余白を持つことが、偶然性を身に着け、可能性を高める!?『戦略的暇』森下彰大

戦略的暇
  • どうしたら限られた人生の時間を豊かに過ごすことができるでしょうか。
  • 実は、“暇”をいかにつくり、そして、その時間を得るかが重要かも。
  • なぜなら、その時間こそが、自分自身が何者かになれる可能性を解き放つから。
  • 本書は、戦略的に“暇”を創出することの重要性を説く1冊です。
  • 本書を通じて、“暇“によって、私たちの人生を豊かにする方策を知ります。
森下彰大
¥1,782 (2025/05/30 08:50時点 | Amazon調べ)

暇に価値を見出そう!?

森下彰大さんは、「戦略的暇」という新しいライフスタイル提案を掲げる実践者であり、思想家でもあります。

1992年、岐阜県養老町生まれ。中京大学国際英語学科を卒業後、アメリカ留学でマーケティングと心理学を学び、音楽活動にも打ち込んだという異色のバックグラウンドを持ちます。社会人としては、日本語教育や貿易業に従事しながらライターとしての活動を開始し、2019年にはライティング・エージェント「ANCHOR」を設立。現在は講談社『クーリエ・ジャポン』の編集者として、ウェルビーイングや企業文化に関する記事制作を中心に活躍されています。

もうひとつの顔は、一般社団法人日本デジタルデトックス協会の理事。企業や教育機関向けに、スマホやSNSに依存しがちな現代人の“休み方”を問い直すデジタルデトックス(DD)の講義や体験イベントを展開し、2020年からは「デジタルデトックス・アドバイザー®︎養成講座」を開講。2025年時点で100名以上の修了生を輩出しています。

自身がデジタル疲れに悩み、体調を崩した経験を起点に、「今の私たちに足りていないのは、“余白”ではないか」という気づきに至った森下さん。本書『戦略的暇』では、ただの休息ではない、人生をポジティブに変えるための“創造的余白”の取り戻し方を説いています。

これまで、知らぬ間に与えられ、知らぬ間に奪われてきた「暇」。
暇こそ、あなたが何にでもなれる可能性の種が育つ土壌だ。

そう捉えてみると、一見、無駄かと思われた“暇”という時間が、資源のように、とても貴重なものの用に思えてきます。

現代、暇は、何も生み出さない非効率な存在として認められています。すなわち、暇を排除して、何かをしている時間、つまり生活の生産性を上げることを常に志向することが求められていると言ってよいでしょう。

でも実はなにもない時間に、休み、小休止を得ることはとても重要なことです。

著者の森下さんは、この何も無い時間こそが、自分自身の人生を、ひいては社会に「ポジティブな変革を起こす」事ができると説きます。

自分が変わっていくためにも、社会が変わっていくためにも、多くのエネルギーと充実したアイデアが必要です。忙しい日常だけに囚われていれば、そうした発想や準備をすることは困難です。

わたしたちに必要なのは自分のための余暇を取り戻し、その余暇で培われた思考やエネルギーを個人と社会にとってより良い方向へと向けるための「戦略」です。

森下彰大さんの『戦略的暇』は、「何もしない時間」をあえて戦略的に設けることが、私たちの思考力、創造性、さらには社会変革の起点となる——そんな逆説的とも思える提案を、実例とともに丁寧に紐解いてくれる一冊です。

本書では、「暇」という言葉が持つ否定的なニュアンスを覆し、それを「意図を持ってつくりだす空白」と再定義しています。ここで語られる“暇”は、けっして無目的ではありません。むしろ、自分の感性を回復させたり、思考を深めたり、新しい構想を編み出したりするための、創造的な時間です。

森下さんは、ビジネスの現場での実践や、クリエイター、研究者たちの思考法などを紹介しながら、暇の効用を実証的に語ります。そこに通底するのは、「忙しさに埋もれていては、大事なものが見えなくなる」という危機感です。

仕事でもプライベートでも、あらかじめ“何も予定のない時間”を確保しておく。

これを「戦略的暇」と呼び、その時間の中で、自分が本当に大切にしたいものに立ち返る。そのプロセスこそが、持続可能で意味のある生き方へと私たちを導くと、森下さんは言います。

意味を見出す余白を持とう!?

日常に良質な暇を取り入れることから考えてみましょう。

それが、ストレスから一時的に離れる時間を生み出し、人生の質をより良い方向へアップデートさせていくための力を養うことにつながっていきます。

エネルギーを充実化させて、そのエネルギーを外部にも伝播することができれば、周囲とともにより良くなっていくという世界観を作り出すことだってできるのです。

まずは立ち止まり、一休みすること。これが社会変革の第一歩になる。

暇を再定義してみましょう。

暇はネガティブにどうしても見られてしまいます。あまりに目的的に時間という資源の配置を捉えているわたしたちにとって、暇であることを素直に捉える視点を持つことは難しいのです。

しかし、新たなアイデアや視点を生み出せる可能性を、そういう土壌を担保するような時間としての暇を定義することで、人生の可能性を大きく飛躍させるスラック(余剰資産)を持つことができるのです。

そう言えば、余白ということを日本人はこれまでとても大切にしてきましたね。

そう考えると、「暇」とは本来、日本文化に根付いていた“余白”の感覚と深くつながっているのかもしれません。

掛け軸の“空白”や、茶室の“間(ま)”、俳句の“季語”のように、あえて余地を残すことで、そこに意味が生まれるという美意識。私たちはもともと、「詰め込まないこと」の中に豊かさを見出してきたはずです。

ところが、現代社会ではその余白が“非効率”や“怠惰”と誤解され、削り落とされてきました。

森下さんの提案する「戦略的暇」は、こうした本来の感覚を取り戻しつつ、それを現代のビジネスやライフスタイルに応用する試みです。

余白はただの“空”ではなく、意味が芽吹く“場”であり、それは戦略的に設けることができる。そして、人生や組織をより持続可能で創造的なものへと導いてくれるのです。

一見遠回りのようでいて、実は最も本質的な前進。

そんな視座を与えてくれる本書は、忙しさに追われている今の私たちにこそ必要な“暇の教科書”なのかもしれません。

森下彰大
¥1,782 (2025/05/30 08:50時点 | Amazon調べ)

スペパにこだわろう!?

近年、アイデアが「ふと浮かぶ」瞬間の脳内メカニズムが、徐々に解明されつつあります。

その鍵を握るのが「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の回路です。これは、私たちが外界の刺激に意識を集中していないとき──つまり、何もしていないときや、ぼんやりしているときに活性化するとされる脳の状態です。

DMNが働いているとき、脳は記憶や経験をゆるやかに結び直し、意外な組み合わせや発想を生み出す準備をしているといわれています。言い換えれば、「暇な時間」にこそ、私たちの脳は静かに、しかし創造的に働いているのです。

この脳科学の知見は、森下さんが説く「戦略的暇」の意義を裏づけるものです。ただの休息でも、サボりでもなく、自分の中の可能性や洞察を引き出すための“必要な沈黙”。その沈黙の中にこそ、未来を形づくるための新しい視点が芽吹くのです。

だからこそ、私たちはもう一度、自らの暮らしに「暇をつくる」覚悟を持ってもいいのかもしれません。

それは、より良く働くための戦略であり、よりよく生きるための選択でもあるのです。

森下さんは、デジタル・デトックスを推奨する活動を展開されています。その中で、参加者の方との交流において、とあるコンセプトを突き詰めました。

それが「スペパ」と呼ばれるものです。これは、“スペース・パフォーマンス(Space Performance)”の略であり、単に「何かをする能力」ではなく、「何かが起こる余白をどれだけつくり出せるか」という力を意味します。

私たちはこれまで、時間あたりの生産性や効率性といった“密度のパフォーマンス”を追い求めてきました。しかし、森下さんが提案するのは、その逆ともいえる発想です。どれだけ余白を生み出し、その空間にどんな豊かさや偶発性が生まれるか。それを測る指標が「スペパ」なのです。

スペパが高い人とは、例えば──

  • 予定を詰めすぎず、思わぬ出会いや発見を受け入れられる人。
  • 空間や時間を整え、他者に“問い”や“感情”が生まれる場を提供できる人。
  • 言葉にならない気配や空気感を感じ取り、共創の余地を見出す人。

これはまさに、ファシリテーターやリーダーにも求められる、新しい能力とも言えるでしょう。

森下さんは、こうした余白を意識的に育てていくことこそが、現代における創造性や人間性の回復につながると語ります。そしてその実践として、「戦略的暇」や「スペパ」を生活の中に組み込むことが、自分自身と社会を変えていくための基盤になるのです。

スペースパフォーマンスを向上させるためにいくつかのティップスを提示してくれています。

1.自然に出ること
2.日常に小さな儀式空間を作ること
3.フィクションの空間に浸ってみること
4.リアルで人に会うこと

スペパを考えることは、それは暇を作ることであり、そして、その暇という余白があるからこそ、人生が豊かに向上していくヒントを見出すことができる体質を作れるということになるでしょう。

実は、暇というのは、“偶然性”を味方に変えることでもあります。

詰め込まれたスケジュールや、成果を求める行動だけでは決して出会えないものが、ふとした“何もない時間”に顔を出します。それは新しい発想かもしれないし、懐かしい記憶の再発見かもしれない。あるいは、他者との静かな共鳴かもしれません。

偶然の中にひそむ意味や可能性をすくい上げるためには、受け入れる“余白”が必要です。そしてその余白は、戦略的に用意することで、はじめて機能します。

「戦略的暇」とは、自分の人生に余白を取り戻す行為であり、その余白に何が芽吹くのかを楽しみに待つ姿勢です。

今日の忙しさの中に、ほんの少しでも“自分のための暇”を挿し込んでみることから始めてみませんか?

あなたの中のスペース・パフォーマンスが、未来への扉をそっと開いてくれるかもしれません。

余白の可能性については、こちらの1冊「【余白が、継続のキー!?】「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる! 続ける思考|井上新八」もぜひご覧ください。

あるいはこちらの1冊「【「余白」を大切に!?】考えすぎない練習|ジョセフ・グエン,矢島麻里子」もおすすめでございます。

まとめ

  • 暇に価値を見出そう!?――目的的だけではない、余白を持つことに可能性を見出しましょう。
  • 意味を見出す余白を持とう!?――余白の中から、余裕が育ち、可能性を育みます。
  • スペパにこだわろう!?――場の余剰をケアしてみることが重要です。
森下彰大
¥1,782 (2025/05/30 08:50時点 | Amazon調べ)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!