- 何を価値観にするのが良いでしょうか。
- 実は、遊び、つまりプレイフルであるということかもしれません。
- なぜなら、遊びこそが、人が輝き続ける秘訣だからです。
- 本書は、上田信行先生、中原淳先生による、プレイフルなマインドセットを育む1冊です。
- 本書を通じて、プレイフルとは何か知り、プレイフルを育むヒントを得ます。

学びとは?
学びや、そして、教育というものに対して、みなさんにはどのような思い出や記憶、イメージがあるでしょうか。
どこか、「苦しいもの」という認識もあるのでは?
実は、本書の著者である上田信行さんも、若かりし頃は、そうしたイメージを強く感じていました。
英語の勉強を“道場”に入門して、励んでいたのですが、なかなかそれが苦しかった・・苦しい中でなんだか違うなぁという想いをつのらせていた学生時代であったと振り返られています。
しかし、そんな上田信行先生が、米国に留学し、そして、偶然『セサミ・ストリート』の制作にふれることから、ご自身の直感に従って、プレイフルな学びのあり方を確立されていくまでを、本書の中では追っています。
『セサミ・ストリート』の制作自体は、フォーマティブ。リサーチという手法を取り入れたもので、これは、制作者が、受け手のリアクションを絶えずウォッチしながら、コンテンツの内容をその場でより良いものにしていくアプローチです。
まさに、送り手と受け手が一体となって、現場が駆動していくような、そんな即応的な制作スタイルを指します。
そして、同時にその現場は、ワークショップ形式であるとも言えるそうです。コンテンツの制作家、プロダクションの制作家、そして、受け手の状況を把握するリサーチの専門家、それらの人々が、同じ場を体験しながら、ひとつのものに集中し、フラットに意見を出し合っていく“ライブ”は、確実によりよいものを作る力を養います。
プレイフル・ラーニング
学びの中には楽しさがあふれ、
楽しさの中には学びがあふれている。
これらのより良い場を作り、その考え方を教育に転用したものが、「プレイフル・ラーニング」と呼ぶものです。
いまここに夢中になろう?
教育を科学的にコントロールしようとすると、学習者が到達するゴールを明確に行動目標として記述して、そこにいたるために、どのような教育内容を配置すればいいのか?という考え方になってしまいます。
これでは、学習者の可能性を閉じさせてしまうことになり、結果的に、受け手(生徒)も送り手(先生)も「ゴールに描けないもの」を目指すことができなくなってしまいます。
「ゴールとして書きやすいものを、ゴールとして設定してしまう」という本末転倒が起こってくる。
こうした疑問点を解消するために、上田信行先生が参照されたのは、キャロル・ドゥエック教授のマインドセットに関する視点です。
ドゥエック教授は、スタンフォード大学の心理学者で、『マインドセット「やればできる!」の研究』という著書で有名です。彼女の研究は、主に2つの基本的なマインドセットを中心に展開しています。
- 固定マインドセット(Fixed Mindset)
- 能力や知能は生まれつきのもので、基本的に変わらないという信念
- 失敗は能力の欠如を示すものとして恐れられる
- 批判や否定的なフィードバックを個人攻撃として受け取りやすい
- 成功している他者を脅威とみなしがち
- 努力することは能力がないことの証明だと考える傾向
- 成長マインドセット(Growth Mindset)
- 能力や知能は努力と学習によって発達させることができるという信念
- 失敗を学びの機会として捉える
- 批判やフィードバックを成長のための情報として受け入れる
- 他者の成功からインスピレーションを得る
- 努力を成長と習熟への道筋として価値づける
キャロル・ドゥエック教授のマインドセットについては、こちらの1冊「【あなたは硬直型!?それとも、しなやか型!?】マインドセット:「やればできる!」の研究|キャロル・S・ドゥエック」もぜひご覧ください。

キャロル・ドゥエック教授は、「無力感(helplessness)」というのは、事後的に学習によって獲得されたものと説きました。
この考え方はマーティン・セリグマン教授の「無力感に関する研究」を参照したもので、この考え方に基づくと、よりよい成長軌跡を描くためのヒントを得ることができます。
つまり、マインドセット次第であるということです。
「知能というのは、伸びる可能性を常にはらんでいる」、「成長的知能感」というセオリーを持っていることが、実はその後の人生にとってかけがえのない習慣を作ります。
他人からどう見られるかということを気にせずに、自分がやりたいこと、つきつめたいとことをとことん挑戦して体得する、そのことが、結果的によりよい状況を創り出していく・・そういう好循環を信じることができるかが、実はとても大切なのです。
小さな枠に囚われるのではなく、自分の本当の力を引き出して信念を育てるために、マインドセットから見直していくのです。
学ぶことは、何かになるという手段ではないのです。実は、人にとって学ぶことが目的的であり、そのためにプレイフルであるということがとても重要な視点であるということです。

人とともにプレイフルを・・!
仮に自分自身がどんな学習感をもっていたとしても、「夢中に何かに取り組んでいる」ということは非常に楽しいことです。
自分の「可能性」について知らず知らずのうちに触れて、それを持って、さらに人と繋がる可能性を広げていくことだってできるからです。
上田信行先生が強調するのは、自分ひとりでそうした体験をするのではないということです。
人と共に、そうした体験をするということは、一人ひとりの能力ではなく、人ととの関係性の中で力を互いに出し合っていく様を確認することができるようになります。
人は具体的な経験をする時に、誰かと一緒に協働することで、より自分自身の「可能性」を高めていく事ができるのではないか、と。
「あなたがいるから頑張れる」「君と一緒だからもっと上を目指せる」・・・!
そんな他者の存在が、自分の可能性を広げていくような、そんな価値観を養っていくことが、さらなるプレイフルの環境を提供しあえるという可能性に期待できるのです。
オープンであること
閉じぬこと
そして、問い続けること
小さくまとまるのではなく、プレイフルに、リスキーに行く。
その先に、新しい景色を共有する世界観を見つめることができると信じて、みんなで進んでいきましょう。
上田信行先生の著書は、こちら「【遊ぶように仕事をする!?】プレイフル・シンキング|上田信行」やこちら「【本気で楽しめ!?】プレイフル・シンキング:働く人と場を楽しくする思考法|上田信行」もぜひご覧ください。


まとめ
- 学びとは?――本来的にプレイフルで、そして、非常に楽しいものです。
- いまここに夢中になろう?――あなたを固定的マインドセットから解放するヒントです。
- 人とともにプレイフルを・・!――一人ではいけないところまで、共に行くことができます。
