- どうしたら、仕事を任せていくことができるでしょうか。
- 実は、効果的な「丸投げ」を実践できるかどうかにかかっています。
- なぜなら、丸投げは、うまくすると双方にメリットがあることなのです。
- 本書は、いかに利他的な依頼をするか考える1冊です。
- 本書を通じて、任せることにポジティブになれるでしょう。

任せるとは?
相手のことを考えない、あるいは全体のことを考えない人は、ほとんどいないでしょう。
任せるということを考える時、相手のこと、全体のことというのは、つきまといます。
これを任せたほうが、相手の成長になるかもしれない。でも、失敗でもしてしまったら、全体のためにならないかもしれない。どうも踏ん切りがつかないから、今回も全部を引き受けちゃおうか・・・。
などなど逡巡をしてしまうこともあるでしょう。
そうした思いと行動の悪循環を断ち切るためには、次のような考え方を身につけることが大切です。
ただ任すだけでなく、相手を成長させて感謝される任せ方ができるようになります。
そのためには、効果的な丸投げを実践してみることが大切です。効果的な丸投げとは、次の5つの要素をよく考えて、相手と自分との関係性を両者ポジティブになるように調整したものです。
- 意欲の創出
- 目的の明確化
- 欲求充足
- 選択肢の提示
- 負担の配慮
こうした5つのポイントに対して十分に相手の立場で、考えたかどうかを検討したうえで、丸投げをしてみましょう。
そもそも人間関係とは、Win-Winであるべきなのかもしれません。両者が一緒に何かをすることは、そこに両者の発展がなくては、継続的な取り組みになりません。
利他的に依頼をすること、それが任せるということです。
人ありきでものごとを考える?
上記の5つのポイントを検討していくうえで、その判断基準についても念頭に置いておくとよいでしょう。
- 意欲の創出・・相手がやりたいと思える文脈になっているか。
- 目的の明確化・・なぜ、必要なのか理由を伝えているか。
- 欲求充足・・利己的都合ではなく相手にメリットがあるか。
- 選択肢の提示・・断る余白があるか。スケジュールに相談の余地があるか。
- 負担の配慮・・負担を減らす工夫や相談の余地があるか。
任せるうえで、大切なもう一つの大きな視点として、「能力主義によらない」ということをあげることができるでしょう。
これについて、著者・山本渉さんは、ドラッカーの言葉を引用します。
人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである、弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。
短所を改善することを目指すのではなく(もちろんよっぽどの致命傷や低レベルな要素はリスクになるため、当然排除するべきですが・・・)、フォーカスするべきは、強みであると言います。
そして、事実として、一人ひとり強みは異なります。
だからこそ、一人ひとりの強みを自他ともに理解しながら、最適な仕事へのアサインを行っていくことが大切になります。
プロジェクトアサインやスタッフィングの世界でよく使われる言葉として、次のようなものがあります。
矢の周りに的を描け。
これは、仕事ありきではなく、人ありきで、人材の配置を決めていく思想を伝えるものです。
ちなみに、能力主義に陥らない視点については、こちらの1冊「【人は、なぜ共に働くのか?】働くということ 「能力主義」を超えて|勅使川原真衣」もぜひご覧ください。受験勉強を一生懸命に取り組んできた人なら、きっと目からウロコです。

いかに私たちが特定の先入観や常識の中で、日頃、同じように判断をしたり行動したりしていることを痛感します。

変化のために?
不得意なことがあるメンバーをフォローしたり、一人ひとりの強みを特性として活かしていくためには、チームの力を養うことが重要です。
一人ではなく、掛け算のチームで互いの弱いところを補い合いながら、強みを引き出して、表に出させてあげるということを推進していきましょう。
その時に大切なのが、自分ひとりの論点ではなく、チームの視点・視野も持ち合わせるということです。もっというとチーム全体の人格としてものごとを考えるクセです。
例えば、なにか問題が発生したとします。それを個人の問題として理解し、特定の個人を攻撃してしまうことがあるかもしれません。でもそれでは、そのメンバーを排除する方向へ力をかけることになり、ものごとの本質的な解決やチームの力をUPする動き方にはなりづらいものがあります。
そういう時に大切にしたいのは、チームの全体を伴う人格として、チームとしての最適な取り組みができなかったかもしれない、次回からは全体として**しよう。というように、全体意識を持って、状況を把握して、次回に向けたチームとしての学びを得ることも可能になるでしょう。
チームについては、こちらの#考えるノート「真のチームが持つ力 ―“Power of We” とオーガニックリーダーシップのしなやかな強さ―」もぜひ、合わせてご覧ください。

本当のチームとは何だろう?という問いを起点に、考えてみました。“Power of We” というのは、まさにチーム全体人格としてのジャッジ意識です。
つまるところ、任せるということは、一人ひとりへの理解の解像度の高さによるところが大きいものがあります。上述の5つのポイント(以下再掲)を充足させるためには、仕事の理解だけではなく、メンバーの理解が欠かせません。
- 意欲の創出・・相手がやりたいと思える文脈になっているか。
- 目的の明確化・・なぜ、必要なのか理由を伝えているか。
- 欲求充足・・利己的都合ではなく相手にメリットがあるか。
- 選択肢の提示・・断る余白があるか。スケジュールに相談の余地があるか。
- 負担の配慮・・負担を減らす工夫や相談の余地があるか。
1オン1を日頃から実践して、まずは相手を理解するということを意識して、しっかり何を言おうとしているのかを理解するための機会を作ることです。自分が喋るのではなく、サーバントリーダーシップのマインドセットを働かせて、相手の意見や発言に最大限、耳を傾けてみましょう。
任せた先に、時には、失敗が起きるときもあるでしょう。失敗を許容して任せきるということは、勇気のいることです。しかし、それを乗り越えなくては、相手に一定の権限委譲をすることはできず、任せるの「効果」を発揮しづらくなります。
任せたのであれば、結論が見えるまでしっかり任せきること。仮に失敗してしまったら、リカバリすればよいのです。仕事の失敗というのは9割以上、取り戻せる可能性があるものだと思います。
そして、しっかりと対話をして、失敗を学びに変えていくことが欠かせません。
育成の西遊ゴールは、自分が不要になること。
自分自身が、日常の一定の業務から解放されて、新しい取り組みを追いかけられるようにすることが、チーム全体をさらにより良いものにしていくために不可欠です。
なぜなら、いまは非常に変化の早い時代。それらをキャッチアップしながら、自分たちに取り込んでいくべきなのか、どうかを判断することもチームの運営や、企業で言えば、経営には不可欠なファクターです。
そのためには、一人ひとりのメンバーが自分の特性を理解して、その特性においてリーダーシップを発揮して、まだ知らない情報を獲得していく動き方をしていくことが、本来的には理想になります。
もちろんマネジメントは、率先して、そうした活動に従事しているという、背中を見せる必要があるでしょう。
最後に、『風姿花伝』に書かれている一説が、この節でお伝えしたいことのすべてを言い当てているのでご紹介します。室町時代の能楽師である世阿弥が書いた、金言の宝庫といえるといえる書物です。
〈住する所なきを、まず花と知るべし〉 (一つの場所に留まることなく、変化をし続けることがもっとも輝くことになる)
変化をポジティブに受け入れていくためにも、任せてみる、という関係性の作り方が起点となるのかもしれません。
まとめ
- 任せるとは?――5つの要素を点検して、相手との関係性を作り出すことです。
- 人ありきでものごとを考える?――能力主義に陥らないものごとの見方を大切にしましょう。
- 変化のために?――任せるという行為が変化への兆しをチームにもたらします。
