- どうしたらよりよいコミュニケーションを他者と磨くことができるでしょうか。
- 実は、「なぜ」という質問を封じることかも。
- なぜなら、これは最も良くない質問だと言えるからです。
- 本書は、“事実”をベースに互いに認識をアップデートしていくための1冊です。
- 本書を通じて、「なぜ」以外の論点を身につけることができます。

なぜは、危険!?
正しく問うということが、実はコミュニケーションにとってとても重要なことです。
そして、正しさというのは、「なぜ」の先には、ないというのが、本書の著者・中田豊一さんのスタンスです。
なぜなら、「なぜ」は、相手に言い訳を強要するリスクを孕んでいるからです。
実は、「なぜ」と聞くと、意図せずに相手の「思い込み」を引き出してしまうのです。
ビジネスにおいて、「なぜ(Why)」がフォーカスされます。なぜを5回繰り返して、真因を突き詰めるとか、Issueをラダリングするときも、なぜの構造をふかぼります。また、Whyから始めることで、自分で信じられるミッションを胸に事業に向かうことが可能です。
でもこれらの「なぜ(Why)」はすべて、自問自答であることに気づきます。
相手が自分自身であれば、「なぜ」は有効に機能することが可能です。
でも、これが他者である場合、「なぜ」というのは、詰問につながりやすいということをまず意識しておくことが大切でしょう。
相手との関係構築が難しくなるという意味でも、対話手法としては全くオススメできません。特に、問題分析の手法としては、全く見当はずれです。
何かを白状させるのではなく、アプローチとして本当に大切なのは、事実確認です。
もちろん、相手が問題解決について極めて高いモチベーションを持っていて、互いに信頼関係があるのであれば、「なぜ」は有効な質問になります。でも、そうした状況は稀かもしれません。
良くない質問は、すべて「思い込み」を助長させてしまいます。
- なぜ質問(=「なぜ・どうして」質問)
- どう質問(どうだった?)
- 問題を聞く質問(本当にそれが問題かどうかはわからない)
- 意見を聞く質問(これも思い込みを引き出してしまう)
- いつも質問(一般論を聞いても、解決に向かいづらい)
どう思うかというのも確かに大切ですが、往々にして、感情論になります。
そうではなく、明確な事実をまず確認したうえで、対処しなくては、感情論でこじれたまま、ものごとの本質にタッチできなくなってしまう可能性があります。
思い込みは、3つのコミュニケーションのねじれを発生させ、対話を成立させることを阻みます。
1 「思い込み」を引き出し、誤った問題認識や課題分析に繋がる
→後述の「空中戦」を引き起こします。
2 相手の言い訳を誘発する
→特に「なぜ質問」に顕著です。
3 相手に「忖度」を強要する
→力関係が強い場合、特に起こりやすくなります。
なぜや、どうしてを、ビジネスにおいては、なるべく回避して、よりよいコミュニケーションを意識してみたいです。
よい質問とは!?
コミュニケーションの基本は、対話です。
よいコミュニケーションの出発点には、良い質問があるのです。
良い質問とは、本書では、事実にフォーカスするということです。
事実だけはいつまで経っても「変わること」がありません。
事実にフォーカスすることでさまざまなメリットを得ることができます。
- 人間関係が改善される(感情論にならない)
- 事実を提示されるのみなので、互いにストレスを感じにくい。
- 相手が自分で答えをエルので、相手の行動変容につながりやすい。
事実ベースの質問で、これらのメリットをいかに享受できるかがキーです。
解釈は無数、事実は1つ。
この原則に則って、よりよい質問を意識していきましょう。
事実質問の基本公式を念頭に、起きましょう。
1)「なぜ?」と聞きたくなったら「いつ?」と聞いてみる。
2)「なぜ?」と聞かずに「Yes / Noの過去形」に変える。
3)「どう」と聞かずに「何」「いつ」「どこ」「誰」と聞く。
4)「いつもは」ではなく「今日は?」、「みんなは」ではなく「誰?」と聞く。
5)次の質問に困ったら「他は?」と聞く。
これらの基本公式を運用することで、なぜを回避して、つまり、思い込みや感情を排して、事実ベースで対話を進めていく素地をつくることができるようになります。
この時、主語を明確にするということ、そして、考えさせるのではなく、あくまで「思い出させる」というスタンスで、質問をしていくことです。
常に意識したいのは次のような、簡単な事実質問です。
- 「いつ?」
- 「何を?」
- 「どこで?」
- 「費用や手間はどのくらいかかったか?」
- 「効果はあったか?」「十分だったか?」「適切だったか?」
思い込みを排して、事実モードで、互いにファインディングスを積み重ねていきましょう。

まず、「いつ?」質問から!?
5W1Hでいうと、What(何)、When(いつ)、Where(どこ)、Who・Whom(だれ)にフォーカスして、Why(なぜ)、How(どう)を、避けてみるという方向性です。
最初は意識しすぎちゃうと難しいかもしれませんが、まず質問を「いつ?」に変えてみるといいかもしれません。
まずはすべての質問の最初を「いつ」と変えることからやってみてください。
- それはいつ起こったの?
- 最初はいつ?
- 一番最近はいつ?
いつ質問をぶつけることは、案外イージーです。そして、相手にとってもストレス無く応えられるいい質問です。
少し慣れてきたら、以下のような論点も意識してみるとよいでしょう。
1 問題・課題を定義する
2 当事者が誰なのか確認する
3 事実質問による8つの「分析と解決の公式」
4 解決のために、「信じて待つ」
ちなみに、事実質問による8つの「分析と解決の公式」とは、以下のようなものです。
- ⓪ 相手の回答を自分の言葉で言い直すのは厳禁
- ① 「問題」を語り始めたら、「いつ?」から始める
- ② 「そもそも解決したいの?」と聞きたくなったら「これまでに何か対処した?」と聞く
- ③ 「どうしていいかわからない」と言われたら、「他の誰かに聞いてみた?」と聞く
- ④ 「本当に問題なの?」と聞きたくなったら、「誰が、どう困ったの?」と聞く
- ⑤ 「一体なぜその選択をしたの?」と聞きたくなったら、「他にどんな選択肢があったの?」と聞く
- ⑥ 「〇〇が足りない」と言われたら、「いくら/いくつ足りないの?」と聞く
- ⑦ 「できない」と言われたら、「それをやるのは、誰が決めたんですか?」と聞く
- ⑧ 「わかっているのにどうしてやらないの?」と言いたくなったら、
「軽く微笑みながら、しばらく相手の目を見つめる」
1オン1でもとても機能を発揮する質問集です。いまここから実践して、ぜひ互いにフィードバックの輪を広げていきましょう。
対話については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧ください。

まとめ
- なぜは、危険!?――思い込みを助長させます。
- よい質問とは!?――事実質問が、互いの対話関係を創ります。
- まず、「いつ?」質問から!?――そこから公式を活用して、事実ベースからまず進めましょう。
