- どうしたら、自分と周りとの間でバランスを見出すことができるでしょうか。
- 実は、環境理解の上で、賢く立ち振る舞うことが重要かも。
- なぜなら、視点なくして、自分のキャリアを自ら作ることは難しいからです。
- 本書は、雇用と労働の関係性が中長期的にどのように変遷してきたかを考える1冊です。
- 本書を通じて、自分の労働を俯瞰する数多くのヒントを得ることができるでしょう。

バランスの時代へ?
昨日の投稿「【この10年でこんなに変わった労働環境!?】会社はあなたを育ててくれない|古屋星斗」に続き、今回もこちらの1冊『会社はあなたを育ててくれない~「機会」と「時間」をつくり出す働きかたのデザイン』のレビューを続けさせていただきたいと思います。
前回の投稿で見てきたのは、以下のような内容でした。
近年、雇用と労働の関係性は大きく変化してきました。労働法改正により、過酷な労働環境は改善されつつありますが、それは新たな課題も生み出しています。
以前は「会社のせい」にできていた事柄が、今では「自分の意志」の結果となり、個人のキャリア形成における責任が重くのしかかってきているのです。
著者の古屋星斗さんは、この10年間での主要な変化として、「選択の回数が増えたこと」と「ゆるい職場が登場したこと」を指摘しています。特に注目すべきは、終身雇用を前提とした「就社」という概念から、「ジョブホッピング」を視野に入れたキャリア形成へと変化している点です。
このような環境下で、若手社会人たちは「横並びの成長欲求」と「個性の発揮」という相反する願望の間で揺れ動いています。著者は、この状況に対する解決策として「新しい安定志向」を提唱しています。これは、自身の経験・知見・スキルを磨きながら、変化の激しい職業社会を乗り切っていく姿勢を指します。
現代の労働者には、「ありのまま」でありながら「なにものか」になることが求められており、この両立のためには深い自己理解が不可欠となっています。
本書は、こうした現代の労働環境における複雑な課題に対して、バランスの取れた視点を提供しています。
「ありのまま」と「なにものか」のグラデーション
こうした2つの価値観は、ともに「ライフとキャリアを両立しよう」「個を尊重しよう」「自律的であれ」といった現代社会からの要請でもあります。
今回の投稿では、さらに深堀り、「ありのまま」でありながら「なにものか」になることの方法を検討してみたいと思います。
「なにものか」にどうしたらなれる?
具体的に「なにものか」になるポイントは、以下の視点を著者・古屋星斗さんは、あげてくれています。
それが、次の3つの視点です。
1)職場の心理的安全性
2)職場のキャリア安全性
3)仕事の質的な負荷
人間関係のリスクを過度に感じることなく、自身が思ったとおりの言動を取ることができる環境を作る、あるいは選ぶことがとても大切です。そのことによって、自分が持つ能力やスキルセットを十分に発揮し、パフォーマンスを最大化して新しい機会を生み出すことができるようになるからです。
そして、キャリア安全性についてもチェックしておく必要があります。これは、「その職場で働き続けた場合に、自分がキャリアの選択権を保持し続けられるという感覚」のことです。こうした感覚を持てる職場では、従業員としての会社へのエンゲージメントが向上しやすくなります。
ブラック企業に回帰するのではなく、ホワイトの中でも自分を高められるだけの質的負荷を率先して選択できるような環境も重要でしょう。
「仕事の難易度が高く感じる」「仕事で新たに覚えることが多いと感じる」といった仕事の質的負荷は、成長実感を高める効果があることがわかっており、必要な要素の一つです。
量的な負荷ではなく、関係性の負荷については、過度に高くなると成長実感に直接的に影響が乏しい因子であるため、ケアが必要です。むしろ、これらと逆相関している可能性が高いので、要注意ですね。

「ありのまま」でいるためには?
同じように、「ありのまま」でいるための職場チェックポイントも3つあります。
1)フィットした労働環境
2)ライフキャリアへの支援
3)相互理解
労働時間や就業場所といった環境が自分にあっているかどうか、ということについてよく検討してみることが大切です。コロナ禍を経て、多くの企業で就労環境の柔軟化が進みました。多くの選択肢を企業が提供できる様になっている様をよく観察して、自分にフィットする状況や場合をよく見極めて見るようにしましょう。
また、キャリア選択の回数が増加する中で、育児休暇や介護休暇に代表されるようなライフイベントに直面する可能性もあります。そうした中で、自分のキャリアとのバランスを上手に取ることができる、環境あるいは、制度が十分に備わっているかどうかも、環境のフィット感をチェックする視点にしておくとよいでしょう。
自分を大切にするためには、共有と理解が欠かせません。相手は、同僚、上司かもしれないし、会社という組織かもしれません。
私は「自己開示のキャッチボール」と呼んでいますが、このキャッチボールがなされていることが、必要な要素の一つです。
相互に本当に理解し、考え合える関係性を必要なだけ構築してみましょう。
自己開示の方策については、対話という手段も有効でしょう。ぜひこちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もご覧ください。

今自分が「ありのまま」もしくは「なにものか」どちらの軸足を強化したいと思っているのか、その本心に自分自身で積極的に触れてみることも、行動をし続けてみるための習慣になるでしょう。
まとめ
- バランスの時代へ?――キャリアの健全性は、なにものかとありのままでもたらされます。
- 「なにものか」にどうしたらなれる?――3つの視点でいまの環境チェックをしてみましょう。
- 「ありのまま」でいるためには?――同じように3つのポイントで状況をチェックしてみましょう。
