- この時代、いかに生き方を見出していくべきでしょうか。
- 実は、経営戦略にヒントを求めるのがいいかもしれません。
- なぜなら、経営戦略とは、限られた資源の最適な配置を目的とし、人生においても限られた時間という資源をいかに配置していくか思想と実践によって形作られていくためです。
- 本書は、山口周さんによるこれからの時代を生き抜くための思考のガイドラインを説く1冊です。
- 本書を通じて、生き方を考えるヒントを得ることができます。

時間の配分をよく考える?
マネジメントの根幹的思考は、そもそも「思い通りにならないものを、とにかくなんとかする」ためのものです。現実の世界がこれまでの延長線上的な発展を遂げてきたのに対して、今後は、社会構造の変化や、技術の目覚ましい発展を背景に、多くのことがどんどん変わっていく時代になりました。
現実の社会は均衡のゼロ成長へと軟着陸しようとしているのに、制度や規範は高成長への離陸を目指す社会のまま、という「つなぎ目の社会」に私たちは生きているのです。
変化を予測することはできませんが、変化を取り入れながら、柔軟に生きていくことができるはずです。
これからの社会において、変化とどのように向き合うことができるかは、すべて「居場所の選択」によって決まると言っても過言ではありません。
なぜなら、ゼロ成長社会において、「成長・発展している場所」と「停滞・衰退している場所」との明暗がはっきりと別れ、こうした社会において、当然ながら、個人の居場所の設定は、個人の生き方・働き方、そして今後のキャリアのベクトルを全く変える力を持ちます。
つまり「選択に時間をかけることで得られるリターン」が「選択に時間をかけることで失うロス」よりも大きい時代を生きているのですから、自分の居場所、さらには人生について、よくよく考えて生きなければなりません。
自分というひとつのプロジェクト単位をどのように切り盛りして、少しでもよりよい内実を伴ったものにしていくことができるかが問われています。
私たちは自分に対して唯一の責任者であり、そして、リーダーであることを改めて意識して、自己のわがままに忠実になって発現したり、行動したりすることによって、結果的に社会や組織全体が良くなっていくという、利己・利他の関係性をインストールしてみることが良いかもしれません。
まず、生き方について、新しい概念をもって進むことが良いでしょう。
山口周さんは、つぎのベクトルを比較して掲げます。
- 残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残り、経済的・社会的成功を手に入れろという考え方。
- 経済的・社会的成功の虚像に囚われず、自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろという考え方。
この「どちらか」では、なく、実は、両方を包含したコンセプトをいかに見つけることができるか?がキーであると説きます。
「自分らしさ」も「社会的成功」もそうしたものをひっくるめて、自分らしい人生と経済的・社会的成功をいかに両立していくか、そのために、何をどのように行っていくのかを、よく検討してみることが、まずはじめに持つべきスタンスです。
この両立的思考は、利己・利他の問題にも触れてきます。
個人の実存的充実と企業の経済的繁栄をトレードオフのように捉える傾向がありますが、これは全くの誤りです。
事実、「もっとも生産性の高い労働者は、最も幸福な労働者である」ということを忘れてはならないのです。
資本が資本を生み出す?
私たちは、上記のようなスタンスを持ち、何がコントロールできることなのか、あるいは、できないものなのかを、よく把握することから始める必要があります。
コントロールできるものについて、山口周さんは、次のように言います。
私たちがコントロールできる戦略変数は「時間資本しかない」ということです。
戦略とは、資源の配分によって、状況を変えていく力を引き出すことですが、そうした資源について、結局のところ人は「時間」という最も貴重な資源をどのように配分するかで、その人の人生プロジェクトの内実が決まってくるということです。
また、人生プロジェクトについて、どのような状態が理想であるか、それについては、次のように設定されます。
本書で設定するプロジェクトの目的は、「お金持ちになること」でも、「会社で出世すること」でも、「社会的な栄誉を得ること」でもなく、「持続的なウェルビーイングの状態を築くこと」を目指す、ということです。
「健康的で、人との適切なつながりがあり、あるがままの自分を認め、そして、幸福感を感じ続けることができるか」ということが、私たちがこの人生において与えられた時間を存分に享受する方法でしょう。
そのためには、自分の貴重な資源である「時間資本」を良質な経験を得られる「スジの良い仕事」に投下して、自らにフィードバックしていくことが重要なのです。
自分にフィードバックされていく中で、自分自身の「人的資本」が育っていきます。
つまり、「あの人に仕事を頼みたい」や「あの人なら間違いない」といった評判や信用やネットワークなどの、社会資本を創り出す元手になるものです。
そして、人的資本が生み出す、社会資本が、最終的にには、金融資本へつながっていくという構図と主従関係を意識しておくことが重要ですね。
山口周さんは、ここでオーストラリアのホスピスで緩和ケアを長らく務めたブロニー・ウェアさんの発見を引用されます。
末期をむかえつつある患者が、しばしば口にする後悔は、「あんなに働かなくてよかったということ」「友人関係を続けていればよかった」ということの2点であるというのです。
「あんなに働かなくてよかったということ」というのは、時間資本を仕事に傾斜させすぎた。ということに、そして、
「友人関係を続けていればよかった」というのは、仕事をするうえで役に立つ社会資本に傾斜させすぎた。
というように見立てることができるでしょう。

自分を変え続けられるか?
人生のプロジェクトは、短いようで、長いものです。
「長期的にどのように合理的か」を常に検討しておくことも忘れてはなりません。
短期的な合理性は、誰しもが無意識のうちに追いかけると思いますが、忘れがちになるのは、「長期的な合理性」です。
優れた戦略とはしばしば「短期的に見ると不合理に見えるのに、長期的に見ると合理的」であり「部分で見ると不合理に見えるのに、全体で見ると合理的」なわけですが、これは人生の戦略についても同様に言えることなのです。
自分の居場所が、戦略上欠かせないものになるというのが、前提であると上述のとおりですが、それによって「時間資本」の配分が大きく影響されるからでしょう。
そして、居場所の選定にあたっては、(これが重要なのですが)「社会的価値創出」をビジョンとして掲げて、これを実践しているような組織や企業に所属するべきであるという、結論が得られると山口周さんは、語ります。
社会のためになることを実施している組織や企業というのは、中長期的に、ヒト・モノ・カネといった資源、なかでも、現代で相対的に希少になっている「モチベーション」を集めることに成功し、成長・繁栄し続ける可能性が高いことが示唆されるためです。
つまり、もう一度利己・利他の問題に戻りますが、次のような論点を見つけることができるでしょう。
個人が「社会的価値」を目指して動けば社会も動く
最初は、もしかすると利己的な行動によるものかもしれませんが、それが社会とつながって、双方がよりよく生きていく、永らえていく関係性を作り出していくことについて、軸を持つことが欠かせないのかもしれません。
時間という極めて重要な資源を、自分はどこに配分をしていくか・・・そのヒントとして、自分はそもそもどういうことがらに多くの時間を割いてきたか?を捉え直してみることも重要かもしれません。
本書の枠組みに沿って考えれば、「調達困難な資源と能力」とは「時間資本を大量に投下しないと獲得できない資源や能力」のことですから、ひとつの考え方として、着眼するべきなのは「長く続けてきたこと」だということになります。
過去から現在、そして未来へと繋がる可能性のある点と点を拾い上げて、それを丁寧に結んでいくような、そんな人生プロジェクトの運営をしてみるという時間を見通すような視点を持ってみましょう。
毎日を研修にする
1日1日という単位をよりよく活用していくために、学習効果得るようにしましょう。
学習とは、経験を通じて、「自分の信条・習慣・思考様式を変化させることで、同じインプットに対して、より良いアウトプットを出せるようになること」とみてみることです。
その上で以下の組織の在り方を比較しながら、自分のスタイルを見つめてみることが良いでしょう。
発達志向型組織 | 安定志向型組織 | |
---|---|---|
重視点 | 成果と学習の両方を重視する | 成果を重視する |
配置のロジック | 経験が成長につながると思える仕事をアサインする コンフォートゾーンの人を外す | 一番上手にやれる人にやらせる |
狙い | 学習の促進 建設的な混乱 | 安定的な業務執行 |
同僚の役割 | 同僚すべてが成長を支援するコーチ 部下も上司にコーチングを行う | 業務執行上の仲間 |
弱さの捉え方 | 能力開発の気づきを与えてくれる 皆で協力して支援のきっかけにする | 他人に知られてはならない |
山口周さんの著書は、いつも多くの刺激的な視点を提供してくれます。こちらの投稿「【資本主義をハックせよ!?】ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す|山口周」や「【これからの働き方の羅針盤!】ニュータイプの時代|山口周」もぜひご覧ください。おすすめです。


まとめ
- 時間の配分をよく考える?――最も貴重な資源をどのように配置投下するかをよく考えましょう。
- 資本が資本を生み出す?――居場所&時間投下→人的資本→社会資本→金融資本です。
- 自分を変え続けられるか?――変化が学習効果を生みます。
