- どうしたらより良い対話を日常生活で実践することができるでしょうか。
- 実は、キーは、対話の後の「決断」にあります。
- なぜなら、それがないと、関係性が次に進まないからです。
- 本書は、対話実践のヒントとその先を説く1冊です。
- 本書を通じて、他者と共にあるための対話と決断について知ることができます。

インクルーシブが可能性をひらく!?
本書の著者・中原淳さんは、立教大学経営学部教授であり、同大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、リーダーシップ研究所副所長を務めています。専門は人材開発・組織開発で、「大人の学びを科学する」をテーマに、企業や組織における人々の学習・成長・コミュニケーションについて研究を行っています。
中原さんは、企業との産学共同研究を通じて、研修開発、ワークショップ開発、組織診断ツール開発、教材開発などの実践的な研究を行っています。また、ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」では、研究知見やエッセイ、日々の活動について発信しています。
多くの所著で、リーダーシップのあり方や、コミュニケーションのあり方を説かれています。
そして今回取り上げさせていただくのは、「対話」についての1冊です。
日常生活でも、ビジネスの世界でも、「対話」の重要性や必要性が語られ始めています。変化の多い世界において、絶えず変化する自他と共に、いかにあるかを検討するかは、今を、これからをよく生きる活動を生み出す可能性に満ちています。
対話とは何か、そして対話を実践に活かしていくためにはどのような論点が必要なのかを、中原さんは、レビューをしてくれます。
話し合いは、多様な人々がこの世に生を受け、他の人々と「ともに」いきるための知恵でもあります。
多様性を受け入れることを推進するインクルーシブという考え方が現れ始めています。
インクルーシブとは「包括的」「包含的」という意味で、多様な背景や特性を持つ人々が排除されることなく参加できる環境や文化を指します。
インクルーシブを捉えていくことはいくつかのメリットを享受できることになります。
- 多様な視点と創造性の促進:異なる背景、経験、考え方を持つ人々が集まることで、組織や社会に新しいアイデアや解決策がもたらされます。
- 人材の最大活用:あらゆる人の能力や才能を活かすことで、組織全体のパフォーマンスが向上します。
- 心理的安全性の確保:あなたのプロフィールにもあるように、心理的安全性は創造的な対話や価値創造の基盤となります。インクルーシブな環境では、誰もが自分の意見や考えを安心して表明できます。
- 社会的公正の実現:すべての人に平等な機会を提供することは、社会正義の観点からも重要です。
- 持続可能な発展:多様な視点を取り入れることで、より持続可能な解決策や発展が可能になります。
これらの状況を受け入れ、共に次の活動を生み出していくための秘訣で、本書は満ちています。
本書で重要なアクション、他者とともに話し合うことは、次のように規定されます。
1.話し合いとは、人々が身近な他者とともに働いたり、学んだり、暮らしていくために、
2.自分が抱く意見を、お互いに伝え合い(=対話)、
3.他者との「意見の分かれ道」を探り合い、メリット・デメリットを考え、
4.自分たちで納得感のある決断を行い、ともに前に進むこと(=決断)。
実は、この話し合いというのは、学校では教えてくれないし、社会に出てもそれが大事であると教えてもらうことはないのです。ましてや実践をしている現場に立ち会うことも稀でしょう。
なんとなく打ち合わせが始まったり、ミーティングが始まったり、そういう様子はあるにしても、対話して、決断するような型を知らない人もたくさんいるはずです。
また、こうしたことは、書籍で学ぶだけではなく、実践を通じて磨くのが基本です。
本書に触れ、ぜひ実践の場で、一人ではなく、他者とともに、対話と決断の話し合いを実践して、他者とともにより良い活動を見出していく学びのスパイラルを作っていきましょう。
心理的安全性を大切に!?
対話の重要性とは、心理的安全性の下で、どのようなことでも安心して、話せるという関係性を促進することにあります。
「一見、仲がよい」だけでは、心理的安全性は高くない?
実は仲が良いということと、心理的安全性は相関していません。
心理的安全性をケアするためには、自他の意見が安心して受け入れられるという組織やチームのカルチャーづくりが絶えず重要なのです。
大切なのは、ルールです。
1人ひとりの意見にしっかり耳を傾けるということ、そして、相手の話を最後までしっかり聞くということ、そうした話し合いの基本的なルールが互いに守られている状態があれば、「嫌な経験」をせずに済みます。
また、「多数決」が良い場合とそうでないことも多々あるということを知ることも大切です。
多数決では、賛成・そうでない場合とで、意見が分かれたままで、対話が終わってしまいます。
それでは、実際にすべてのメンバーが納得感を最後に持てるかどうかということが不足します。
本書で取り上げる話し合いの手法では、その過程で、互いの深層心理に触れ、そしてそれをケアすることができるようになるので、安易に多数決に流れて、本当の意見交換ができなかったという状態を避けることができます。
世の中において、多くの人々の将来に関わったり、チームの方針に関わるような本当は大切なことについて、実は、「唯一の答え」がない場合がほとんどです。
世の中でケリのついていない問題ほど、人によって「見方」が変わり、答えが多様になります。
よって、この違いにまず着目して、自分とそして、他者がどのような見立てをしているのかを確認することから、実は始めてみる必要があるということです。
大切なポイントは、対話だけではなく、その後の「決断」もセットで捉えることです。

決断も必ず!?
まず対話から始めます。
対話とは、フラットな関係のもとで行われる、役職や立場を超えたコミュニケーションです。
互いに心理的安全性を感じながら、言葉だけではなく、心理も含めて互いの考えや主張について触れます。
ジョハリの窓をイメージしてみると良いかもしれません。
ジョハリの窓(Johari Window)は、人間の自己認識と対人関係の理解を助けるコミュニケーションモデルです。1955年に心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって開発され、彼らの名前を組み合わせて「ジョハリ」と名付けられました。
このモデルは4つの「窓」または象限で構成されています。
未知の窓(Unknown Area):自分も他者も知らない情報。まだ発見されていない潜在能力や特性です。
開放の窓(Open Area):自分も他者も知っている情報。公に知られている自分の特性や行動です。
盲点の窓(Blind Area):自分は知らないが、他者は知っている情報。自分では気づいていない自分の特性や行動パターンです。
秘密の窓(Hidden Area):自分は知っているが、他者には知らせていない情報。自分だけが知っている秘密や感情です。
互いに知らない窓を共に開いていくということが、実は、対話なのです。
1.対話とは「ケリのついていないテーマ」のもとでの話し合いである
2.対話とは「人が向き合って言葉を交わす風景」である
3.対話には「フラットな関係」がよく似合う
4.対話では「自分」を持ち寄る
5.対話では「お互いのズレ」を探り合う
6.対話とは「今、ここ」を生きることである
7.対話では「自分を疑い、他者に気づく」
8.対話は「共通理解」をつくりあげる
大切なポイントは、対話については、当事者意識のもとで行われるということもとても重要です。他者ではなく、まず自分がどのような立場で、何を語っているのかを、意識してみることもとても重要です。
当事者の人格からの発言でなければ、深層心理について、深い交換をすること難しいからです。
その上で、「決断」に移っていきます。
決断とは、互いの主張と考えについて、メリットとデメリットを明らかにして、議論の「先」を見つけることです。
そして、その先について納得感を持って、みなで実行に移していくことです。実行をすることができれば、新しい世界観を共に見出すことができるようになるでしょう。
また、さらなる「対話」に向けて準備が整っていくということになります。
決断のための5つのルールを把握して運用してみましょう。
1.メリット・デメリットを明らかにする
2.多数決に安易に逃げるな
3.「誰が決めるか」を決める
4.「いつ決めるか」を決める
5.「どのように決めるか」を決める
また、決め方の幅も把握して、いま自分たちは、何で、決断をしたのかを、把握して、振り返れるようにしておくことも重要です。
1.全員で合意する
2.多数決
3.多段階での多数決
4.スコアで決める
5.評価で決める
希望は「話し合いのその先」にしかない
それは、互いの深層心理についても交換した上での先の活動を見通すものとなります。
対話の技法については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧ください。

まとめ
- インクルーシブが可能性をひらく!?――話し合いを大切に、変化に対応し、変化を作るチーム運営を目指しましょう。
- 心理的安全性を大切に!?――仲の良さだけではなく、本音を言い合える関係性を。
- 決断も必ず!?――対話の先にメリデメを把握したうえで、みなで納得感を持って行動しましょう。
