学び多き「静かな退職」とは!?『静かな退職という働き方』海老原嗣生

静かな退職という働き方
  • これからの働き方、どのように捉えていくのが良いでしょうか。
  • 実は、「静かな退職」という働き方が増加している、その流れを見ることが重要です。
  • なぜなら、これは、会社と従業員の新しい形を示唆するものだからです。
  • 本書は、「静かな退職」とは何か、それにどう向き合うのかを考える1冊です。
  • 本書を通じて、次の時代の働き方とモチベーションについてヒントを得ます。
海老原嗣生
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静かな退職とは?

「静かな退職(quiet quitting)」という概念が注目され始めたのは、2022年頃のアメリカが発端です。その背景には、コロナ禍以降の働き方の変化、価値観の見直し、そして労働市場の構造的な変化があります。

「quiet quitting」という言葉が最初にバズったのは、TikTokのあるユーザーが「仕事に人生を捧げるのはやめて、自分の時間を大切にしよう」と語った動画がきっかけでした。

その後、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルなど大手メディアが取り上げ、議論が加速したのです。

この背景には、コロナによる仕事への価値観の変化が大きくあげられます。

リモートワークの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になった反面、「働きすぎ」「燃え尽き症候群(burnout)」が問題視されました。

その中で、「仕事は生活の一部であって、すべてではない」という価値観が広まりました。

事実、アメリカの調査会社ギャラップ(Gallup)の報告によれば、仕事へのエンゲージメント(熱意ややりがい)を感じていない社員が増加。

「与えられた仕事はこなすが、それ以上のことはしない」働き方は、パフォーマンス低下にもつながり、企業にとっても課題になってきています。

「静かな退職」という選択肢、実は日本においても、身近になりつつあるかもしれません。次のようなスタンスで働く人が周りにいませんか?

  • 言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしたくない。
  • 社内の面倒くさい付き合いは可能な限り断る。
  • 上司や顧客の不合理な要望は受け入れない。
  • 残業は最小限にとどめ、有給休暇もしっかり取る。
  • 会議で特段の発言をしない。
  • 管理職にはなりたくない。
  • 定時にきっちりあがる。

こうした働き方をこれまでと異なるということだけで、否定するのは少し拙速かもしれません。

これに対比する「忙しい毎日」を過ごしている従業員を想像してみましょう。これまでの働き方をする人ですね。

①評判のいい営業は、顧客訪問をした後に、お礼のメール(昔は手書きのお礼状でした)を出します。
②「近くに来たので寄りました」と、こまめに顧客を訪問します。
③賀詞交歓会などの催し物に顔を出します。
④ちょっとしたことがあると「上司を連れてきます」という対応をします。
⑤会議では、手書きで良いのにパワーポイントの資料を作成し、それを人数分コピーして配布します。
⑥パソコンに細大漏らさずメモをとり、それを議事録にまとめます。
⑦ビジネスでメールを出す時にも、時候の挨拶から書き始め、その後、近況報告や先日のお礼などを入れてから、ようやく本題を書きます。

ともすると、こうした働き方は、称賛されるべきものとして取り上げられてきたかもしれません。

でも、別の見方をすれば、こうした働き方は、過剰な労働を自ら課してしまっている?とも、捉えることができるかもしれません。

私たちは「何かあったら」「ひょっとすると」で忙しくしている。

こう見てみると、「静かな退職」者が単なる利己的な思想で、組織にぶら下がっている存在だけとして捉えるのは、もったいない!と思えてくるかもしれません。

会社の仕事は、その気になれば、無限大に広げていくことができるのです。仕事を生産することに私たちはとても長けています。その結果が「ブルシット・ジョブ」と呼ばれる、意味のわからない、価値を生んでいるのか生んでいないのかも良くわからない業務に結実しています。

ブルシット・ジョブについては、ぜひこちらの1冊「【あなたは、レンガを積んでいるか?それとも聖堂を建てているか?】ブルシット・ジョブと現代思想|大澤真幸,千葉雅也」もどうぞ!

微に入り細を穿つように、「忙しい毎日」を大量生産するのではなく、一歩引いてみて、「静かな退職」という現象から何を学べるのかを考えてみることも重要でしょう。

忙しい毎日 vs 静かな退職!?

そもそも、なぜ私たちは「忙しい毎日」を送ることを前提としているのでしょうか?そして無駄に「疲れて」いる。

「おつかれさま」という言葉にそうした商習慣が現れているようです。

そもそもですが、特に日本においては、残業の割増規定が、長時間労働の背中を押している構造があります。残業をすると、定時内で働く場合よりも、高い賃金をもらうことができます。

また、賞与についてもとくに日本の労働者(従業員)は、会社収益と一体となって上下する仕組みが取られがちです。

会社収益のおこぼれに与るというインセンティブが、また会社への奉仕を強めます。

こうして、会社と一体となって、残業(労働時間)を増やし(!)ながらも、収益に対してさらに強くコミットしながら、猛烈に働くという構造を作ってきたのです。

社会が右肩上がりのときには、この労働価値観や環境も上手に機能してきたに違いありません。

ですが、社会の変革期にあって、環境が大きく変わる中で、特に昭和の日本経済を支え作り上げてきた「大企業」においては、特に、矛盾が発生しています。

そして、この矛盾をさらに際立たせているのが、「女性の社会進出」です。

2014年以降、女性の正社員数は非常に増え始めています。コロナ禍を経てもこの傾向は変わることがありませんでした。一方で、「非正規社員」は、2019年をピークに減少に転じており、従業員の構成が大きく変化しています。

女性の正規雇用数は、2024年上半期において1241万人となり、2003年以来21年ぶりに非正規雇用数を上回ったのです。

育休制度が整備されて、出産後も働きやすくなったことも、背景にあります。

本気で女性活躍を考えねば経営が成り立たなくなった2010年代後半

価値ある仕事、意味ある仕事をいかに選定して、残すのか、限りある時間をどのように配分していくのか?について、本気で企業は考えなくては、立ち行かない時代になったのです。

専業主婦という仕組みは、家庭における人員1名分(多くが男性)の24時間(!)を自由にできた時代から、企業は、家庭内の状況を想像しながら、いかに会社の業務に効率よくコミットメントを得られるか、という高度で複雑な課題に立ち向かう必要が出てきているのです。

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ポジな部分を抽出せよ?

「静かな退職」ということをいかに成功させるか?という視点で見ていくと、これからの仕事に対する向き合い方のエッセンスを抽出することができるでしょう。

なぜなら、「静かな退職」というのは、一定の生産性を担保していなくては成り立たないからです。そつなく、会社のコミットメントを満たしながら、時間という資産を確保するには、一定の生産ラインを安定的にクリアしている必要があるのです。

その基本となるのは、「あなたにとって、持ち出しが少ないにもかかわらず、最大限のパフォーマンスを残せる行動をする」ことです。

大事なことは、まず心象だそうです。

マナーが良ければ大抵のことは許されるということで、まず、基本的に周囲のメンバーからよりよいイメージを得られるような基本的な挨拶や笑顔、連携意志、コミュニケーション、約束を守るなどの基本的な行動を原則とするべきです。

また、重要なこととしては、「反論をしないこと」というのもあります。

反論している時間があれば、まずやってみる、いっていの成果を上げたうえで、よりよい効率的な手段を提示する方が、より生産的に機能します。

何より重要であることは、「やらなくて良いことは潔くやめる」ということを大前提として認識することです。時間は有限なのです。意味のない時間を過ごすほど、無駄なことはないというマインドセットの立って、スジのよい仕事や案件を進められるように、自分で時間の使い方をチョイスできるようになりましょう。

大切なことは、その時間をチョイスできるかどうかは、自分自身が一定の貢献を絶えずアウトプットすることができているのか?という土台づくりを大切にすることです。

過剰にプラスを重ねることではなく、マイナスを徹底的に排除することも欠かせない視点ですね。

評価で下位2割にだけは絶対に入らない。

仕事のツボを絶えず押さえて、営業なら、売上の大きい重要顧客を担当する、スタッフ職ならば部署の最重要ミッションを担うなどの基本的な業務対応を進めていくことです。

「厄介な仕事」こそ、実は積極的に受け入れて、効率化をもたらすなども組織貢献の土台を作っていくことが極めて重要です。

「静かな退職」は、実は可能性の宝庫でもあります。

1)人として、「マナー」の徹底すること。
2)業績につながる可能性が高いことを徹底すること。
3)自分の「静かな退職」のスタンスを正しくコミュニケーションすること。
4)Whyでものごとを理解すること。

退職というキーワードからネガティブなニュアンスになってしまうかもしれませんが、これは、早合点です。

本当に彼らが目指そうとしていることを、見つめてみましょう。

本当に大切なことをいかにスクリーニングし、自分の成長や手応えを確保できるように、いかに時間を創出することができるか、そうしたスタンスと行動を絶えず研鑽していくマインドセットとスキルセット、行動様式を備えた生き様こそが、「静かな退職」なのです。

「静かな退職」という言葉がなじまないのであれば、もしかしたら「価値集中型キャリア」と読んでみる(呼んでみる)と良いのかもしれません。

まとめ

  • 静かな退職とは?――最低限の生産性を担保しながら、時間という資産を確保するスタンスです。
  • 忙しい毎日 vs 静かな退職!?――冷静に本当に「忙しい毎日」は必要なのかという点検がキーです。
  • ポジな部分を抽出せよ?――「静かな退職」を「価値集中型キャリア」と読み替えて見ると、学ぶべきことが多々見つけられると思われます。
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