【自分の心を絶えず見つめてみよう!】認知行動療法の哲学|ドナルド・ロバートソン

認知行動療法の哲学
  • どうしたら、よりよい人生の時間を積み重ねていくことも可能でしょうか。
  • 実は、いま・ここに価値を見出すことです。
  • なぜなら、私たちがコントロールできる唯一の時間だからです。
  • 本書は、哲学を考えてみる1冊です。
  • 本書を通じて、いかに生きるのか?視点を再検討することができます。
ドナルド・ロバートソン,東畑開人,藤井翔太
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死をまず、見つめよう?

昨日の投稿「【いま・ここを賢明に生きよ!?】認知行動療法の哲学|ドナルド・ロバートソン」に続き、本日もこちらの1冊『認知行動療法の哲学――ストア派と哲学的治療の系譜』のレビューを続けてみたいと思います。

昨日の投稿では、ストア派哲学の核心的な教えと現代における意義についてみてきました。とりわけセネカとエピクテトスの思想に焦点を当て、「善く生きる」ための実践的な知恵を探求していきました。

私なりに3つのポイントを整理してみたのですが、まず第1に「自然とともにあるもの」として、セネカの「自然に即して生きる」という教えを取り上げました。これは単に環境との調和を説くだけでなく、宇宙の摂理や秩序を理解し、それに従って生きることの大切さを私たちに教えてくれています。

第2のポイントでは「自己への配慮」として、エピクテトスの教えを見ていきました。哲学を身体的な訓練になぞらえて考えてみたのですが、アスリートの訓練や医療の比喩を通じて、哲学的実践には日々の地道な努力が欠かせないことが見えてきたように思います。

第3に「いま・ここ」の概念から、ストア派の「コントロールの二分法」について考察しました。自分でコントロールできることとできないことをはっきりと区別することで、私たちは無駄な苦悩から解放される可能性があるのです。

興味深いことに、これらの2000年以上前の教えは、現代社会を生きる私たちにとっても、極めて示唆に富む生き方の指針となっています。

SNSがあふれ、競争が激しさを増す現代において、私たちが抱える不安や苦悩に対して、ストア派の教えは実践的な解決の道筋を示してくれているように感じます。

ストア派は、死を意識することの重要性を説きました。

私たちは、日頃、死を遠ざけて生きています。まるで、誰にも死が訪れないかのような生き方をしています。

しかし、わたしたちには、必ず死が訪れます。

死をもって、最終的に個の特性がはじめて見出されると言ってもよいでしょう。

「食らえ、飲め、明日は死ぬのだから」という表現もまた、『イザヤ書』22章13節などの聖書の一節に由来している。

死があるからこそ、私たちは人生を有限のものとして認識することができます。そして、有限だからこそ、私たちは一生懸命に、いま・ここを生きていくことができるようになるのです。

私たちは、死を忘れてはいけません。そして、それを恐れてもいけません。だれにでも訪れることでもあり、そして死してからは、死を意識することはできないので、心配ありません。

むしろその死を不安に思って取り乱してしまうことではなく、いま・ここをいかに充実させるかを懸命に考えて、行動を積み重ねて生きていきましょう。

自分の心を認識しよう?

哲学の本質とはなんでしょうか?

それは、「自分の心」を正しく用いることであり、そのためには、絶えず、自分の心を見つめていくことが大切であるということを説きます。

重要なのは、自分を客観視する視点です。

ストア派もこの点の重要性を説きました。裸の事実を個人的・情動的な反応と混同するのではなく、「絶対的に非人称的な視点」つまり、「上からの眺め」からみたものとしてものごとをとらえることを推奨します。

それはまた、可能な限り、真の文脈、宇宙全体の文脈に物事を配置するよう要求する。

これは、自分と自然とのバランスを取るという視点を養うことになります。

絶妙にバランスが取れたてんびんに思いものを載せると、片方がガクンと下がってしまうように、自身の行動においても紛れもない矛盾が発生すると、人間の心も不安定になってしまいます。

だからこそ、神的な超越した視点で、自分や全体との関係性を吟味し、検討してみることが大切なのです。

それはパーソナルな視点ではなく、超越的な大きなものごとからの視点も含まれてくるのです。

自分の視野がどこまでを捉えているのか、その結果、どういう心の動きがあるのかを絶えず認識して、調整していく過程を哲学は推奨します。

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心には鍛錬が必要!?

また、ストア派は実践を重んじます。いくら、哲学理論をして、一般に見せびらかしたとしてもそれは意味がないことだと言うのです。

羊は飼い主のところにやって来て、干し草をどれだけ食べたかをみせたりはしない。むしろ、飼料を身体の内部で消化して、外部に羊毛や乳をもたらすのだ。

哲学的な考え方は知識をよく得たうえで、実践を通して、自分の中で体内化し、解釈をすることが大切なのです。

ストア派の格律は、単なる言語的定式ではなく、記憶され、内在化され、行動の変容を導くように意図されているのである。

大切なことは、実践と変容です。

何らかの行動をすることよって、視点や視野を変えることができます。あるいは、その視点や視野によるものごとの捉え方をも変えることもできるようになるでしょう。

人生の目的を、自然と調和して生きることとして定めます。自然と調和することによって知恵と徳は帰着するのです。その事によって、私たちは充実感を得ることができます。

ストア派の徳とは、次のようなものです。

  1. 知恵(実践的英知)
    • 物事の本質を見極める力
    • 何が自分の制御下にあり、何がそうでないかを理解する能力
    • 状況を正しく判断し、適切に行動するための分別
  1. 正義(公正さ)
    • 他者との関係における公平性
    • 社会的な責任を果たすこと
    • 人類全体への貢献意識
  1. 勇気
    • 逆境に立ち向かう精神的強さ
    • 自分の信念に従って行動する力
    • 困難な状況でも理性的判断を保つ能力
  1. 節制(自制)
    • 感情や欲望をコントロールする力
    • バランスの取れた生活を送る能力
    • 過度を避け、適度を保つ判断力

理性をもった存在として賢明に行為すると、自分の内的な本性に調和して生きることが可能です。

そのためには、継続的にマインドフルネスを試みてみたり、視点視野を確認したり、心を見つめてみることが大切なのです。

これらの行為は、意識しないと難しく、また、日頃の鍛錬が必要なことなのです。

まとめ

  • 死をまず、見つめよう?――死を意識することは、人生を充実化させるために大切なことです。
  • 自分の心を認識しよう?――自分の心を見つめることからはじめてみよう。
  • 心には鍛錬が必要!?――「徳」を積み重ねていくことが、重要なことです。
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