- どうしたら、よりよい協働を引き出すことができるでしょうか。
- 実は、コミュニケーションの本質を考えることが、まず大切です。
- なぜなら、話すことよりも、まずは、聴くことが重要だからです。
- 本書は、人と人の関係性を考えるためのヒントを提供してくれる1冊です。
- 本書を通じて、改めて共に仕事をすることについて、検討する機会を得られます。

コミュニケーションの本質とは?
ビジネスや日常のやり取りを含めて、仕事の根幹を支えているのは、人と人の対話ではないでしょうか。AIが実装化される中でも、それはあくまで道具です。人が何をしたいのか、人は人とともに何を作っていきたいのか、そうした意志が前提となります。
そういう考え方を持ったときに、いかに人と情報を感情をやり取りできるのか?ということに、行き着くはずです。
コミュニケーションをよりよく検討していくことは、人が人とともに仕事をしていく中で、欠かせない視点です。
しかし、実際には、行き違いや、食い違いなどで、毎日悩んでしまうようなシーンも数多くみられることも事実です。
大切なのは、コミュニケーションの本質を見極めて、まず、自分が工夫をしてみる発信源になってみることです。そのことが、関係性の中で、波及していくことを想像してみると良いでしょう。
大切な視点。重要なのは、「話し方」ではなく「聴き方」であるということかもしれません。
上手に話しているように見えて、話す人の魅力のほうはどんどん失われていくように感じられるのです。
人はそもそも、聴いてもらいたい生き物です。一人ひとりが大切にされたいと考えていますし、日々何かものごとに触れる中で考えを、知らずしらずにめぐらせていきます。
しかし、世の中には、話し方を声高に説く本や講座が多いのですが、「聴き方」にフォーカスしたそれは相対的に少ないです。
ちなみに聴くについては、こちらの1冊「LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる|ケイト・マーフィ」もぜひご覧ください。

まず、聴くことを意識して、コミュニケーションについて深く考えていくきっかけをたくさん得てみるのはいかがでしょうか。
そのうえで、特にビジネスに関するコミュニケーションの重要性を考えてみたいと思います。
うーだ(OODA)で行こう?
ビジネスの基本は、「問題解決」にあります。誰かが、困っていたり、あるいは、モヤモヤしていたり、苦労していたり・・・そういうシーンを解決して、なくしていくのがビジネスの原点です。
だからそうしたシーンでやり取りされる内容は、常に「問題解決」のためにあるはずです。
「目的」があればコミュニケーションはうまくいく。
ビジネスに「問題解決」という目的があるように、そこで人の協働を支援するコミュニケーションという手段にも、明確な目的があってしかるべきです。
目的不在のやり取りをしていると、ビジネスの世界では、「信頼」を失うことになりかねません。問題解決のフォーカスを共有することが前提であるはずなのに、そのロジックに共に乗ることができなくては、ビジネスを共に行っていくパートナーとして互いに認め合うことは難しいでしょう。
そして、冒頭のAI時代に関する着眼点に戻るのですが、この「目的」設定は、人が行っていくべきものです。なぜなら、そこに意志が介在しなくては、「なんのために」を設定することは、難しいからです。
目的を共有すること、その上で信頼関係を構築していくためのコミュニケーションを目指していきましょう。
また、コミュニケーションを進めていくときに、ヒントになる考え方があります。
それが「OODAループ」です。
OODAループは、意思決定と行動のフレームワークとして、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐によって開発されました。Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つのステップが循環的に行われるプロセスです。当初は軍事戦略のために考案されましたが、現在では経営戦略やプロジェクトマネジメントなど、様々な分野で活用されています。
この考え方は、人と人との対話においても非常に有効です。
観察からはじめるため、「いま、なにが見えている?」という問いかけから入るのは、とても有効なアプローチです。
特に重要なのは、プロセスの出発点となる「観察」のステップです。
コミュニケーションにおいては、これは「聴く」という行為に対応します。効果的な「聴く」とは、単に相手の言葉を耳で捉えるだけでなく、声のトーン、表情、ボディランゲージなど、非言語的な要素も含めて総合的に観察することを意味します。
この観察のプロセスを通じて得られた情報は、次の「状況判断」のステップで解釈されます。
相手の感情状態、意図、価値観、文化的背景などを考慮しながら、対話の文脈を理解していきます。この理解に基づいて、どのように応答するかの「意思決定」が行われ、実際の「行動」(言葉による応答や非言語的な反応)につながります。
このサイクルは対話の中で継続的に、時にはマイクロ秒単位で行われています。例えば、相手の表情のわずかな変化を観察し、自分の言葉が強すぎたと判断し、より柔らかい表現に切り替えるといった具合です。
効果的なコミュニケーションの多くは、この最初の「観察」「聴く」のプロセスの質に大きく依存します。十分な観察なしに早急な判断や反応を行うことは、対話の質を低下させる主な要因となります。逆に、注意深い観察と傾聴は、相手への深い理解を促し、信頼関係の構築と質の高い対話を可能にします。
ドイツの哲学者であるニーチェは、「この世に事実は存在しない。存在するのは解釈だけである」という趣旨のことを述べています。
このように、OODAループの視点は、日常的なコミュニケーションの改善に具体的な示唆を与えてくれます。特に、「聴く」という行為の重要性を理論的に裏付け、より意識的なコミュニケーション設計を可能にしてくれるのです。

互いに深くつながるには?
目的志向ということに延長して、そもそものコミュニケーションをしている互いの理解、つまり「なぜ我々はここにいるのか?」という論点も重要でしょう。
相手の心に響く話をするには、話し手である自分が「なぜここにいるのか」という理由が重要なのです。
Whyという着眼点にこだわることによって、そもそもの互いのパーパスについてふれあい、そして強い共感・共鳴のなかで、仕事をすることができるようになるかもしれません。
それは、単なる「役に立つ」ということを超えて、理解し合えた状態を背景にした、ビジネスパートナーとしての関係性を構築することにつながっていきます。
相手のことを知ろうとすること、大切ですね。
でも、そうしていくためには、逆説的になるかもしれませんが、自分について深い理解をしている必要もありそうです。
あるいは、対話の中で、互いのまだ知らない側面を自覚的に確認し合いながら、関係性を作っていくということが、実はビジネスにおけるコミュニケーションのあり方なのかもしれないと思います。
澤円さんの著書はいつも、素晴らしい問いを投げかけてくださいます。「【頭がいいは、視点で決まる!?】メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける|澤円」や「【スキル×スキル=センス!?】「やめる」という選択|澤円」もおすすめです。ぜひ!


まとめ
- コミュニケーションの本質とは?――ビジネスにおいては、「目的」ありきです。
- うーだ(OODA)で行こう?――“観察”を前提に聴くことから始められます。
- 互いに深くつながるには?――過程の中で、互いの理念に触れ合うことによって可能です。
