- どうしたら、よりよいリーダーシップを発揮することができるでしょうか。
- 実は、「認識」がキーになります。
- なぜなら、自分と周囲との相互関係の中で、価値観、ワークスタイル、意思決定の傾向の調整がリーダーの役割になるからです。
- 本書は、次世代型のリーダーシップに関して俯瞰した視点を得る1冊です。
- 本書を通じて、人の力を活かす視点を得ることができます。

認識こそ大事?
組織でマネジメントを任されている人の職務は、オペレーションとマネジメントの両面にわたります。
どちらの側面に偏ってもいけません。
うまくやれば、成果に紐づく可能性がありますし、難しい状況になれば、成果に結びつかないだけではなく、チームの士気が低下して、メンバーの離反を招いてしまう可能性もあるでしょう。
専門分野で際立つ成果を上げる人は、自分自身の周囲を巻き込み成果を出すというプレイングの段階を超えて、さらにその先へと進む勘所を理解しています。
つまり、協働を促すために、そのための自己理解、他者理解を絶えずしていく状況を作り出せるということです。
自己認識力を高め、相互認識力を築く
自分の理解はもちろんのこと、チーム全体の中で、自分の立ち位置や、チームメンバーとの相互関係を想像するうえでも欠かせないのは、認識です。
とくに以下のような論点を見つめてみることが大切でしょう。
1)価値観
2)ワークスタイル意思決定の傾向
3)スキルなどの能力発現
なにより重要なことは、マネジメントとリーダーシップとは、それぞれ異なるのであるという論点です。
観点 | マネジメント | リーダーシップ |
---|---|---|
役割 | 管理者 | 先導者 |
影響力の源泉 | 職位や権限 | 人格や能力 |
目的 | 現状維持と効率化 | 変革と革新 |
時間軸 | 短期~中期 | 中期~長期 |
意思決定 | 分析と論理 | 直観と洞察 |
リスク姿勢 | リスク回避的 | リスク許容的 |
人材育成 | スキル向上 | 潜在能力の開発 |
コミュニケーション | 指示と管理 | 共感と対話 |
上記のようなスタンスの違いを理解したうえで、他者(ものごとを含む)との関係性を俯瞰するために3つの視点を導入してみることも欠かせない論点です。
3つの論点を運用せよ!?
3つの論点とは、以下のようなものです。
IT(イット):議論の対象となっている業務
We(ウィー):議論をしている当事者の人間関係
I(アイ):議論における自分のスタンス
今自分が、どの論点にたっているのか、あるいは、相手がどこを向いているのかを検討してみることが、相互の関係性の中で、ものごとを深く考えていく時には、有効に機能します。
また、これらを意識することで、会話や対話の品質を高めていくことができるようになります。
意見が噛み合う、目線が共通する、そして、そのことによって、次のアクションが見出しやすくなるからです。
IT(イット)は、目下の課題です。問題を含む場合もあるでしょう。何をIT(イット)と定義するかでも、議論や対話のベクトルは変わります。
また、特にWe(ウィー)とは、会議室やともにチームにあるメンバー一丸となった視点です。言葉に現れない人間関係すべてに当てはまります。
互いに尊敬して、信頼しているのか、好意を持っているのかなどの非言語的な領域をも含み、互いの関係性を意識することにあります。
さらにI(アイ)では、自分自身に対して抱いているイメージや価値観の認識、あるいは、疑念や批判的な見立ても含まれます。
この枠組みは、阻害要因を理解して克服し、考えをしっかり話すために大いに役立つ。
自他を俯瞰するというポイントをおさえながらコミュニケーションを進めてみましょう。

協働の仕組みのためにできることとは?
なにより重要なのは、リーダーとして、ゴールを明確に提示していく、あるいは、メンバーとともにそれに対して行動してみて、そのゴールのあり方をアップデートしていくさまです。
もう一度、ゴール設定に対するイメージをアップデートしてみましょう。
“ゴールのゴール”とでもいえる条件を次に示そう。
1)成功を定義すること:ゴールとは成功した終了状態を表すステートメントのようなものになるはずです。
何を目指しながら、何をしようとしているのか?どうやったらできたとわかるのか?それらを明確に言語化していくことがキーです。
一連の行動を誘発するような動機づけの概念です。
ちなみにこちらの1冊「大切なことに対して、資源を集中させていくために!?『イシュー思考』和氣忠」をご覧いただくのもこのゴールとは何かを意識するための論点を強化することができるようになります。

この中で、和氣忠さんもイシューの定義についてステートメントとして記載されるべきものと説いてくれています。
ゴールを明確に言語化するだけではなく、既存のリソースを俯瞰して何にどれだけの資源を投じるのかを同時に検討していく必要があるでしょう。
2)フォーカス:取り組めるキャパシティよりもできることのほうが常に多いものです。最重要事項を常に絞り込みながら、全部やって、何も達成しなかった(!)という状況を作らないようにしたいものです。
成功を定義して、リソースの配置に優先順位を作ることができれば、自律的に動くための基盤が作れたことにあります。
メンバーが自発的に取り組みを進めやすいような「仕組み」を作ることも、とても重要なリーダーにとってのアジェンダであるということですね。
ぜひ「優れたゴールの定義」を自らのプロジェクトに照らして見つめてみましょう。
- 最重要事項にフォーカスする(Focus on the most important things):ゴールは、万一脱線したときに、それに気づいて軌道を修正できるような内容であるべきだ。簡単な言葉を使って、チームの戦略をほとんど知らなくても誰にでも簡単にわかるゴールを設定すれば、戦略の明確さ、覚えやすさ、伝わりやすさがアップする。ジャーゴン(業界用語)を使うと、戦略が一部に伝わらなくなるおそれがある
- 客観的に評価できる(Objectively assessable):チームの全員が、成功した場合としなかった場合を同じイメージで理解している必要がある。ゴールは定量的である必要はないが、主観的であってはならない
- 厳しいが達成できる(Challenging but possible):ゴールは信じられるものでなければならない。想像もつかないような成果をゴールに設定しても、単に無視され、あきらめられる。また、ゴールはチームに背伸びをさせ、メンバーに刺激を与え、挑むものでもなければならない。チームに背伸びを求めれば、たいてい期待以上の成果を上げる方法を見つけてくれる。経験上優れているのは、成功率70%くらいを目指すゴールだ
- ユーザー志向(User-oriented):チームのゴールを機能別に(エンジニアリング、デザインなどで)整理してはならない。成功は、あらゆるチームの機能が一丸となって優れた製品を実現できるかどうかにかかっている。一式のゴールによって、取り組みの方向性を一致させることができる。ゴールによっては、ある職務の果たす役割が別の職務よりも大きい。しかし、そのような場合でも、メンバーのできることを柔軟に整理して、クリエイティブな問題解決ができるようにチームに権限を与えられる。実現しようとしている機能を中心にしたゴール設定をするのはやめよう。想定されるアクティビティについて考え、そこから取り組んでいくと、大きなギャップが生まれる可能性が高い。解決しようとしているお客様の問題にフォーカスし、できるだけお客様に寄り添ってゴールを設定しよう
- 行動ではなく状態を定義する(States, not activities):追求すべき具体的な行動を詳しく書いてしまうと、チームが自律的かつクリエイティブに、試行錯誤を重ねて問題を解決するチャンスを奪ってしまう。代わりに、達成してほしい成果にフォーカスしよう。成功した場合、世の中はどうなるだろうか。この成果を、できるだけ詳しく定義しよう
- 感度と具体性(Sensitivity and specificity):設定するゴールは、あなたが成功とみなす成果を採用とし、不成功とみなす成果を除外しなければならない
まとめ
- 認識こそ大事?――自分、他者、ものごとに対して、メタ認知をすることです。
- 3つの論点を運用せよ!?――IT(イット)、We(ウィー)、I(アイ)視点です。
- 協働の仕組みのためにできることとは?――まず、成功の状態の定義です。
