- 人は、どのようにものごとを認識しているでしょうか。
- 実は、結構人によって見え方って違うかも。
- なぜなら、言葉と絵、それらの組み合わせで人はものごとを認識していて、これは個々人で全く異なるから。
- 本書は、言葉以外でものごとを捉える世界観があることを知ります。
- 本書を通じて、自らの思考のクセについて考える視野を得られるでしょう。

あなたの思考パターンは!?
テンプル・グランディンさんは、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ動物学者であり、世界的に著名なオピニオンリーダーです。
彼女は、自身の思考スタイルを「ビジュアル・シンカー(視覚優位の思考)」と位置づけ、まるで映画のように頭の中で鮮明な映像を描いて理解・発想をしていると語ります。
私たちは、「言葉で考える」ことが当たり前だと思いがちです。しかし、グランディンさんが描くのは、「絵」で考え、「構造」で理解し、「感覚」で世界を捉える思考の世界。
それは、定型発達者が見落としがちな「細部」や「違和感」に鋭く気づく力でもあります。
自分の考え方に「型」があるとしたら、どんなタイプだと思いますか?
実は、私たちは思っている以上に、視覚・言語・運動などの“得意な感覚”をベースに思考しているのかもしれません。
なぜなら、情報をどう受け取り、どう処理するかは、脳のスタイルに大きく左右されているからです。
グランディンさんは思考スタイルを、大きく3つに分類しています。
- オブジェクト・シンカー(物体視覚思考者):具体的なモノを映像として思い浮かべて思考する人(グランディン自身がこのタイプ)
- パターン・シンカー(空間視覚思考者):数学や音楽のように、抽象的な構造やパターンで考える人
- 言語シンカー:言葉を中心に論理的に展開していく人
この分類によって、例えば「得意な仕事」「苦手な説明のされ方」「学びのスタイル」にまで違いが出てくるといいます。
例えば、言語による思考は、つながりあっていてひとつにまとまっています。主に言語思考をする人はものごとを順序立てて整理する、理解するのが得意です。だから、学校の成績はとてもよいでしょう。ただし、このパターンの人は、方向感覚が実は苦手で、地図をよめないなどの特徴も持ち合わせているようです。
ご自身がどのような思考パターンを持っているのかを知るには、彼女が作成してくれた診断にトライしてみるとよいでしょう。
視覚空間型思考判定テスト *「はい」「いいえ」でお答えください。
- 考えるときには、言葉ではなく、おもに絵を使う。
- 物事がわかるが、その方法や理由は説明できない。
- ふつうと違う方法で問題を解決する。
- 物事をありありと想像する。
- 目で見たことはおぼえていられるけど、耳で聞いたことは忘れる。
- 単語をつづるのが苦手。
- 物体をいろいろな視点から思い浮かべることができる。
- 整理整頓が苦手。
- 時間の経過がわからなくなることがよくある。
- 行き先は言葉で説明してもらうより、地図を見るほうがわかる。
- 一度しか行ったことのない場所でも道順をおぼえている。
- 字を書くのが遅く、字はほかの人に読みにくい。
- ほかの人の気持ちがわかる。
- 音楽や美術が機敏が得意。
- 周囲が思っている以上に物知り。
- 人前で話すのは苦手。
- 歳を重ねるごとに賢くなっていると思う。
「はい」が10個以上であれば、視覚(空間型)思考タイプの可能性がかなり高いとのこと。
著述家や編集者、弁護士はたいてい「はい」が10個よりも少ないとのこと、ちなみに著者テンプル・グランディンさんは16個(!)だったそうです。
かくいう私は13個あったので、もしかしたら空間(ビジュアル)でものごとを把握している傾向が高いかもしれません。
閃きはどうやってくるか!?
思考が異なれば、見える世界が異なります。そして、閃きが訪れる瞬間の様子も少し違いそうです。
言語思考者にひらめきの瞬間が訪れるのは、頭がぼんやりしているときではないかと私は思う。
(中略)
たいていの場合、言語思考者は、言語に基づく説明をして解決にたどり着こうとするため苦境に陥り、迷ってしまう。私の場合、ひらめきの瞬間はすぐにやって来ることが多い。すでにイメージで考えていて、脳が画像をトランプのカードみたいにすばやく並べ替えて、解決策を見せてくれるからだ。
テンプル・グランディンさんが語るように、「ひらめき」はすべての人に同じように訪れるわけではありません。
それは、思考のベースが異なるからです。
たとえば、言語思考者にとってのひらめきは、「頭がぼんやりしているとき」や「言葉の整理がついたとき」にようやく現れます。
一方で、ビジュアル・シンカーであるグランディンさん自身は、すでに「イメージで考えて」いるため、
ひらめきの瞬間が“映像として即座に出てくる”といいます。
まるでトランプのカードをめくるように、脳が瞬時に画像を並び替え、答えを提示してくれる。
その感覚は、言葉を一つずつたどる人には想像しがたい、まさに“直観の視覚化”です。

人は思考のパターンからして違う!?
「価値観が違う」「立場が違う」──そう言って済ませてしまう前に、
もっと根っこの部分に目を向けてみましょう。
そもそも、世界の捉え方そのものが違うとしたら?
テンプル・グランディンさんは、人には「絵で考える人」と「言葉で考える人」がいると説きます。
これは、単に表現手段が違うという話ではありません。
それぞれの脳が、
- 何を情報として拾うのか
- どのように情報を結びつけるのか
- どこで“意味”を感じるのか
──そうした認識の起点そのものが異なっているということです。
考える方法自体が人それぞれに違い、世の中には「絵」で考える視覚思考タイプと言葉で考える言語思考タイプがいて、その違いは脳の作りや働き方の相違によるというのです。
「人それぞれ」という言葉が空虚に響くときがあります。
でも、グランディンさんの語る“認知の多様性”は、まったく別のレイヤーの違いに光を当ててくれます。
たとえば、ある人は機械の動きを見てすぐに仕組みが浮かぶけれど、
別の人はそこで生まれる“感情”の流れを敏感に感じ取る。
ある人は数字とグラフに安心を覚え、
別の人は直感的な色や形に意味を見出す。
この違いを前提にする社会では、他者に「なぜわからないの?」と言うこと自体がナンセンスになります。
むしろ、「どうやって見てる?」「どうやって考えてる?」という問いかけこそが、
共創のスタート地点になるのです。
思考について、考えるには、脳の機能を見つめてみることもヒントになるかも。こちらの1冊「好奇心とは、不確実性である!?『脳の本質 いかにしてヒトは知性を獲得するか』乾敏郎,門脇加江子」もぜひご覧ください。

まとめ
- あなたの思考パターンは!?――大別して3つの思考パターンがあります。
- 閃きはどうやってくるか!?――思考パターンで、閃きの訪れ方も異なります。
- 人は思考のパターンからして違う!?――違いを見つめることから、対話が始まります。
