- どうしたらこの変化の多い時代を生き抜いていくことができるでしょうか。
- 実は、大切なのは、批評家になることではなく、前向きに行動し続ける勇気かもしれません。
- なぜなら、それが夢を抱き、希望を掲げ、一生をかけて達成したいことを追求することになるからです。
- 本書は、これからの時代をよりよく生きるための思考実験の1冊です。
- 本書を通じて、世界をどのように生きるのか、ヒントを得ます。

AI時代を俯瞰すると?
本書は、著者・山田尚史さんによるある種のエッセイに近い、でも、今の世界を俯瞰して、これからの生き方を模索する人に、素敵な刺激を提供してくれる1冊です。
山田尚史さんは、神奈川県横浜市の出身です。1989年に生まれ、開成中学校・高等学校を卒業後、東京大学理科一類に入学しました。その後、工学部へ進学し、松尾研究室でAI技術を学びました。
2011年には、ソシデア知的財産事務所に入所。翌2012年には株式会社AppReSearch(現PKSHA Technology)を設立し、同社代表取締役に就任しました。キャリアを積み重ね、2021年6月からはマネックスグループ取締役、2022年4月からは同社取締役兼執行役を務めています。
ビジネス界での活躍に加え、文学の分野でも才能を発揮し、2023年10月に『ファラオの密室』(宝島社)で「第22回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞しました。
本書の中では、AIの専門家として、AIがさらに実装化していく中で、私たちがどのような世界観を持ち、どのような心構えで、人生を歩んでいくのが良いのかを、語ってくれています。
AIがさらに実装化されれば、人間に残される仕事は、普通の人には難しいことか、もしくは、AIよりも人のほうが安上がりな仕事、とくに知的生産の分野では、そうなっていくでしょう。
しかし残念ながら、後者の方は、限りなくないものに等しいかもしれません。なぜなら、AIの実質的なコストはあまりに安く、人間の生活コストを押し下げることは不可能なので、対抗措置が見つからないためです。
著名な研究者アンドリュー・ンさんによるオンライン講座では、人間が1時間に読める言葉と同じ量の言葉をAIが読み書きするコストは、12円(!)と見積もられています。
そうなれば、結局、普通では難しいことすらAIがこなせてしまう未来においては、金銭的な評価と別の部分、例えば人と人とのつながりや納得感といった、IQではなくEQ(心の知能指数)で価値を出す部分でしか、人間の働く余地はなくなってしまうということになる。
さまざまな教養を身につけたり、あるいは、ものごとの解釈を積極的に行って、自分で行動したうえで、考える時間を増やすなどして、人格を磨いたりする活動が特に重要な取り組みになるでしょう。
人間としての魅力を備えることの価値は今以上に増していくだろう。
AIがいくら膨大なデータを加工して、その上で、選択肢を提示してくれたとしても、最終的にジャッジして、判断し、行動するのは、いつの時代も人間にほかならないのです。
割引率を低くせよ?
さらに未来においては、よりよい倫理観を持ってして、テクノロジーを運用することができれば、もしかすると、より良い世界観が広がっていく可能性もあります。
そうしたとき、いかに待てるか?というのもとても大事になります。
特に、最終的に損しやすいと私が感じているのは、時間割引率が高い人たちだ。
時間割引率(time discount rate)は、将来の価値を現在の価値に換算するさいに用いられる考えです。簡単に言えば、人々が将来の利益や費用を現在と比較する際にどれだけ割り引くかを表す率です。
今日のお昼ご飯を我慢すれば、明日より多くのご飯が食べられるとしたら、どうするでしょうか?
例えば、時間割引率が高い人は、「今すぐの小さな喜び」を選びがちです。
- 「今日の楽しみ」をとても大切にします
- 「明日もらえる1000円」より「今日もらえる500円」を選びます
- 衝動買いをしやすい傾向があります
- 将来のために貯金するのが難しいと感じます
一方、時間割引率が低い人は、「将来のより大きな喜び」を待てます。
- 長期的な計画を立てることが得意です
- 「今日もらえる500円」より「明日もらえる1000円」を選びます
- 衝動的な買い物を我慢できる傾向があります
- 将来の目標のために貯金しやすいです
今日明日、とくにいまここに喜びを見出し続けることも大切なのですが、目の前の利益や価値だけにフォーカスするのではなく、中長期的にものごとを見つめることが大事です。
その結果、本質的に大切なことにフォーカスできる自分自身の体質を構築しておくのです。
待つことについては、こちらの1冊「チームの生産性どうしたら上がる!?『「答えを急がない」ほうがうまくいく』三浦麻子」もぜひご覧ください。

待てるためには、将来を信じることができるかが大切でしょう。
自分自身や周囲に対してどれだけ信じることができるかで、待つことができるようにもなるでしょう。
そのためには、いまここでどのような習慣をつくり、運用していることができるかということが大切になると思います。なぜなら、自分は自分のことをよく感じているからです。
案に感じている自分自身が、なにか未来にかけて良い習慣を抱えていれば、自分に対する自分の認識を変えていくことができ、待てる自分を目指すことだってできるかもしれませんね。

メタ認知せよ?
自分自身のよりよい習慣を作っていくためには、自分のことを知っていることが重要でしょう。
メタ思考を持つということです。メタ認知ということは、自分の認知活動を客観的に見つめて、理解することです。
メタ認知を理解してみつつ、2つのアプローチで、自分自身を探索してみましょう。
内的探索と外的探索です。
内的探索というのは、実は自分はこれに憧れているんじゃないか?ということや、あるいは、こういうことに興味があるのではないかと探索することです。
一方で、外的探索としては、行動パターンを変えていろいろな世界や体験をしていくことに触れて、旅行に行ったり、普段会わない友だちと会ったりして、その中で感じることを積み重ねていくということです。
2つの刺激を得ることで、自分自身を深く理解し、絶えず習慣を磨いていくことができるようになるでしょう。
また、一人で歩みを進めていくのではなく、他者と共に進んでいくという可能性も忘れないようにしましょう。
主語をWeで考えることには、少なくとも普段の仕事でマイナスの副作用はないように思う。
I(私)の解像度を上げたら、あるいは、上げるためにも、We(私たち)で世界や活動を捉えるということが欠かせないでしょう。
ものごとは、自分ひとりでやるということだけではなく、だれかとやってみることに可能性を見出すと、さらによりよく向かっていく取り組みを創ることができるのです。
詳しくは、こちらの1冊「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」もぜひご覧ください。人とともにある力を期待するヒントをたくさん得られます。

本書『きみに冷笑は似合わない。 SNSの荒波を乗り越え、AI時代を生きるコツ』においても、こちらの1冊「【意志に頼るな!環境を変えろ!!】FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略|ベンジャミン・ハーディ,松丸さとみ」が取り上げられています。

この中で、次のひとことを著者・山田尚史さんが取り上げてくれています。
それは、“習慣はアイデンティティから生じ、アイデンティティは習慣が形作る”ということだ。
人は、自分という心があって体がそれに従っているのだけではなく、実は体の刺激があって、心が結果的に作られているということも、科学的に証明されているそうです。
習慣というのが限りなく、人格に作用し、そして人格がさらに習慣を作り出していく、ということを信じて、短期ではなく、中長期でものごとを見つめて、考えていくことがいかにできるかが、人生戦略においてとても大切な視点・視野になりそうですね。
まとめ
- AI時代を俯瞰すると?――人として「人格」を磨くことが最良の基本戦略になりそうです。
- 割引率を低くせよ?――いまここに集中して、自分を信じる気持ちを高めていくことです。
- メタ認知せよ?――習慣と人格研鑽の相乗効果を見つめましょう。
