- どうしたら、富をよりよく築き、豊かな人生を目指すことができるでしょうか。
- 実は、自分をよく知ることがスタートラインかもしれません。
- なぜなら、富というのは、全人格をかけた生涯のプロジェクトだからです。
- 本書は、しっかり教えてもらう機会のない、富の増やし方に関する1冊です。
- 本書を通じて、人生における「経済的自律」のあり方を検討する機会を得ます。

4つの論点とは?
前回の投稿「何があれば、あなたは満足か!?『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』スコット・ギャロウェイ」に続き今回もこちらの1冊『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』のご紹介を続けていきたいと思います。
前回の投稿では、経済的自律と自立を実現するための考え方について解説しました。
資本主義社会において人生を財務面から豊かに過ごすためには、富の本質とそれが集まる仕組みを理解することが重要です。資本主義は人類史上最も生産的な経済メカニズムである一方で、既得権益者や富める者、資本を優遇するシステムでもあります。だからこそ、この仕組みと向き合い、具体的なアクションを取ることが自分の人生の自律性を確保するために不可欠です。
本質的な目標は「経済的自律」(システムを理解して行動すること)に加えて、「経済的自立」(働かなくても生涯生活できる資産を持つこと)へと進むことです。
経済的自立の定義は「受動的所得>消費支出」という式で表されます。
そのために重要なのが自己理解です。「自分は何があれば満足した人生を送れるか」という問いに向き合うことで、際限なく富を求め続けるという罠から逃れることができます。実践的には、月々の消費支出の25倍の資産を築くことが目安となります。
さらに、「富=フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)」という考え方に基づき、以下の4つの要素が重要です。
もう少し具体的に言うと、「富=仕事に集中して収入を高める+(無駄遣いをしない節度ある生活×複利の力を活かした長期的な投資×分散投資でリスクを減らす)」となる。
- ストイシズム:節度ある生活を送り、人格を磨き、コミュニティとつながること
- フォーカス:収入を得る能力を身につけ、重要なことにリソースを集中させること
- 時間:複利の力を理解し、時間を味方につけること
- 分散投資:金融市場に賢く継続的に参加し、退場しないこと
これらを実践することで、資本主義の仕組みを利用して経済的自立を達成し、人生のコントロール権を得ることができます。
今回は、4つの論点を具体的にみてみましょう。
人格を磨こう!?
ストイシズムについて、具体的にみてみましょう。
ちなみにストイシズムは、外部環境ではなく自分の思考と行動の制御に焦点を当てる古代ギリシャ発祥の哲学です。
コントロールできることとできないことを区別し、感情に振り回されず理性的判断を保つことを重視します。
経済生活では、本当に必要なものと単なる欲望を区別し、社会的地位のための消費を避け、シンプルで質素な生活を送ることを意味します。また、短期的満足より長期的目標を優先し、知識やスキルへの投資を重視します。
コミュニティとの関わりを通じて信頼関係を構築し、他者への奉仕と思いやりを実践することも含まれます。日々の小さな選択の積み重ねが、最終的に経済的自由と精神的充実をもたらします。
詳しくはこちらの1冊「【世界の定義は、自分にある!?】エンキリディオン(ストア派哲学の手引書)|エピクテトス,湊凛太朗」やこちら「【ストイックは、生きやすい?】ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術|ライアン・ホリデイ」をぜひご覧いただければと思います。おすすめです。


なぜストイックの語源になっているストイシズムが、富で必要になるか、というと、端的に言うと、富との向き合いは、人生を通じた取り組み、つまり時間軸が長いからです。
何年にもわたって自分の意図と行動を一致させるには、自制心よりももっと深いところにある何かが必要なはずだ。その答えは、端的に言えば「人格」になる。
富の追求とは、「人格」とシンクロします。ある意味、全人格をかけてプロジェクトであると言っても過言ではないものです。
そうした論点からみた時に、ストイシズムの勇気、知恵、正義、自制という4つの美徳がいかに重要かを改めて知ります。
1)勇気・・粘り強さを持ちましょう。現代では「グリット」と呼ばれる力です。
2)知恵・・知恵とは、「自分のちからの及ばない外的なものと、自分のコントロール下にあり選択できるものに問題を切り分けられる能力」のことです。
3)正義・・公共の利益にコミットし、人間は互いに支え合っているという認識を持つことです。利他の精神とも言えるかもしれません。
4)自制・・自分自身を知る力です。
実は、現代の資本主義を活用するとき、この4つ目の自制の力が不可欠になります。前回の投稿でも記載の通り、この自制心が働くからこそ富と正しく向き合うための「自分が何で満足を得るのか?」ということに答えることができるようになるのです。
富を築くことは、全人格的なプロジェクトでなければならないのだ。
お金を求める気持ちは、際限がありません。そしてなんとも邪悪なことに、お金を持てば持つほど、お金の効用は低減していくのです。0円から100円のときの気持ちと、10万円から10万100円の気持ち、全然違いますよね。
また、もうひとつの真実として、次のようなことをストア哲学の権威は、言葉を残しています。
ローマの偉大なストア派の哲学者セネカは、「いくら価値あるものを所有していても、分かち合う人がいなければ、それを楽しむことはできない」と述べている。 成功者の多くは、価値あるものを手にするようになったとき、初めてこのことに気づく。
そういえば、私の大好きな映画のひとつである『INTO THE WILD』という作品にも同じような視点があります。
『INTO THE WILD』は、裕福な家庭に生まれた青年クリストファー・マッカンドレスが、社会のしがらみを捨てて自由を求める実話を描く内容です。
大学卒業後、全財産を寄付し、アラスカの荒野を目指す旅に出ます。旅の途中で様々な人々と出会いながら成長するが、最終的にアラスカの荒野に到達。そこでの孤独な生活の中で、真の幸福とは分かち合うことだと悟るが、食糧不足と厳しい自然環境により命を落としてしまいます。
主人公クリストファー・マッカンドレスが最後に残した言葉は、日記に記された
“Happiness only real when shared.”(幸福は、分かち合うことで初めて本物となる)
という一文です。
彼はアラスカの荒野での孤独な生活の中で、これまでの旅の経験を振り返り、真の幸福は他者とのつながりの中にあると悟ります。しかし、すでに衰弱しており、助けを求めることもできずに最期を迎えました。
この言葉は彼の生き方と旅の意味を象徴するとともに、現代において私たちの生き方に対してひと筋の光を差し込んでくれます。

人的、社会、経済資本を複利で運用?
ついで、フォーカスの重要性をみていきましょう。
フォーカスというのは、どんな好循環の起点(糸口)を創り出すか?ということです。自分が何をするのか?ということについて、自分を知りトライする領域をよく検討することです。
ひとつ重要な論点としては、「時間」という限られた資産をどういった価値観を元に、何に投資するのかということです。
そうしたフォーカスの結果が、実は、才能を突き詰めていくことに繋がります。
才能とは、他人にはでいない(またはしようとしない)が、あなたにはできる何かのことだ。
こうしたアクションを作る過程が、お金の貯める「筋肉」をつくっていくことになります。
重要なのは、他人ではないのです。自分には何ができるのか、ということを、自らの意志を持って進められるかどうか検討してみましょう。
人は情熱ではなく才能に従うべきだ。
さらには、お金と時間の法則を知ることです。これは端的に「複利のちから」です。
複利とは、元金だけでなく発生した利息にも新たに利息がつく仕組みです。単利と異なり、時間経過とともに資産が加速度的に増加するのが特徴です。
計算式は、「A = P(1 + r)^t で表され、A(最終金額)、P(元金)、r(利率)、t(期間)」を用いて算出できます。
例えば100万円を年利5%で、10年間運用すると約163万円になります。
複利は「時間」とともに効果が大きくなるため、長期投資において非常に強力なツールとなります。「複利の魔法」と呼ばれる所以です。若いうちから投資を始めることで、この複利効果を最大限に活用できます。
複利のちからは、ぜひこちらの1冊「富とは、心理次第!?『サイコロジー・オブ・マネー』モーガン・ハウセル,児島修」もご覧ください。実はこちらの1冊は、今回ご紹介の1冊の中でもご紹介されています!

投資とは、時間に対する価値観でもあるということです。
ふと、自分が1日に何に対して時間を投下しているのかをよく見つめてみると良いかもしれません。おそろしく、SNSに対して時間を使っているのがよく分かるのでは?
心からそうした使い方を望んでいるのかどうかを元に検討してみると良いです。それがフォーカスに値するのか、つまり、自分の個性や人的資本が拡大することについて、寄与するのか?という論点が重要です。
かつ、投資の視点を磨くためには、市場に参加すること、そして何より、金融市場から退場しないということです。
そのためには、中長期のリターンと、そして自分の心理的安全性を担保してみることが、絶対に必要です。そのためには、投資を投機にしないということ。
つまり、リターンを合理的に時間も含めて考えられる手段として「分散投資」が大切なのです。
まとめ
- 4つの論点とは?――ストイシズム、フォーカス、時間、分散投資を検討してみましょう。
- 人格を磨こう!?――全人格を持って突き詰めていくことが富をなすことに繋がります。
- 人的、社会、経済資本を複利で運用?――時間を味方にできるシナリオを描きましょう。
