百人が気づくことで、世界は確実に“本物”へと向かう!?『百匹目の猿』船井幸雄

百匹目の猿
  • この世界をどう捉えていくと本質的なことに触れることができるでしょうか。
  • 実は、「意識」のあり方を捉え直してみることも重要かもしれません。
  • なぜなら、それこそが世界の認識であり、また、その「意識」はつながりという本質へと続きます。
  • 本書は、いわゆる「百匹目の猿現象(Hundredth Monkey Phenomenon)」をベースに、この世界を見立てる1冊です。
  • 本書を通じて、刺激的な思想に触れることができます。
船井幸雄
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本当の“力”は目に見えない!?

船井幸雄さんは、日本を代表する経営コンサルタントであり、株式会社船井総合研究所(船井総研)の創業者として知られています。1933年、大阪府松原市の農家に生まれ、京都大学農学部農林経済学科を卒業後、産業心理研究所や日本マネジメント協会での勤務を経て、1969年にフナイ経営研究所を設立。1970年には日本マーケティングセンター(後の船井総研)を創業し、経営コンサルティング業界で初の株式上場を果たしました。

船井さんの経営哲学は、「長所進展法」や「素直・プラス発想・勉強好き」といった前向きな思考を重視するスタイルに特徴があります。また、「必要・必然・ベスト」という言葉を好み、どんな出来事にも意味があり、それは最善であるという立場をとりました。

加えて、船井さんは精神世界への造詣も深く、1960年代に家族を相次いで亡くしたことをきっかけに、人間の生と死、存在の本質に関心を深めていきます。エマヌエル・スウェーデンボルグやエドガー・ケイシーの思想に影響を受け、『百匹目の猿』『エゴからエヴァへ』などの著作を通じて、経営と精神性をつなぐ独自の思想を展開しました。

船井さんの教えの根幹には、「謙虚であること」「他者を否定しないこと」「自然の摂理と良心に従うこと」があります。これは、経営者としての姿勢にとどまらず、ひとりの人間としてどうあるべきかという人生観にもつながっています。

現代においても、船井幸雄さんの提唱した「見えない力」の重要性は、組織の在り方や人と人との関係性における深い示唆を与え続けています。

船井さんのご著書については、こちら「大きな力を感じよ!?『エヴァへの道 地に足をつけ、ゆったりと、21世紀に向かおう』船井幸雄」やこちら「自分自身に対する覚悟を!?『人生五輪の書 船井流 “勝者への道”』船井幸雄」もぜひご覧ください。

自分自身の存在とは、人間とは、そして、世界とは・・・船井さんの視点で切り取られる世界観は、非常に刺激的で、私たちの認識の扉を拓いてくれる可能性に満ちていると思います。

船井さんの説く「見えない力」について、今回ご紹介するこちらの1冊 『百匹目の猿:「思い」が世界を変える』も、多くのヒントを得ることができます。

この現象は、1950年代、日本の宮崎県・鹿児島県の間にある幸島(こうじま)という小さな島で行われた、野生のニホンザルの観察研究に由来するとされています。

研究によると、ある若いメス猿(仮にイモ子と呼ばれる)が、地面の砂まみれのサツマイモを川の水で洗ってから食べる、という新しい習慣を自発的に始めました。そして、それを見ていた母親や仲間たちがその行動を真似し、徐々にその習慣は若い猿たちを中心に広がっていきました。

そして物語のクライマックスとしてよく語られるのが、ある日「100匹目の猿」がその行動を学習した瞬間、地理的に隔絶された別の島の猿たちの間でも突如として同じ行動が現れたというエピソードです。

これはいったいどういうことでしょう。世代から世代への時間の経過をへた、いわば「縦」の承継なら遺伝ということで説明がつきますが、同時代において距離をこえて一つの情報が「横」に伝播し、共有されていったのです。

これが「百匹目の猿現象(The Hundredth Monkey Phenomenon)」です。

この話はアメリカの作家ライアル・ワトソン(Lyall Watson)によって1970年代に英語圏に広まりましたが、後にこの逸話が科学的事実としては誇張された解釈であることが明らかにされました。

  • 元になった幸島での研究報告書には、「地理的に隔絶した島々で同時発生した習慣」についての科学的な証拠はない。
  • 実際の観察記録では、イモを洗う行動が習慣化したのはあくまで特定の個体群内での模倣学習によるもので、瞬間的・超距離的な伝播は確認されていない。

つまり、「百匹目」がキーになって突然“意識の場”が全体に拡がったという説明は、あくまで象徴的な比喩であるといえます。

そして、ここがポイントなのですが、船井さんの見立てです。

船井幸雄さんはこの逸話を“科学的事実”としてではなく、象徴的真理”として再解釈しています。

これは、つまり、正しい、正しくないではなく、そうした考え方を応用することで、私たちの認識する世界をもっと深く見つめることができるのではないか?という眼差しだと思います。

それは社会のインサイト!?

船井さんは、この「百匹目の猿現象」に、以下のような意味を見出しています。

  • 一定数(=臨界点)を超えると、意識の転換は質的転化を起こし、全体へと飛躍する
  • 個人が取る小さな行動も、やがて「場」のエネルギーを変える力を持つ
  • これは量子論的な共振、集合的無意識のような「見えないつながり」の表れである

船井さんは「目に見えないが確かに存在する波動」「心のあり方が現実をつくる」といった思想を、経営や人生に応用する視座として提示しています。

どこかでだれかが何かいいことをはじめると、それは集団内で必ずまねされます。そのまねが一定のパーセンテージに達すると、遠く離れたところでも同じ現象がはじまり、社会全体に浸透していく。そのメカニズムのことです。

私たちの社会は、非常に複雑にできています。蝶の羽ばたきが、どこかで、サイクロンを作るかもしれない可能性を常に内在していると言っていいでしょう。

社会や世界は互いの要素がつながっていて、それぞれの要素は微小な力や影響力かもしれませんが、それが連鎖する中で、私たちの行動や思考、積み重なったかたちとしての思想に絶えず力を及ぼしているのです。

「百匹目の猿現象」を解釈していくのであれば、例えば、「百人が気づけば世界は変わる」と捉えることもできるかもしれません。

「百匹目の猿現象」を単なる動物行動の逸話としてではなく、社会構造を変える臨界点のメタファーとして捉え直すと、次のような問いが立ち上がってきます。

  • 社会が変わる“引き金”とは何か?
  • 何人が“気づき”、何人が“動けば”変化は起きるのか?

こうした問いに応える概念として「社会インサイト(Social Insight)」があります。

「社会インサイト」とは、マーケティングやイノベーションの文脈で使われる言葉で、次のように定義できます。

「多数の人々が無意識に抱えているが、言語化されていない社会的な違和感・欲求・問題意識」

つまり、誰かが「言ってくれなかったけど、確かに感じていたこと」を言語化することによって、共鳴と行動の連鎖が始まるという現象です。

ここで、「百匹目の猿現象」と「社会インサイト」を重ねることで、次のような構造が見えてきます。

フェーズ象徴的な動物行動現代社会での意味
1)気づき1匹の若い猿が芋を洗う誰か1人が違和感や問題を行動に移す
2)模倣と拡散他の猿が真似する同調者が少しずつ現れはじめる
3)臨界点到達100匹目が現れる社会インサイトが言語化・可視化される
4)飛躍的拡大他の島にも行動が波及社会全体の意識が転換し、新常識になる

これを人間社会に置き換えると、「百人の気づき」が集まったとき、社会はその方向に“可視化された正しさ”として舵を切る。

このように言い換えることができるでしょう。

実際に「社会インサイト」が転換点となったケースを見つけることができます。

  • #MeToo運動:一人ひとりの声がつながり、ある臨界点を超えて社会規範を揺るがす大きな波へと拡がりました。
  • プラスチックストロー廃止運動:環境意識の象徴的事例。「たかがストロー」という行動が、サステナブル社会への移行点となった。
  • 男性育休取得の社会化:“当たり前でなかったもの”が、少数の先行者によって制度と文化を動かす議論へ。

これらもまた「百人が気づいた」ことで、社会が一段階上の意識へとジャンプした例だと言えるでしょう。

船井さんも次のように、この現象の見立てを語ります。

あることを真実だと思う人の数が一定数に達すると、それは万人にとって真実になる。

あることを真実だと思う人の数が一定数に達すると、それは万人にとって真実になる──なぜそうなるのか。百匹目の猿現象はどうして起こるのか。それは人や動物の心は見えない部分でつながっているからだ、とりあえずはそう説明できそうです。しかし、これをもっと科学的に説明した人がいます。

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共鳴の中で、本物を見分けている!?

それがイギリスの科学者ルパート・シェルドレイクです。「形態形成場(Morphic Field)」および「形態共鳴(Morphic Resonance)」という仮説で知られています。

シェルドレイクによると、この世界には次のような“見えない構造”が存在しています。

「すべての生物には、形や行動を方向づける非物質的な“場”があり、その場は過去の類似した存在からの影響を受けている」

この“場”は次のように考えられます:

  • 遺伝子情報のように“個体内”に格納されるのではなく、“外部の場”に蓄積される記憶のようなもの。
  • たとえば、あるネズミが迷路を解けるようになると、別の場所のネズミもその迷路を早く解けるようになる。
  • これは「物理的に接していなくても、同じパターンが学習される」という現象を説明しようとしたもの。

この考え方は、「集団的記憶」や「文化の継承」「知の共鳴」といった概念と響き合います。

シェルドレイクの仮説を簡単に要約すると、こうなります。「生物の形や行動パターン、さらにこの世界の物理的なシステムは、『形の場』の成立とその『共鳴』によって、過去にそうであった形態にみちびかれ、それを継承している」ということなのです。

形態形成場が働くとき、“共鳴”が起きるとシェルドレイクは説きます。

あるパターンが、十分な頻度で繰り返され、蓄積されると、
他の場所や他の個体にも「飛び火する」ようにして影響を与える。

ここでの臨界点のイメージは、「百匹目の猿現象」と極めて似ています。

百匹目の猿現象シェルドレイクの仮説
特定の習慣が、一定数の猿に浸透した瞬間、地理的に離れた猿にも広がる同じ行動・形態・記憶が、形態形成場を通じて別の個体・地域に共鳴する
物理的な接触なしに起きる「伝播」非局所的な情報の「共振」

これは、知識や文化が“ネットワーク”ではなく、“場”や“共鳴”によって伝播するという新たな理解をもたらす視点です。

はるか昔からごく自然に継承されてきた人間の思考や行動パターン、社会の風土や流行現象なども、シェルドレイクの「形の場と共鳴」理論で説明がつくのです。

船井さんは、以下のように続けます。

本物は伝わりやすく、時代をこえて残っていくということです。

伝播、共振がおきるものは一体何なのか?ということになりますが、それは、きっと世界の深いシステムの中で、理にかなっていることなのかもしれません。

お猿さんが、芋をあらうのが理にかなっているのか、よくわかりませんが、それでも、きっと何らかの自然との調和の中で、その行動が導き出されて、彼らの中で伝播していったのだと考えてみることが、私たちの世界や個々の思想や活動を深く捉える契機になるのではないかと考えます。

宇宙には「存在するものはすべてよくなる」という、単純だが絶対的な摂理がある。

この言葉に象徴されるように、船井さんは「自然や社会、そして人間も、本質的には“良くなる”方向に進化している」という宇宙観的な進化論を説いています。

その上で船井さんは、

  • 人も社会も、良質に向かう
  • “本物”を目指して昇華していく
  • 本物とつきあい、本物の生き方をし、自分も本物になる努力をするべき

と強く主張します。

ここで注目すべきは、「本物は見分けられる/見分けられるべきである」とする姿勢です。そして、それを担保するのが“無意識の共鳴”であるということ。

これは、シェルドレイクの「形態共鳴」と極めて近い思想です。

船井さんの世界観では、

  • 本物(=真・善・美に通じるもの)は、“波動”が高く整っている
  • 波動の高いものには、人も空間も“なんとなく惹きつけられる”
  • この“なんとなく”の感覚こそが、無意識に働く共鳴現象

つまり、「あれ、なんかいいよね」「理由は説明できないけど信頼できそう」――こうした感覚は、情報や論理を超えた“本物の証”であり、人間が本来的に持っている感受性によって見分けているという考え方です。

現代においても、“本物を感じ取る力”は重要な社会テーマとなっています。

  • SNS時代における「共感される人/されない人」の違い
  • D2Cやクラフトブランドに見られる「顔の見える本物志向」
  • マーケティングにおける「ストーリーテリングの信頼性」

こうした現象もまた、人々の無意識レベルでの共鳴判断=「これは本物っぽい」に根ざしているのかもしれません。

「流行」や「トレンド」とは異なり、それはもっと深く静かに、しかし確かに――
“意識の場”や“共鳴の構造”を伝って波打つように、社会や個人の奥底に届いていくもの。

まさに船井幸雄さんの語る「見えない力」や「本物を志すあり方」は、“うねり”として人々の無意識に浸透し、時代を超えて残っていくのだと思います。

「宇宙はすべて、より良くなるようにできている」
「本物は必ず伝播し、広がり、残る」
「だから、安心して、本物であり続ければいい」

船井さんの言葉が、深く響き、良い心であれば、よいのであるともリフレインします。

まとめ

  • 本当の“力”は目に見えない!?――本当に影響力のある力は、実は些細な形で社会の中に溢れています。
  • それは社会のインサイト!?――百人の気づきがあれば、社会は変わると言えるでしょう。
  • 共鳴の中で、本物を見分けている!?――他者との響き合いの中で、最終的に間に本物が残されます。
船井幸雄
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