- より良く生きるためには、どのような観点が必要でしょうか。
- 実は、人の力は自然に引き出されるということかもしれません。
- なぜなら、進化の過程で、そのようにプログラムされているからです。
- 本書は、自然とともに生きることを考える1冊です。
- 本書を通じて、自分自身が持つ底力に気づきます。

野生の力とは?
本書で取り上げられるワイルドについて、考える時、動物を想像してみるとよいでしょう。
飼いならされた種類と、野生種を比べてみるのです。
犬とオオカミ、乳牛と野牛などなど、その違いを理解したら、私たちにも当てはめてみることです。
現代人と野生人、何がこれらを決定的に分けるか、それは、「文明」です。
文明がより便利で、より人に苦労をさせない暮らしを実現しました。それは家畜であってもそうです。
今日わたしたちを苦しめている病の大半は、この文明病なのだ。
使わない機能は退化していくというのが、進化のセオリーです。
五感や感性、自己修復力も含めて、文明化された人は、本来持つ野生人としての機能を失う危機に瀕しているのです。
世界の多くの国で、人は、心臓疾患、肥満、うつ病、そしてがんなど、私たちが遺伝情報を無視して、作り上げた生活の中でもたらされた苦しみにあえぐ人の数は、なんと多いことか。
これらの病気は、野生に生きていた人でほとんど確認されていないそうです。それよりも別の問題で死に至ることはあったかもしれませんが、生活習慣病と戦う必要がなかったことは事実です。
彼らは、自然の中で自然のままに暮らすことで、自らのホメオスタシス、つまり、自己回復力を働かせるメカニズムを十分に活用することができていました。
このメカニズムは、私たちの身体に当然いまだ備わっています。
これらを活用すれば、もっと自分の本当の力、身体を健康に保つこともそうですし、もっと直感を活かして、本能的にものごとをとらえて、考える力を引き出すことができるかもしれません。
何より理解いただきたいのは、食事、運動、睡眠、思考、そして生き方は、すべてつながっているということだ。
すべては、最終的に、脳と精神につながっていき、そしてものごとの認知、つまり世界をどう見立てるか、という根本的な人の能力に関わってきます。
食事を見直そう?
人間の脳が進化し始めたのは、この数百万年のことです。
いまだ進化過程とも言われているこの脳によって、私たちは認知能力を獲得しました。
それは、つまり、道具を使って、計画を立てて、万事賢く対応する機能です。
進化に即した機能を持っているのですが、でも、それは使おうとしなくては、引き出されることも、もちろん強化されることもありません。
本書の一貫した主張は、「野生に戻ろう」ということです。再びライフスタイルを野生化することで、私たちは、自然の生き方を取り戻すことができます。
走り、ジャンプし、だれかとダンスするというのがここでの治療法なのだ。
野生に帰ると言っても、いまから、原始人のような暮らしぶりに還るということではありません。
キーは、食事と運動を野生の力を引き出せるようなものに、意識的にコントロールしようということです。
まず、食事についてですが、そろそろ製糖を取るのを辞めるべきであると、本書は説きます。
ジュースや過剰な炭水化物などを取ると、「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態に陥り、身体に負担がかかり、そうした食生活を続けていることで、メタボリック症候群や、ひどい場合には、糖尿病のリスクが高まってしまうことが懸念されます。
インスリン抵抗性というのは、インスリンがあまりにも膨大に放出されるため、人の機能が麻痺して、血中の糖を抑える機能を発揮できなくなる状態です。
また、最近健康的なイメージがUPしていることから肉を積極的に食べる人も増えていますが、ここでも注意が必要です。重要なのは、穀物ではなく、牧草で育てられた肉を選ばなくては、身体に悪影響を及ぼしてしまいます。
ここは人も家畜も一緒で、自然にあるものを自然に摂るということが非常に重要なのです。つまり、人も穀物よりも、野菜のほうがベターということになります。
天然魚や、放し飼いの鶏のたまご、くるみをはじめとする木の実もよいでしょう。
どんな形でも精糖を摂ってはいけない。果物に含まれる果糖は量が多くなければ可。フルーツジュースはだめ。とくに避けるべきは、水に溶けた砂糖──ソフトドリンクだけでなく、栄養ドリンク、砂糖を含むジュースはすべてだめ。穀物も食べないこと。穀物が原料の食べ物もすべて不可。カロリーは脂肪から摂取しよう。ただし、人工の脂肪、別名、トランス脂肪酸は避けること。加工食品やファストフードはもちろんだめ。オメガ3脂肪酸を多く含む食べ物を探そう。卵、草を食べて育った牛、サーモンなど冷水魚、ナッツなど。新鮮な野菜と果物を摂ろう。多品目になるよう心がけよう。量は好きなだけ食べていい。食べることを楽しもう。

自然の中で運動しよう!?
運動を積極的に取り入れることで、脳が再形成されます。
高齢者が運動を行うと、「海馬の容量が著しく大きくなる」ことが確認されているそうです。海馬というのは、記憶に関与するため、結果的に記憶力がUPするとのこと。
また、運動によって、灰白質の減少を抑えることも確認されています。つまり、脳が縮小することを予防することにも繋がります。
自然を感じながら、運動の習慣を作ることも大切でしょう。自然のノイズに身を浸すことで、人はリラックスし、日頃の生活で蓄えられたストレスを減少させることができます。
トレイルランやハイキング、あるいは、もっと手軽に地域の公園に散歩にでかけることなどを、定期的に取り入れて、自然を感じながら運動してみましょう。
心拍計を購入して記録を取ってみることも良いかもしれませんし、いまなら、アップルウォッチなどは、そうした機能をデフォルトで備えています。
好きな運動を選ぼう、それがいちばんだ。気楽にできて、日々の習慣にできるもの。さまざまな動きが求められ、全身を使う運動が望ましい。トレイルランニングやクロスフィットはその典型だ。ジムも悪くはないが、できるだけ戸外で体を動かそう。自然の中で運動すると、相乗効果が得られる。日光だけでなく風と雨も顔で感じよう。雪の中を歩こう。寒さを感じ、暑さを感じ、喉の渇きを感じるのだ。準備ができたら始めよう! また、ほかの人といっしょにできる運動が望ましい。仲間といっしょに体を動かそう。ダンス、気功、太極拳など、長い歴史を持つ運動もいい。心拍計を買って心拍数を把握しよう。まずはゆっくり、ていねいに始めよう。休息日と休息週を設けること。走ったり踊ったりするのが楽しみになるまで、あれこれ新しいものを試しつづけよう。
食事や運動を積極的に考えてみることで、文明化に一線を引くことができるようになります。
本来的に身体が喜ぶ習慣を身に着けられれば、自分の五感がさらに鋭敏になり、不自然なもの(文明化されたもの)から一定の距離を置き続けることだっててできるかもしれません。
エーリッヒ・フロムが、著書『愛するということ』において、次のような言葉を残してます。
「種として幼いころの人間は、自然との一体感を維持していた。その時代には、土、動物、植物が人間の世界だった。彼らは動物と自分を同一視していた。(中略)だが、そうした原始的なつながりが失われるにつれて、人間は自然の世界から切り離されていった。すると、今度はその切り離された状態からどうにか脱しようとする欲求が強くなっていった」
「分離は不安を引き起こす。それは実際、すべての不安の源である。分離されているというのは、切り離されていることを意味し、人間としての力も行使できなくなる。それゆえに、分離されることは、助けがなくなること、世界──物質と人間の活動──を把握できなくなることを意味する。それはまた、世界がわたしに侵入し、わたしはそのなすがままとなることを意味するのだ」
私たちは、まだ自然とともにあるのです。それは間違いないこと。自然から離れ、生きることはできないのですね。
エーリッヒ・フロムの1冊はこちら「【私たちが生きる意味とは?】愛するということ|エーリッヒ・フロム」もぜひご覧ください。

まとめ
- 野生の力とは?――文明化の中で、衰退しがちな人が本来持つ身体の底力です。
- 食事を見直そう?――人がもともと食べていたものを積極的に選びましょう。
- 自然の中で運動しよう!?――身体を鍛え、脳の機能を正常化します。
