- 生き方を見定めるのが難しい時代、どんな視点・考え方が頼りになるでしょうか。
- 実は、「淡々としたストイック」を身に着けていくことが重要戦略かもしれません。
- なぜなら、自分磨きの継続性こそが、道をひらくからです。
- 本書は、これからの自分を見つめるための1冊です。
- 本書を通じて、今日1日をいかに過ごすか、これからの時間をどう積み重ねていくのかを考えるきっかけを得ます。

ゆるストイックとは?
以前のように、「成長」「競争」「勝利」の軸を重視するような、意識高い系の生き方には、もう戻れない、それが正直な印象ではないでしょうか。
しかし、だからといって、「無理をせずに、いつも私らしくいられればいいや」ということだけでもなんだか違う気がします。
このジレンマを多くの人が抱えて、どうしたらいいものか、と模索しているのが現代であると言うことができるのではないでしょうか。
少し前の昭和・平成時代であれば、タイに自分を探しに出かけるところですが、残念ながら、世界中を探しても、自分自身を見つけることは難しいものです。
こうした状況に、著者・佐藤航陽さんは、「修行僧」のように黙々と自己を磨き続けていく生き方をおすすめします。
それが本書のタイトルである「ゆるストイック」。
自分に対して厳しくストイックでありながら、他者に対しては、価値観を押し付けるのではなく、否定をするでも肯定するでもなく、違いを尊重して生きていく方策です。
この柔軟性を持ったストイックさこそが、「ゆるストイック」という生き方です。
- 「がむしゃらにがんばるか」
- 「がんばらないで、どう休むか」
この2極化に振り回されること無く、自分自身で新しい指針と行動習慣を身に着けていくことができるようになるでしょう。
競争にとらわれすぎず、かといって怠惰な生活に流されることもない。
「淡々と自分のペースで歩み続ける」というスタイルなのです。
一生懸命に何かを取り組むことはとても大切なことで、ゾーンに入れば、自分の潜在能力に触れていくことができるし、そうした時間は、多くの成果を結果的にもたらします。
しかし、「急ぐ人」は燃え尽きてしまうのも事実。
いいバランスが大事なことには代わりません。
また、例えば、現代の企業組織を考えても、「自分から何かをトライする人」に対して、格別の投資をしたり、あるいは、チャンスを提供する風潮が強まっているようにも捉えることができます。
背景には、「働き方改革」や「ブラック化防止」などで、これまで以上に個々人のコンディションに対する“配慮”が必要になっているからです。
今では、「意欲がある人にだけ教育のリソースを割く」という流れが一般化し、やる気が見えない人に関しては黙認するほうが「コスパがいい」といった風潮が強まっています。
企業は、これまでのように「一律」で教育の機会を提供することの手を緩めて、相手をよくみて、相手次第でそうした機会や投資を検討するスタンスになっているのです。
自己管理がキー?
従業員側からすれば、「本人次第」という企業のスタンスに“どう対応するか”というよりも、むしろ“どう活かすか”という考え方で向き合っていくことが欠かせないポイントとなります。
ますます、「自己管理」の重要性はましています。誰も、強制的に導いてくれることがなくなってしまいました。やるか・やらないかは、自分次第。
「自分の成長は自分で管理する」という姿勢が、社会のあらゆるところで求められるようになっています。
でも、冷静に考えれば、これは普通のことだったのかもしれません。
これまでの社会であまりに会社の存在が大きくなり、一括採用、一括教育、そして定年まで一直線に面倒を見続けるような仕組みの中で、私たちは、ひとりで生きていく、自ら自律してものごとをとらえて、自分を構築していく視点をただ、単にわすれていただけなのかも、と捉えることができれば、素直に受け入れることができるのではないでしょうか。
やや、厳しい風当たりに感じるかもしれませんが、もしかすると、人がよりよく生きていくためには、一定の努力がやはり必要になるのかもしれません。
何もしていなければ、身体を維持することだって困難なのですから、知性を獲得してしまった私たちは、それを満たすための何かをやはり一定の工夫や踏ん張りのなかで、満たし続けている必要があるのです。
だからこそ、「自分を律する力が必要である」と確信していたのです。
「やる気のない人」に関わるのは、コスパが悪いと、さらにみなされる社会・会社の中で、どう自分というひとつのプロジェクトを舵取りしていくかを、よく検討してみることが大切でしょう。
ゆるストイックのためには、6つの心構えを大切にすることから始めてみましょう。
1.公正社会仮説から脱出する:「努力は報われる」「正義は勝つ」という思想です。これに囚われすぎると、「自己否定」や「他者への不満」をつのらせてしまい、理想と現実の中で苦しんでしまうことがあります。これまで社会は、このマインドで労働者に向き合って植え付け、努力を喚起してきたので、なかなか払拭するのは難しいですが、結果というのは、単に「運」の要素も関わっているということを知るべきです。
「努力が必ず報われるわけではない」という現実を冷静に受け入れることが重要です。
2.被害者意識を持たない:悪者探しをしないようにしましょう。困難な状況に直面すると、人はついつい「悪者」を探して、全力でその人のせいにしてしまいがちです。なぜなら、その方が、自分の心が打撃を受けることを避けられるからです。個人ではどうしようもできない「大きな外部の原因」に責任を求めるのは、心理的にとても自然なことなのです。
でも、周りの環境や他人にばかり原因を求めてしまうと、同じ問題が繰り返されることになり、問題の堂々巡りになります。
大切なことは、次のように問題を自分に引き寄せてみることです。
- 「今の自分に何ができるか」
- 「どうしれば同じことが繰り返されないか」
3.自己責任論から目を覚ます:これはもともと権力者の管理ツールでした。「働けば報われる」「自分の力で成功を掴むべき」という発想を共有していれば、資本が最初から豊かであった権力者は、正統性をアピールできますし、その資本を投下したシステムを人によって動かすために有効でした。
しかし、実際には、「持つ者」というファクターがその人の成功を左右することも多々あったはずです。「家柄」「教育環境」などの影響なども冷静に私たちは見つめる必要があります。
重要なのは、ものごとを合理的に、そして、理性的に見つめることです。

当たり前を疑い、考えを自ら作ろう?
4.リスクゼロ思考から脱出する:リスクがゼロなら、リターンもゼロなのです。リスクがなくなるまで動かないことこそがリスクであるということを知りましょう。毎日の積み重ねで、少しずつコンフォートゾーンを広げながら、着実にリスクテイクをして、成果を求めていく活動を作っていくことが、人生をより豊かなものにしてくれると、信じてみましょう。
5.ゼロ失敗思考からも抜け出す:百発百中なんてありえません。成功したと言われる人ほど、多くの失敗を重ね、それを解釈することで、今を作り上げてきました。「成功」の対義語は、「失敗」ではなく、「無挑戦」であると心構えを新たに、一歩を踏み出してみましょう。
6.ロジカルシンキング信仰から一定の距離を取ってみましょう:合理性は確かに重要ですが、限界もたしかにあります。人間がものごとの「全体」を完全に見通すのには、当然難しいのです。常に不完全な情報の中で、ベストを尽くしていくというマインドセットで、まずやってみることも重視してみることが大切でしょう。
現代で私たちが「常識」や「正しい」と信じていることの大半は、過去の人々が生み出し、社会に定着させた「発明品」にすぎません。
私たちが疑うことなく信じているそうした、マインドセットについて、客観的になり、改めて自分の考えとして採用するのか、あるいは、距離を置くのかをもう一度、考えてみることから、よりよい「ゆるストイック」が実践できるのです。
世の中と、生き方と働き方を客観的に見つめることができるよい1冊に出会うことができました。次回も本書『ゆるストイック ── ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考』のレビューを続けさせていただきたいと思います。
あわせて、こちらの1冊「【この10年でこんなに変わった労働環境!?】会社はあなたを育ててくれない|古屋星斗」「【ありのまま・なにものかは、両立する!?】会社はあなたを育ててくれない|古屋星斗」も刺激的な着眼点を提供してくれます。ぜひご覧ください。


まとめ
- ゆるストイックとは?――自分を淡々と研鑽する考え方と実践により、理想と現実のバランスを取ります。
- 自己管理がキー?――自分でやらないと、誰もやってくれません。
- 当たり前を疑い、考えを自ら作ろう?――“6つの視点”で現代と自分を俯瞰しましょう。
