ハックされるな!ハックせよ!『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』橘玲

不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0
  • これからの時代の働き方をどのように捉えていくのが良いでしょうか。
  • 実は、仕事は「フリーエージェント化」するという未来が待っているかもしれません。
  • なぜなら、情報技術の進展により、スキルと仕事のマッチング精度が向上するからです。
  • 本書は、未来の働き方に示唆を提供してくれる1冊です。
  • 本書を通じて、現代の当たり前が、未来において永続しない可能性に触れます。

働き方は柔軟性を帯びる?

橘玲さんが未来の世界について本書の冒頭で触れてくれています。働き方が、1・0~5・0へと進展します。

働き方1・0 年功序列・終身雇用の日本的雇用
働き方2・0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3・0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するうシリコンバレー型
働き方4・0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
働き方5・0 機械がすべての仕事を行うユートピア/ディストピア

仕事のストレスは、ほとんどが人間関係によるものかもしれません。今後、労働の単位が細切れになり、そしてチームが柔軟になる中で、そうしたストレスを感じることが減る可能性もあります。

一方で、自分のスキルセットとマインドセットを絶えずアップデートしていく必要性を、例えば、それなりの経済資本を求めるのであれば、必ず行わなくてはならないものとして捉えられることもあるでしょう。

サントリーHDの新浪社長が一時期、45歳定年説を説き、物議をかもしました。

これは、会社に滅私奉公しているだけでは、ミドルからの人生は保証されないから、それまでに会社だけではなく、社会で通用するスキル&マインドセットと資本を築いておくべきであるということを、暗に説いたものであると考えられます。

かつては「世界に冠たる」といわれた大企業が破綻したり、経営が迷走して分割・買収される姿を見れば、誰もが(うすうす)この主張の正しさに気づいているはずです。

間違いなく、会社だけで働くことを捉える時代は過ぎ去ろうとしています。

ちなみにこちらの1冊「【この10年でこんなに変わった労働環境!?】会社はあなたを育ててくれない|古屋星斗」もなかなか現実をレビューしてくださっているので、あわせてご覧ください。

労働やスキルをシェアする社会というコンセプトがにわかに現実味を帯びています。

タイミーという人材派遣のプラットフォームが、利用者を拡大させていますが、まさに、そのようなプレイヤーが登場して、新しい経済圏を誕生させ続けるはずです。

人材は自分の能力をもっとも活かせるところに移動していく。

そして、そうした移動の柔軟性を担保することをシステムやプラットフォームが応援してくれる世界観へと移行しようとしているのが現代であると捉えられるでしょう。

会社組織はなぜあるのか?

そもそも、なぜ会社組織が存在しているのでしょうか?

それには、「あらゆる取引にはコストがかかるから」という原則を理解している必要があります。

  • 検索コスト:市場で適正な価格水準を探り、取引相手を探す費用。
  • 交渉コスト:その相手と交渉し合意するための費用。
  • 契約コスト:取引相手との合意内容を確認し有効な契約にするための費用。
  • 監視コスト:契約の履行状況を関しする費用。

こうしたコストを総称して「取引コスト」といいます。

自社で生産することでこれらの市場コストを引き下げる、あるいは限りなく0にできるのであれば、企業は、内製化を推進します。このことによって、企業組織というのは、意味があるものなのです。

ただし、残念なことに、企業の内部であってもコストは発生します。

組織が複雑化するにつれて部門間のすり合わせで消耗するのはサラリーマンなら誰もが痛感しているでしょうが、こうして社内の取引費用が大きくなると、会社はやはり合理的判断によって市場取引を選ぶことになります。

例えば、アップルのスティーブ・ジョブズは、iPhoneの開発、マーケティングのコアコンピタンスに集中して、製造をすべてアウトソーシングするなどの方針を採択していることなどを見てみると、企業組織というのは、内外の取引を合理的に選択する機関であるとも捉えることができるかもしれません。

市場は生産に関するコスト(モノやサービスを生み出すために必要なコスト)をおおむね押し下げますが、会社は調整に必要なコスト(生産を手配し、円滑に維持するためのコスト)をおおむね押し下げます。

この2つはトレードオフの関係にあるので、絶えずバランスを見つめて、ジャッジをすることが経営の仕事でもあるといえるのです。

会社が存在する根本的な理由は、上述のようにコストの面から見てみると良くわかりますが、もうひとつ理由があります。

それは市場参加者が必要に応じて都度集まるやり方では、「完備契約」が結べないという事実です。

現実世界では、不測の事態がおきたときに、誰が何をするのかを明確に定められていないことがままあります。不完備の契約であるということです。しかし、会社が資産を所有していることができれば、その内部については、不完備契約であいまいなことについてコントロール権を行使することができて、事業を前に進めることが可能になります。

会社組織は、契約に明示されていないすべての決定権を経営陣に与えることで、スタックを回避することが可能なのです。

こうした会社組織のメリットは、今後の社会でもなくなることはないでしょう。

むしろ、少数のプラットフォーマーが大規模化していく中で、メリットを最大限活用していくことが予想されます。GAFAMという米国初のIT企業が、小さな国の国家予算級の規模に成長していることを横目にすれば、これは頷けます。

こうした環境の中で、そういうプラットフォーム(企業組織)に所属しない働き方も一般的になり、そうしたプレイヤーは上手にプラットフォームを使って自らの専門性と仕事をマッチングしながら、さまざまなコンテンツを流通させていくことになるのです。

ギグ化する世界の中で?

すべての仕事がプロジェクト単位になるかと言うとそういうことはなさそうです。

ギグエコノミーに最も適しているのは、コンテンツ(作品)の制作でしょう。エンジニア(プログラマー)やデータ・サイエンティストなどの仕事もそうです。

一方で、利害の異なるさまざまな関係者の複雑な契約を管理したり、大規模なバックオフィスを管理する仕事はこれまで通り会社組織に任されることになりそうです。

フリーエージェントがギグで制作したコンテンツ(音楽とか映画とか)も多くの場合は、会社のブランドで流通していくことを見てみると納得です。

世界標準の働き方では、組織に属していないクリエーターと、組織に属しているバックオフィス、そして、組織にぞくしていないあるいは属しているスペシャリストという立ち位置で構成されています。

スペシャリストとは例えば、医者や税理士・弁護士のような士業を想像するとイメージしやすいです。勤務医もあれば、開業医もあるという専門性を発揮する人材のことですね。

しかし、日本では、「正社員」もしくは「非正規」というレイヤーが非常に幅を効かせています。正規非正規という仕組みが、それぞれの人材の働きぶりの内実を覆い隠して見えづらくしている事実があります。

世界は急速に「未来」い向かっているのにもかかわらず、日本人(サラリーマン)の働き方はあいかわらず前近代的な「身分制」にとらわれたままです。

テック技術の進展や、働き方の柔軟化で、おそらく今後「正社員」や「非正規」の垣根が緩やかに崩壊していく可能性もあるかもしれません。

そうした中で、自分が何ができるのか、何を目指しているのか、そうした価値観の物差しをみずからが持って、舵取りをしていくことがよりよい人生を作っていく兆しとなります。

橘玲さんは、「好きなことで生きていく」のは、ある意味、残酷性をはらんでいるといいます。

好きなことで生きていくことは、いいことです。でも、すべての人がそうなれるかと言うと、決してそうではなく、また、運や境遇も影響しますし、あるいは、自分のものごとの捉え方・認識によっても、そうした感性が作動するベクトルが全く異なってきます。

「人生100年時代」、より幸福の持続性を担保するには、やはり「好きなことを、実施し続ける」ということになるでしょう。好きなこと、得意なことを見つけられるかがキーです。

「好きなことで生きていく」というと、「そんな甘いことが通用するはずがない」という批判がかならず出てきます。そのようにいうひとは、労働とは生活のための必要悪であり、「苦役」であると考えています。しかしそうなると、人生100年時代には、20歳から80歳までのすくなくとも60年間、労働という苦役をやりつづけなくてはならなくなります。私には、こんなことができる人間がいると考える方が荒唐無稽としか思えません。
人生100年時代には、原理的に、好きなこと、得意なことをマネタイズして生きていくほかありません。もちろん、すべてのひとがこのようなことができるわけではありません。だから私は、これを「残酷な世界」と呼んでいます。

よりよい人生を切り開いていくためには、やはりウェルビーイングという視点は欠かせません。自分を活かせているか、十分な資産を作れているか、そして、人と適切に繋がれているか?そういう論点に対して、自分で向き合っていく必要があります。誰も(会社も含む)あなたの代わりに考えてくれないからです。

富を私たちが最低限築いていくためには、2つの方策しかないのです。

1)金融資本を金融市場に投資する。
2)人的資本を労働市場に投資する。

年齢とともに、自らの働ける時間というのは、限られてきます。人的資本がどんどん確実に減少していくと、橘玲さんは言います。それをいかに社会資本・金融資本に変えて置けるかが、キーなのです。

ここで、改めて、サントリーHDの新浪社長の言葉がよぎります。

 「(定年が)45歳になると、30歳・35歳で勉強する。自分の人生を考えるようになる」「私たちの時【注・新浪氏は62歳】は他の企業に移るチャンスが少なかったが、今はチャンスが出てきている」

出典:「軽率だった「45歳定年制」発言…言い方を工夫すれば炎上は避けられた」45歳定年をうったえたあとのメディアインタビューに際して。

いかに生きるべきか――。

私たち一人ひとりが、そのごく当たり前の問いに向かい続ける日々が始まっています。

まとめ

  • 働き方は柔軟性を帯びる?――マッチングによりギグ化していく分野も相当登場します。
  • 会社組織はなぜあるのか?――取引コストを回避し、取引の冗長性を決着させるためです。
  • ギグ化する世界の中で?――自分を見出し、絶えず活動を続けられる体質に導きましょう。
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