- AIをマーケティングに組み込むためには、どうしたらいいでしょうか?
- 実は、顧客理解のパートナーとしてAIを扱うことが重要かもしれません。
- なぜなら、AIは最高のオンリーワン接点をサポートしてくれる相棒としての機能を持つからです。
- 本書は、顧客とともに社会を変えていくマインドセットを持つチームのマーケティングAIエージェント論です。
- 本書を通じて、AIの新しい可能性に触れることができます。

AIは、ブランド体験のパートナー?
株式会社大広WEDO(DAIKO WEDO creative & development inc.)は、総合広告会社である株式会社大広のグループ会社として、クリエイティブとプロモーションの実行を専門とする機能会社です。本社は東京都港区芝に位置し、大阪や名古屋にもオフィスを構えています。
大広WEDOは、広告やマーケティングの戦略立案を担う大広本体と連携し、実際の広告制作やプロモーション活動の実行を担当しています。具体的には、テレビCMやデジタル広告、イベント、PR、SNS運用、アプリ開発、店舗プロモーションなど、多岐にわたる顧客体験の創出を手がけています。
同社は「顧客価値の最大化」を理念とし、オンラインとオフラインを統合した体験設計を通じて、クライアントのブランド価値向上を目指しています。また、AIやデジタル技術を活用し、効率的かつ効果的なマーケティングソリューションの提供に注力しています。
お客様と直接つながり、「長期優良顧客」を醸成する
これが大広WEDOという組織が、AIを活用してさらに加速度的に行っていくと掲げている取り組みです。
現在の日本は急速な人口減少と高齢化が進んでおり、新規顧客の獲得がますます困難になっています。このような環境下では、既存の顧客との関係性を深め、長期的に価値を提供し続けることが企業の持続的成長にとって極めて重要です。
新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5〜25倍と言われています。人口減少により市場が縮小する中、一人の顧客から生涯を通じて得られる価値を最大化することが収益を確保する鍵となります。
商売の形態も少しずつ、「新規購入重視」から「継続購入重視」へと変わっていきました。
そうした時にAIの“人ではない”機能(?)が実は、顧客にとっても、それを運用する企業にとっても両者のよりよいインサイトを伝えあうためのもうひとつのフィルタリング・コミュニケーション・ルートとして機能するという点が、大広WEDOチームの独自の見立ててです。
私たちは、相手や相手の反応をみて、自分の言動を決めていきます。
AIであるという前提、そして、AIだからこそのその方向けのカスタマイゼーションがバリバリと聞いたやり取りによって、人はそれまで思っていた表層心理から、深層心理に触れ、本音を語る準備をしてくれるはずです。
また、そういう本音を語る時間こそが、なによりかけがえのない体験として深く記憶されていくでしょう。
その様子も含めて、「ブランド体験」であるということが、本書の中で通奏低音のように語られていきます。
顧客一人ひとりを初めて知れる?
いかに、顧客に直接つながるかが、大切であると、大広WEDOのチームは考えています。
プラットフォーム経由では、顧客のことが見えない
なぜなら、プラットフォームは商品と顧客の情報が成長のキードライバーとして据えているからです。経営資源をやすやすと他社にわたすことはしないでしょう。その代わり、初期投資を安価に、D2Cカテゴリーへの導入も含めたサポートをしてくれるのです。
これは判断の分かれるところであると思いますし、自社の資源状況を俯瞰した合理的な判断がされるべきことであると思いますが、もう一つの方向性として、自ら直接顧客とつながる仕組みを持つという判断もあります。
初期投資はかさみますし、メンテナンスの必要性と、何よりものごとを継続していく経営覚悟が必要となります。
しかし、その見返りとしてのカスタマイズされた顧客接点の保有につながり、そのことによって将来的に顧客からもたらされるデータと個別の顧客の状況把握という、経営資源を自社にもたらすことが可能になります。
しかし、ランニングのコストが膨大なものになるのも事実。
ここでいうコストとは、時間、手間、お金、すべてを指します。
- カスタマーサポート体制の維持費:顧客との直接対応には、専門知識を持ったスタッフや24時間対応などの体制構築が必要になります
- 物流・配送システムの構築費:自社で在庫管理や配送を行う場合、その仕組み作りと運用には相当なコストがかかります
- マーケティング・広告費:継続的な集客のために、常に広告投資が必要となります
- データ基盤の整備・運用費:顧客データを収集・分析するためのシステム投資も必須です
そこでAIです。
AIが持つ基本機能が、顧客接点の継続性を担保してくれるのです。
例えば、以下のような着眼点が考えられるでしょう。
自然言語処理機能によるパーソナライズされたコミュニケーションは、顧客一人ひとりの過去の対話履歴や行動パターンを分析し、個別最適化されたメッセージを自動生成します。これにより24時間365日、顧客の問い合わせに対して一貫した質の高い対応が可能になります。
データ分析機能を活用した潜在ニーズの発見と予測では、購買履歴や閲覧行動から顧客の潜在的ニーズを予測し、先回りした提案が可能になります。また解約リスクの高い顧客を早期に特定し、事前対策を講じることでLTVの向上につながります。
継続学習機能による顧客理解の深化は、顧客との対話を通じて学習し理解を深めていくことで、長期的に関係性が向上します。多数の顧客との深い対話を技術で実現することができるのです。
セグメンテーション機能による小集団価値創造の効率化では、類似した価値観や行動パターンを持つ顧客グループを自動的に特定します。小集団単位での価値向上活動を技術的にサポートすることが可能です。
感情分析機能による心理的安全性の構築では、顧客の感情状態を分析し適切なトーンとコンテンツでコミュニケーションを図ります。人間スタッフの心理的負担も軽減し、より質の高い対応に集中できる環境を構築できます。
自動化機能による手間・時間コストの削減は、日常的・定型的なコミュニケーションを自動化し人的リソースを創造的な顧客対応に集中させます。物理的・時間的制約を超えた顧客対応が可能になります。
マルチモーダル機能による多様なタッチポイントでの一貫した体験提供では、テキスト、音声、画像など多様な形式でのコミュニケーションを統合管理します。オムニチャネル環境での一貫した顧客体験を効率的に実現できます。
共創支援機能による顧客参加型の価値創造は、顧客からのフィードバックやアイデアを効率的に収集・分析し、製品開発やサービス改善に活用します。対話を通じた共創プロセスをスケールさせる支援が実現します。
コスト面でも、生成AIは優位に働きます。
何より冒頭にもお伝えした通り、AIに対して心理的コストを過分に払う必要もないということも、利点としてあげることができるでしょう。

行動を起こすならいま!?
最大のメリットはなにより、顧客の声を「活用できるデータ」として溜めることができるということです。
すでにコンタクトセンター(顧客との接点)を持つ企業であっても、その多くでは、得られた顧客の声を「音声データ」としてそのまま保有しているのみになっているか、あるいは、文章化して社内のデータベースに保存していることになっているのではないでしょうか。
これらのデータは膨大なので、人のチカラでは到底活用するまでに、とてつもないコストがかかりますが、AIが読み込むことで、それが現実のものになります。
この結果、個別の顧客に対する洞察を深めることが可能になります。
「相手は自分のことをわかってくれていると」と感じると、企業に対する顧客のロイヤリティは高まっていきます。
膨大な量の顧客データや、顧客との対話履歴、商品購入履歴を忘れること無く、次回の商品提案やコミュニケーション、対話に活かすことができるのが、D2CをアップデートするためにAIを積極的に活用していく動きです。
大広WEDOでは、次のような論点を持って、AIを運用していると言います。
自社の企業知識や商品知識、顧客情報をAIの回答に反映させる仕組みを、私たちは「ダイナミックプロンプト」と呼んでいます。
つまり、これは、顧客に関連したあらゆる情報を、顧客視点で、整理し、顧客を知り、そして、対話型のAIを上手に活用しながら、企業とのやり取りを円滑にするための重要な着眼点であるということでしょう。
こうした商いの原点とも言える、一人ひとりとの深い関係構築を経て、マーケティングのあり方も様変わりしていくと考えられます。
つまり、これまでのようにマス発想で、多く括りで捉えてきた見込み顧客群を、大量出稿で大きく獲得するという方向性から、AIを介した関係構築の中で見えた顧客の特性に紐づく小さなマス、つまり“トライブ”を計測可能な方法(主にデジタル中心)で捉えていき、かつ、PDCAを高速に回していくという取り組みへの転換です。
実はAIの登場によって、高速にPDCAを回せる下地が整ったとも言えます。こうした状況がいま確実に目の前に達現れている現実をいかに見るかが重要です。
行動を止めてはいけません。
大広WEDOチームは、絶え間ない行動の重要性を説きます。
マーケティングにかかる時間が短くなり、行動をする時間もさらにショート・タームの積み重ねになっています。これまでなんとなくPlan(計画)をして、Do(実行)して、年に1回くらいチェックをしてみて、それで、何が成果だったかわからないような気もしなくもないような・・・というPDCAのありかたから、確実にPDCAを回しながら、成長を実際に手応えとして、チームで共有できる世界観がいまここに現れ始めています。
そして、行動を起こすなら、最適なタイミングは、常に今であるということを強調してくれています。
AIの可能性がすでにこのように判明している今、その特徴理解を運用をしながら、見極めていく行動ができるかどうかが問われているのでしょう。
高速PDCAについては、こちらの1冊「PDCA実際に回してる?継続できてる?『超鬼速PDCA』冨田和成」もぜひご覧ください。

また、さらなるAIへの深い理解は、こちらの1冊「AIはパートナー!?『AIにはできない 人工知能研究者が正しく伝える限界と可能性』栗原聡」もぜひご覧ください。

まとめ
- AIは、ブランド体験のパートナー?――AIを通じたコミュニケーションには可能性があります。
- 顧客一人ひとりを初めて知れる?――膨大なデータと本音対話をもとに、顧客の解像度が上がります。
- 行動を起こすならいま!?――チームにAIを巻き込みながら絶え間ないPDCAを。
