- デザインという領域をよりよく扱うためには、何が大切でしょうか。
- 実は、言語化がとても大切です。
- なぜなら、デザインは、言葉にしづらい領域のことがらも含むからです。
- 本書は、デザインを考え、伝え、他者とともに協働を引き出すための1冊です。
- 本書を通じて、どうしたら言葉になりにくい領域を言葉にするのか、ガイドを得ることができます。
相手が常にあるということ?
キーは、相手があるということです。
デザインは、他者に何かを感じてもらい、そこから行動や考えを生み出すためのものであると定義してみることがポイントです。
プロダクトデザインでも、広告のデザインでも、なんでもよいですが、そこには、必ず受け手が存在します。デザインは、もしかすると、受け手との接点を持って、完成するものであるとも言っても良いかもしれない。
その論点からデザインを見つめていく時に、必ず相手があることに明確に気づきます。
さらに、デザインを起こしていく段階にも、相手があります。デザインは誰かとともに協働していくためです。
それは、もしかするとデザイナーのチームかもしれないし、クライアントとの関係性かもしれないし、プロダクションの組織かもしれなし、さまざまな関係性の中でデザインは一つの形として成り立っていきます。
あるいは、もしかすると、デザイン思考というアプローチを取る場合には、ターゲット当事者のペインが起点となることもあるため、その方とのやり取りから、デザインが生み出されていくと言っても良いのです。
ちなみに、デザイン思考とは、人間中心のイノベーション手法で、複雑な問題解決のためのアプローチです。
主に、以下の5つのステップで構成されています。
- 共感:ユーザーの真のニーズを深く理解する
- 問題定義 :収集した情報から本質的な課題を特定する
- アイデア創出 :多様な解決策を自由に発想する
- プロトタイプ作成:アイデアを素早く形にする
- 検証: ユーザーからフィードバックを得て改善する
このプロセスは直線的ではなく、必要に応じて各ステップを行き来しながら、より良いソリューションを見つけ出します。ビジネス、教育、社会課題など、さまざまな分野で活用されており、革新的な製品やサービスの開発に効果を発揮しています。
より深くデザイン思考について触れたい方は、ぜひこちらの1冊「【アイデアを生み出す思考自体を再発明せよ?】「デザイン思考」を超えるデザイン思考|濱口秀司」もぜひご覧ください。
デザインの言語化に話を戻しましょう。
つまり、デザインとは、人との関係性の中で生まれ、そして育まれ、形として固定され、そして、また人の中で特定の力を発揮して、関係性やその人自身の変化を生み出し続けていくものであると、仮定することができるのです。
デザイナーが言葉の力を使って最初にやるべきことは「相手の思いを読み解く」こと
そうした関係性の中にあるデザインを考える時、言葉にできるかどうかということは、とても重要なキーポイントになります。
アートとデザインは融合する?
アートとデザインという観点で、さらにデザインの解像度をあげてみましょう。
アートは受け手側に解釈を委ねるもの
一方で、デザインは、説明できなければならないものです。
しかし、これらのアートとデザインの融合は、起こりうるのです。
例えば、アップルの製品は、アートに限りなく近い領域でデザインされている代表例であるとも言えるかもしれません。ボタンを極力配置しないアイフォンや、ホイール型のユーザーインターフェースが当時革新的だったアイポッドなど、ユーザーの感性を刺激し、直感的な操作を可能にします。
本当に素晴らしいデザインというのは、アートの領域にまで接点を持つものであるということなのです。
この論点について、言語化を照らしてみると次のようなことが言えるのではないでしょうか。
- アートに近いデザインには、言語化は必要なく、「計算された感じ」を見せないことが重要である。
- デザインとアートの最大の違いは目的にあり、アートは自己表現に近いが、デザインは課題解決である。
- 課題解決が設定されている以上、クライアントに対する説明責任が生まれるため、言語化が必要である。
- 一方で、アートの要素を十分に残していくためには、判断主体の思想が欠かせないということになる。
アートとデザインは、表裏一体であるようで、実は目的が異なります。
しかし、デザインに(例えば、アップル製品のように)かぎりなく、受け手の自由な発想を与える領域を担保することで、もしかしたら、より豊かなコミュニケーションを生み出す可能性を見出すことだってできるのかもしれません。
言語化で始まり、言語化で続く?
デザインを検討していく時に大切なのは、言語化なのですが、きれいに言葉にする必要はありません。
現場の泥臭い情報にこそ、デザインのヒントが隠されていると言ってもいいでしょう。
苦労した話、なぜそれをそもそも取り扱おうと思ったのかという想い、そして現在の顧客層やその方々からのフィードバックなどなど、すでにある確かな情報をことこまかに言語化してみることから、よりよいデザインは生み出されてきます。
現場のリアルな一次情報はデザインの源泉です。
そこからデザイン言語に落とし込むのが、デザイナーの仕事になります。
大切なのは、現場にこそ、ヒントがあるということ。そして、それらは、まだ言語化されていない状態として、ユーザーの中やあるいは状況の中に隠されているということです。
これに意識的になりながら、極力チームを組んで、その状況を解釈することから始めると良いでしょう。
人が一人で気づける領域には限界があります。だから、いろいろな立場の人がその場に立ち会いながら、それぞれの想いや考え、気づいたことを語り合うことで、掛け算の力をもって、状況の認識が豊かになります。
そういう一人ひとりの能力を信じると言うよりも、むしろチームで動いていくことも含めて、デザインという一つの行為の可能性を最大限に高めていく発想が必要なのであると想います。
大切なのは、その場でかわされるのも「言葉」であるということでしょうか。
対話の可能性については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧ください。デザインと非常に近接する領域にある概念であることに気づきました。
まとめ
- 相手が常にあるということ?――だから、共通言語が大切なのです。
- アートとデザインは融合する?――受け手に委ねる領域を上手に活用できうるかもしれません。
- 言語化で始まり、言語化で続く?――言葉というツールで、デザインを生み出し、より良くしましょう。