【思考をメタ認知せよ?】演繹革命 日本企業を根底から変えるシリコンバレー式思考法|校條浩

演繹革命 日本企業を根底から変えるシリコンバレー式思考法
  • どうしたら自らの思考を俯瞰して捉えることができるでしょうか。
  • 実は、帰納と演繹という視点が大切かもしれません。
  • なぜなら、組織というのは大勢が、帰納法的なものごとに対するジャッジの仕方をするからです。
  • 本書は、演繹というアプローチの大切さ、難しさ、内容を押さえる1冊です。
  • 本書を通じて、自分の感性を大切にしながら、進むことの喜びを見つめてみましょう。

帰納と演繹の違いは?

帰納と演繹は、ものごとにを論理的に理解して、合理的な結論を出すための思考法です。

帰納法とは、経験・実験など個々の具体的な事例から、一般的な原理や法則を導き出す思考法のことです。

事例1 ライオンがシマウマを襲って食べた
事例2 ライオンがヒツジを襲って食べた
事例3 ライオンがうさぎを襲って食べた
結論  ライオンは肉食動物である

このような感じです。

一方で、演繹法の代表的な考え方に「3段論法」があるでしょう。これは、大前提・小前提・結論という3段落でものごとを解明するものです。

大前提 生き物は必ず死ぬ
小前提 ライオンは生き物である
結論  ライオンは必ず死ぬ

演繹法では大前提にゆるぎない一般論を用いることが重要になります。

帰納法も、演繹法も、いずれも思考のために使われますが、推論の流れは全く逆方向であることを理解することができます。

帰納法は、個別事例から一般原則を推察するのに対して、演繹法では、一般原則や理論から個別の結論を導き出すというアプローチを取ります。

帰納法が抽象度をあげていく流れなのに対して、演繹法は抽象度を下げていく試みです。

具体と抽象についてはぜひこちら「【「わかりやすい!!」は、本当に価値なのか!?】具体と抽象|細谷功」もあわせてご覧ください。

著者・校條浩さんは、これらの思考法と日本の経済について考え方を展開されます。

戦後の経済成長期に日本人に根付いた考え方が帰納法的であり、これが、現在の変化の時代に対応することを困難にしていると説きます。

キーはコンセプトにあり?

事業プランを考える時に帰納と演繹では全く異なるアプローチになります。

帰納思考では、過去の成功例を前例として調べ上げ、その集大成として事業案をまとめていきます。一方で、演繹思考では、「コンセプト」を前提として考えることからはじめます。

「このコンセプトでこういうやり方をすれば、このような付加価値がうまれるはずだ」という仮説を立てるのです。

とはいえ、演繹思考は単なる思いつきではありません。

演繹思考が参照するのは、ものごとの普遍的な法則性であると言えるでしょう。それを「コンセプト」として言語化する、あるいは直感的に確認することからはじめるのです。

ですが、このやり方が苦手な日本人が多いと、校條浩さんは指摘します。

それは、帰納法で、過去の事例を参照してそれに基づき判断したり、考え方の確かさを確認することに、あまりに慣れてしまっているからであると言います。改善という言葉がありますが、まさに、機能的なアプローチとも言えます。具体的に見える課題を元に、その解決に向かうためです。

自分を俯瞰してみて、どのようなスタンスで業務にあたっているかを考えてみましょう。

1 決めたことはキッチリやり切る
2 今までの事例をよく研究しており、関連知識が豊富である
3 関連部署とのコミュニケーションがしっかりしている
4 上司、同僚、部下への感謝の姿勢を忘れない
5 業務の目標を明確にし、優先順位を設定し、実行できる

6 時間の使い方がうまい
7 デッドライン(締め切り)を自分で設定する
8 結果がすべてと心得る
9 集中力が高い
10 専門的なスキルを身につけている
11 失敗に向き合い、そこから学び改善する
12 他人を責めるよりまず自分が反省する
13 自身の問題意識が第一のモチベーション

6~9までの「時間の使い方」「締切設定」「結果がすべて」「集中力」は、どんな仕事でも大切なことなので、いずれの思考に紐付く以前の問題です。

1~5については、「今までの事例を研究」したうえで、「きっちりやる」という項目であるので、帰納思考的なアプローチということになります。

そして、10~13のように個々人の専門スキル、自分を省みる心、モチベーションなどは、より演繹的な考え方に近いです。

演繹的な発想については、こちらの1冊「【創造性をアップデートせよ!?】リバース思考|ロン・フリードマン,南沢篤花」も自分を振り返る参考になりそうです。ぜひご覧ください。

キーは、どちらが重要!ということではなく、両方の思考法があることを知り、自分がどちらのモードでいまものごとと向き合っているかを俯瞰して、相手方がどのような思考モードの中にあるかを知りつつ、コミュニケーションを図っていくということでしょう。

トップマネジメントの責任と覚悟?

上述の通り、日本の組織は帰納的にものごとを理解していくことが非常に多いです。トップマネジメントの判断も、どうしても外圧(外からの説明責任の要求)に応えていくため、帰納法で説明するロジックを保つ必要があります。

とはいえ、帰納法的だけだと、変化する時代に対応することがしきれなくなります。前例がなければ動きが取りづらくなるので当然です。むしろ「コンセプト」を見出しながら、未来を作っていく自主的な発想が必要なのです。

大切なのは、組織の文脈を理解して、それに自分の考えやスタイルをいかに乗せることができるか?というすり合わせでしょう。

この点に不自由さを感じる人も少なくないと思いますが、でも人は一人ではなにもできないと言っても過言ではないでしょうか。人と協働して、共に手を取ってなにか新しいことをすることによって、社会を変える力になったり、自分自身の学びにフィードバックするサイクルを回すことができるようになるのです。

だから、帰納思考と演繹思考の両方を理解しながら、帰納思考の組織に対して正しく振る舞いながら、演繹思考のプロジェクトを進めてしまう「両利き」モードがとても大切なのです。

例えば、報告書の書き方も帰納思考に合わせるとよく収まります。「前例をいろいろ検討した結果を踏まえて取り組みを実行したら、ほぼ予想通りになったが、一部予想外の結果があった」というような書き方です。

一方、自分のビジョンやアイデアから仮説・検証を回した結果からの知見と次の仮説を記した本来の演繹思考の活動の報告書は、自分自身のために別に作成しておくといいでしょう。

とは言え、実は組織の中に唯一(と言っていいとおもいますが)演繹的なアプローチでものごとを考えている人(考えざるを得ない)ステークホルダーが存在します。

それが、経営者です。

経営者の方は、過去の延長線上だけでは、ビジネスがシュリンクすることをよくご理解されていると思います。両利きの経営という言葉があるように、絶えず新しい着眼点を持って、自己変革し続けていくことが、企業存続の王道であり唯一の道です。

こうした視点を持つ方々と、いかに共に道を作っていけるか、とても大切です。

演繹的な思考を優勢に考えていく場合、もしかしたら相手方の誰に対してどのようなコミュニケーションを取るべきなのかをよく考えて行動していくことが理想である、と言えそうです。

また、経営者は、演繹思考を社内に取り込み、まさに両利きの経営を行っていくためのジャッジをする役割にあるということにも注意が必要でしょう。

演繹思考の活動を進める正攻法は、やはり経営トップや幹部が演繹思考による取り組みが必要であることを理解し、演繹思考人材が活躍できる領域をつくることです。

両利きの経営についてはこちらの1冊「【組織カルチャーが、両利きをもたらす!?】両利きの組織をつくる|加藤雅則,チャールズ・A・オライリー,ウリケ・シェーデ」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 帰納と演繹の違いは?――アプローチの方向で、真逆です。
  • キーはコンセプトにあり?――大きな仕組みや普遍性から考えをふくらませるのが演繹アプローチです。
  • トップマネジメントの責任と覚悟?――演繹的思考を歓迎するべき立場です。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!