- どうしたらものごとをよりよく立ち上げていくことができるでしょうか!?
- 実は、一見「非効率」に見えることこそに、重要なことが詰まっている可能性があります。
- なぜなら、そこに人の心が動くポイントが隠れているからです。
- 本書は、効率が謳われる時代において、本当に大切なことを見極めるための1冊です。
- 本書を通じて、何が本当に大切なことなのか、その本質に目を凝らし、耳をそばだてる秘訣を知ります。
真の効率とは何か!?
黒田剛さんは、書店の息子として生まれ、書籍の世界に深く関わりながらキャリアを築いてきたPRのプロフェッショナルです。
1975年、千葉県にある「黒田書店」を営むご両親のもとに生まれた黒田さん。学生時代は須原屋書店で働き、卒業後は芳林堂書店の外商部で経験を積みました。その後2007年からは講談社でPRを担当し、2017年には独立して株式会社QUESTOを設立。以来、多くの出版社とタッグを組みながら、数々の話題作を世に送り出してきました。
代表的な作品には、累計150万部を超える『つかめ!理科ダマン』シリーズや、70万部の『妻のトリセツ』シリーズ、そして黒柳徹子さんの『続 窓ぎわのトットちゃん』など、名だたるベストセラーが並びます。
派手な広告に頼るのではなく、地道に、時に非効率にも見えるやり方で、しかし確実に読者の心を動かし、メディアを惹きつける。そんな独自の“伝え方”を築き上げてきた黒田さんが、本書ではその仕事術の真髄を初めて言葉にしています。
「効率化が求められるこの時代に、なぜ“非効率”が必要なのか?」
これは、本書を読み始めてすぐに頭に浮かんだ問いでした。
「非効率なこと」は、一般的には“よくないこと”“排除すべきこと”とされがちです。企業では、いかに効率的に作業をこなして生産性を上げるかが求められる。そんな空気の中では、「効率の悪いこと」にわざわざ意味を見出すのは難しいかもしれません。
けれど、黒田剛さんは言います。
「効率の悪いことが、結局いちばん効率がいいんですね」
この言葉に、ハッとさせられました。
「本が売れない」と言われるこの時代に、なぜ本のPRを続けるのか。
「非効率に見えるやり方」に、なぜ価値があると信じられるのか。
そこには、黒田さんが積み重ねてきた“人と本をつなぐ営み”への深い信念があります。
私たちの社会は、加速度的に“効率”を求めています。
ビジネスにおいても、日常のやりとりにおいても、少ないリソースで最大の成果を出すことが正義のように語られる。けれど、そんな中でどこか「伝わらない」「届かない」「共感が生まれない」と感じている人は少なくないのではないでしょうか。
AIや自動化が進む時代において、人の心が動く瞬間というのは、むしろ“非効率なふれあい”の中にこそあるのではないか。黒田さんのやり方は、そんな問いを投げかけてきます。
たとえば、リリースを一斉送信するのではなく、相手の状況を想像しながら、一通一通メールを打つ。時には足を運び、直接会って「お困りごと」を聞く。効率だけを重視すれば“手間”でしかないこうしたプロセスの中に、信頼関係が生まれ、共創の基盤が築かれていく。
「非効率ルール 自分の頭だけで考えない」
黒田さんは、こうした“あえて遠回りすること”を選び続けています。
「一斉メールよりも決まる確率がぐっと高くなるのが、僕に言わせると断然効率のよい提案の仕方なのだ。」
これこそが、AIには決して代替できない「人と人との心のふれあい」ではないでしょうか。
効率を疑うことからはじまる、本当に伝わるコミュニケーション。そのヒントが、この本には詰まっているのです。
相手とともにあるためには!?
本書で黒田さんが一貫して語るのは、「相手の視点から物事を見る」という徹底した姿勢です。
PRにおいて大切なのは、商品や書籍の魅力を一方的に伝えることではない。むしろ、著者や編集者、そしてメディアや読者が抱える“お困りごと”に丁寧に耳を傾け、その解決策として企画を立てる。そのためには、非効率でも構わない。会いに行き、話を聞き、相手の心の中にある「まだ言葉になっていないニーズ」に寄り添うこと。
この姿勢は、まるで相手の心を一度“自分にインストールする”ようなものです。
効率よく届ける前に、まずは「なぜこの人は困っているのか」「何が引っかかっているのか」を一緒に考える。だからこそ、黒田さんの提案には“刺さる力”が宿るのです。
本書は、そんな非効率の中にある人間的なふれあい、信頼の積み重ね、そしてその延長線上に生まれる「企画」の意味を、丁寧に言葉にしてくれます。
「非効率ルール『お困りごと』への『解決策』探しを繰り返して企画書は生まれる」
まさに、伝えるとは「相手の問題解決に寄り添うこと」なのだと再認識させられます。
思考の展開:関係性のなかで“非効率”を磨く!?
黒田さんの伝え方の本質は、「非効率=人と人のあいだに立ち現れるもの」として捉えているところにあるのではないでしょうか。
著者や編集者、メディアとの関係は、単なる業務のやりとりではなく、信頼を土台とした“協働”です。そしてその信頼は、以下のような極めて人間的なアプローチから生まれていきます。
- 身近な知り合いを徹底的にあたる
- 人に紹介してもらう
- 自力で声をかける
- 相手の「お困りごと」をケアする
この4つのプロセスはどれも、システムやツールだけでは完結しない、身体性と感受性を伴った行動です。
黒田さんのスタンスは、いわば「相手の世界に一歩踏み込む勇気」を肯定しているようにも思えます。そして、そこから始まる“関係性のデザイン”こそが、あらゆるPR、ひいてはビジネスの原点なのではないでしょうか。
一斉配信された情報にはない「温度」。
テンプレート化された言葉にはない「解像度」。
本書は、そんな伝え方の本質を、現場から静かに、でも確かな手応えとともに教えてくれます。
黒田さんの仕事術の中で、特に印象的だったのが「なぜ今、この本なのか?」を説明するために、【現象】という視点を意識して持ち込む工夫です。
たとえば、美肌のカリスマ美容家・石井美保さんの著書を紹介する際、彼女個人のエピソードだけではなく、「コロナ禍で洗顔やスキンケアへの関心が高まっている」という【現象】をあわせて提示する。そうすることで、読者やメディアがその本を“自分ごと”として捉える文脈が生まれます。
このような“ちょっとしたひと手間”があるかないかで、情報の伝わり方は大きく変わります。
黒田さんの言葉を借りれば、PRとは「本を紹介する」ことではなく、「現象とともに本を提案する」こと。
そして、それは一見遠回りに見える「非効率な努力」のようでいて、実はもっとも確実な“届く道筋”なのです。
この視点は、ビジネスにおけるあらゆるプレゼンテーションや企画書づくりにも応用できる考え方だと感じました。
本をつくり、届けるという営みほど、非効率な作業はないのかもしれません。
著者が時間をかけて書き、編集者が丁寧に磨き、営業やPR担当が人と人のつながりを紡いで、ようやく1冊の本が誰かのもとに届く。
そのすべてのプロセスが、数字では測れない“感情”や“関係性”に根ざしています。
だからこそ、黒田剛さんの伝え方には、強さがあります。
情報の洪水の中で、見過ごされてしまいそうな1冊を、誰かの心に届かせる。
それは、小さな声に耳を澄まし、相手の視点を想像し、丁寧に手渡していくという“非効率”の積み重ねの結果なのです。
デジタルツールやAIが進化しても、「伝える」ことの本質は変わりません。
相手の「お困りごと」に寄り添い、信頼を重ねることでしか、心は動かない。
本書は、そんな当たり前だけど見失いがちな真実を、静かに、しかし確かな説得力で教えてくれる1冊でした。
あなたにとっての「非効率に見えるけれど、大切なこと」はなんですか?
それを、もう一度、見つめ直してみたくなります。
関係性について深く考えてみるには、こちらの1冊「人生とは関係性の中に、絶えず生成されていく!?『すらすら読める風姿花伝』林望」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。古典の中から、人が普遍的に大切にしたい概念を浮かび上がらせることができます。

まとめ
- 真の効率とは何か!?――盲目的な効率主義を振り返り、そして、本質を見極めるようにしてみましょう。当たり前というのは、自分で創り出すものかもしれません。
- 相手とともにあるためには!?――人とともにあること、関係性の中の喜び、そして、それが持続していくことではないでしょうか。
- 思考の展開:関係性のなかで“非効率”を磨く!?――社会の構成メンバーとして、相手との関係性の中に、本質を見極め選択をし続けていきましょう。
