- どうしたら、よりよい毎日を作り上げていくことができるでしょうか。
- 実は、自然と親しむことがとても重要かも。
- なぜなら、自然は、人の力を解放してくれるからです。
- 本書は、自然にふれることの意義意味を説いた1冊です。
- 本書を通じて、世界中を旅する著者の視野から都市で暮らす人が忘れている感性の存在に気づくでしょう。

自然はあらゆる人のふるさと?
自然に触れると、より健康に、より創造的に、そして、より思いやりを持つことができるようになります。
健康、創造性、思いやり、どれも普遍的に人間が持ち得るべき最高の特性ではないでしょうか。
結果として、人生もより良い方向へと導くヒントを得られるように思います。
自然は、文明科学に大きく影響するものと思われますが、しかし、足元の数十年で、人の暮らしは自然から程遠いものになりました。
しかし、それでも、最近の都市開発においては、自然をいかに都市に取り入れるか、その中で、文化的な暮らしをいかに立ち上げていくかがキーワードになってきていることは、とても良いことだと思います。
都市で感じる自然と、本当の大自然、それらを行き来することで、人はもっともっと自分のちからを解放していくことができることを、本書は説きます。
ウェルビーイングは、漠然とした概念ではあるものの、それを重視していくことは、たしかによりよい人生のためのエッセンスを捉えることになります。
そして、自然こそが、そうしたウェルビーイングな自分を取り戻していく、あるいは、新しく作っていくきっかけを提供してくれます。
自然こそ「故郷」であると感じている。意識していようがいまいが人のふるさとなのだ。
人は、故郷を捨てて、豊かな人生を送ることは難しいのです。
間違いなく、人が産み落とされたのは、自然の中です。自らが自然を改良して、より住みやすいと想定する都市を作ってきましたが、やはりそれだけでは足りないのです。
自然ノイズに浸る?
自然に分け入ることで、人は、集中力を取り戻します。
その集中力というのは、スマホのアラートや、メール受信音や、通勤電車が近づくことの警告放送ではなく、人が本来持つような繊細で、微細な五感をフルに活用するような営みのことです。
上述のような都市のアラートに人は慣れすぎていて、過剰なストレスの中で生きています。
つまりあまりにたくさんの選択肢が提示される中で、それを絶えず選び続けていかなければならないという状態にです。
いま、目の前の青信号が点滅し始めた交差点をわたるか、あるいは、手元に届いたスマホのメッセンジャーのアラートにフォーカスするか?そういう取捨選択の連続の中で、私たちは1日1日をなんとかやりくりしているのです。
人間の脳は人間関係や精神的なストレスに敏感だ。
そうしたストレスは人間とは切っても切り離せないものです。でもそこから立ち直る力を持つことは、できます。
そして、そうしたレジリエンスを養わせてくれるのが、自然なのです。
自然には、自然の解像度があります。五感を通じて感じることに意義を見いだせるようなネイチャーな情報の中に身を置くと、想像以上にたくさんの刺激があることに気づくでしょう。
それは、繊細で、微細で、ふとした瞬間でなければ気づかないような、でも確実に手触りのある情報です。
人間が創り出した人工的なものとは一線を画すようなそうした情報に身を浸らせる時、私たちは太古からの感覚の目覚めに立ち会います。
夜空、すがすがしい空気、鳥たちの美しいコーラスとは無縁の世界で生きているうちに、私たちはそうした回復力を失ってしまった。ところが心地よい自然のなかを歩いていると、自分には時間も空間もたっぷるあるのだと実感できる。
人間には、3つの主要な神経回路があります。
1つめは、実行ネットワーク。これは集中して知的作業を行う前頭前野などが、刺激への対応と行動の抑制を実行します。
2つめは、空間知覚ネットワーク。これによって、人間は自分の位置を把握して、空間を知覚します。
3つめは、デフォルト・ネットワーク。実行ネットワークの活動が低下している時に、活動を始めるもので、無意識の感覚につながるものです。
これら3つのネットワークは水と油のような関係で、混じらず、どれかが優位のときには、それ以外のネットワークは活動を抑制されます。
キーは、デフォルト・ネットワークにあります。このモードの時に、脳は実行機能を休ませ、最高の力を発揮できるように脳に回復をする機会を提供するからです。
デフォルト・ネットワーク優位にするきっかけとして、自然は大いなるちからをわたしたちに提供してくれます。

自然習慣を作ろう?
都会に暮らす3000人を対象に、自然の中で過ごしたあとの気分とストレスの変化を記録した実験があります。1ヶ月のうち5hを自然の中で過ごすと、最大の効果を得られるという結果が得られています。
さらに82人のオフィスワーカーに、3つの異なる場所(都心、整備された公園、森林公園)で過ごしてもらう実験もあります。30分のんびりと散歩してもらい、その後15分じっと座ったあとに、質問紙に回答してみもらうものです。
結果は、整備された公園や森林公園で過ごした人は、優位にストレスから回復したと答える割合が多かったのです。
自然の中に座るだけでもこうした効果は見られ、さらに散歩することでさらに回復の傾向が高まることが、見られました。
ストレスからの回復や、リラックスだけではなく、実は活力度も上昇することができました。
公園や自然の中で過ごした時に、こうしたポジティブな変化が起こるのは、だいたい45分ほどかかったといいます。
緑のある場所ですごした人は、気持ちがポジティブになり、ネガティブな感情が減り、創造性も上がったと答えた。
1ヶ月に5hというのは、1回あたり30分~45分を週に1~2回以上ということになります。こうした時間を見出して、木々の下で過ごすことが、わたしたちにとって良い習慣になるのです。
著者・フローレンス・ウィリアムズさんは、都市で暮らす人が人生の中でどのように自然と親しむことができるかを、次のようにヒントとしてまとめてくれています。
- 毎日・・・庭、観葉植物、まちなかの公園で一息つく
- 毎週・・・緑豊かな大きな公園、川辺などでリラックスする
- 毎月・・・ハイキングや森林浴にでかける
- 毎年・・・大自然に畏敬の念を抱く
できれば、毎年、大自然の中に身を起き、少し眺めのハイキングやトレッキングなどをしながら、自然の雄大さ、素晴らしさを体感するような機会を得られるとよいでしょう。
わたしたち一人ひとりの人間は、自然からしたらとてもちっぽけな存在です。日々の悩みやこだわりごとなど、とても些細なことだったと改めて知り、そして、生き抜くための人としての底力の湧き上がることにふれる機会を持つことは、とてもよい時間になります。
人としての潜在能力を活かすという視点において、こちらの1冊「自分の中に眠る“自然の力”を解放するには!?『普通がいいという病』泉谷閑示」も多くのヒントを提供してくれます。ぜひ御覧ください。

まとめ
- 自然はあらゆる人のふるさと?――私たちは誰もが自然に抱かれる存在であるはずです。
- 自然ノイズに浸る?――自然環境に身を置くことは、人の本当の力を引き出します。
- 自然習慣を作ろう?――毎日、毎週、毎月、毎年、それぞれのサイクルで自然とふれあいましょう。
