というif-then形式の計画です。
たとえば──
「夕方6時になったら、30分間ランニングをする」
「甘いものを食べたくなったら、ナッツを食べる」
このように、「行動のトリガー」と「行動そのもの」をセットで考えることで、意志に頼らなくても自動的に“やる”が実現しやすくなるのです。
実験では、この“実行意図”のグループが、明確な行動プランを持たないグループに比べて、明らかにパフォーマンスが高くなることも示されています。
さらに、「イライラしてきたら深呼吸する」「試合を放棄したい気分になったらベンチのタオルを握る」など、ネガティブな感情を処理するためのif-thenプランも有効です。
つまり、「すぐやる人」とは、意志が強い人ではなく、「うまくスイッチを設計している人」だということが見えてきます。
本書で特に印象的だったのは、「すぐやる人」は意志や努力よりも、実は“無意識の力”をうまく使っているという点です。
私たちはしばしば、「やる気」や「自己管理」で行動をコントロールしようとします。けれど、著者はこう指摘します──
無意識は、過去に自分が重要だと感じた行動にしか反応しない。
つまり、「これは自分にとって意味がある」と感じられるように設計することが必要なのです。
たとえば、目につく場所に道具を置いておくだけで、「やる」という行動が無意識のうちに促される仕掛けになります。これは環境の力を使って、行動を“意図せずして選ばれるもの”にしていく工夫です。
また、知能の捉え方ひとつとっても、柔軟に学び直せると考える人(成長マインドセット)は、新しいことに挑戦しやすく、行動しやすい。一方で、能力は固定的だと考える人は、「自分はできない」と無意識に判断し、避ける傾向が強くなるといいます。
無意識は、“やりたいこと”をサポートしてくれる存在。だからこそ、自分の価値観や信念を意識化し、それに合った環境を整えることが、「すぐやる人」になるための土台になるのです。
自制心に頼らず、小さな行動を積み重ねる!?
自制心に頼りすぎず、環境と行動の力に委ねるということがキーです。
本書の最後に繰り返し強調されているのは、「やる気」や「根性」では行動は続かない、という冷静な事実です。
自制心は確かに有効ですが、使えば減る“有限資源”でもあります。むしろ行動を継続するために大切なのは、自分の意志に頼らずに「やらざるを得ない環境」を整えること、そして「行動を自動的に起こす仕掛け」をつくることです。
たとえば、「小さな一歩を踏み出す」ことが、結果的にモチベーションを高め、「やる気」を後から引き寄せてくれます。そして、その小さな成功体験の積み重ねが、「私はできる」という感覚を育て、さらに行動をスムーズにしてくれるのです。
つまり──
行動は、意思の強さではなく、設計によって育つもの。
だからこそ、自分の思考のクセに気づき、環境を少しずつ整えながら、日常の中に「すぐやる」回路を組み込んでいくことが、もっとも堅実で、やさしい自己変革なのかもしれません。
自制心に頼りすぎず、環境と行動の力に委ねる
本書の最後に繰り返し強調されているのは、「やる気」や「根性」では行動は続かない、という冷静な事実です。
自制心は確かに有効ですが、使えば減る“有限資源”でもあります。むしろ行動を継続するために大切なのは、自分の意志に頼らずに「やらざるを得ない環境」を整えること、そして「行動を自動的に起こす仕掛け」をつくることです。
たとえば、「小さな一歩を踏み出す」ことが、結果的にモチベーションを高め、「やる気」を後から引き寄せてくれます。そして、その小さな成功体験の積み重ねが、「私はできる」という感覚を育て、さらに行動をスムーズにしてくれるのです。
そしてもうひとつ忘れてはならないのが、「他人との比較」ではなく、「自分にフォーカスすること」。
今日、自分は何に迷っているのか?
どうすれば、少しだけ前に進めるのか?
小さな一歩でも、行動を起こせば「やる気」は後からついてきます。
その問いに耳を傾けることこそが、習慣を味方にした行動変容の第一歩になるのかもしれません。
まとめ
- 行動をいかに作れるかがキー!?――意志が行動を生むのではなく、行動が意志を生み出します。
- 自分の中にスイッチを!?――if-thenで、アクションを仕組み化するのがキーです。
- 自制心に頼らず、小さな行動を積み重ねる!?――自分を見極めて小さな行動を積み重ねていくことが重要です。
