【対話は、物語によって、作られる?】ダイアローグ 対話する組織|中原淳,長岡健

ダイアローグ 対話する組織
  • よりよい組織運営のためには、何が必要でしょうか。
  • 実は、組織内のコミュニケーションが重要かもしれません。
  • なぜなら、課題と認識されることの根源には、組織内コミュニケーションがあるためです。
  • 本書は、組織内対話という発想で、組織運営をより良くするための考え方を説く1冊です。
  • 本書を通じて、対話とはなにかを知り、それを活かす組織とはどういうものか、ヒントを得ます。
中原淳,長岡健
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伝わるとは?

会話と、対話は全く異なるものです。組織内の会話を増やしても、組織内コミュニケーションをより良くすることは難しいものがあります。

いくら飲み会を増やしたり、レクを増やしたりしても、互いの本質的な部分にふれることができなければ、それは、コミュニケーションの円滑化に寄与しているとは言い難いものになります。

対話とは、単に人間関係を良好にしてモチベーションを高めるといった、情緒・感情面での効果のみを得ようとするものではありません。

むしろ、従来のビジネスで用いられてきた「議論」「折衝」「交渉」といったコミュニケーションの手段・方法、または「会議」というコミュニケーションの場と並ぶものとして、「対話」を捉えていきたいと思います。

議論や会議では得ることができなかった効果を得る方法、手段、場として、対話を活用することが、本書の狙いです。

コミュニケーションは、伝わるということがある一つのゴールに設定されます。

単に情報を伝える場合には、そんなに難しいことはありません。「朝8時の電車に乗るから、7:45に改札に待ち合わせしよう」とか「相手方は、3人の予定だけど、予備も含めて4部印刷物を用意しておこう」とか、こういうことは、いかに性格に情報を伝えるかが論点になり、相手にそれが伝わっているかどうかも明確になります。

一方で、価値観や信念のようなものではどうでしょうか。

聞き手がそれを言葉として復唱できたからといって、本当に「伝わった」としてよいかは、微妙なところがあります。

実際に、聞き手の行動や考え方に反映された時に、初めて価値観や信念が本当に「伝わった」ということができるのです。

人の変化を目指す?

こういう、聞き手の変化を生み出すために、対話を活用していく必要があります。

「情報の移動」から「人の変化」へ

むしろ、価値観や信念、そのものを伝達することは難しいのかもしれません。それらは、一人ひとりの中で育っていくものであるため、その方向性を指し示し、栄養となるような、なんらかのヒントを交換することのみが可能であると捉えるほうが自然なのかもしれません。

そうした、方向性や栄養となるものとしての情報を、「ストーリー」といいます。

ストーリーモードとは、「ある出来事と出来事のあいだに、どのような意味のつながりがあるか」を注視する思考の形式です。

ものごとが正しい、間違っている、ということが問われるのではなく、「現実味に富んでいるか」あるいは、「それは、腹に落ちるか」という論点が重視されます。

人は、ストーリーではじめてものごとの原因や骨格、本質に触れ始めることができます。

認知心理学者エドワード・ソーンダイクは、人間が「物事を記述するための抽象的ルール体系」を頭の中に持っていると仮定し、それを「物語文法」と呼びました。

次の4つを満たしているような構文です。

1)設定
2)テーマ
3)プロット
4)解決

これらにそって、誰が、いつ、どこで、どのような事件に巻き込まれ、どんなトライアルを行い、どういう結果が生まれたのか?を把握することが、ストーリーでものごとを語るということになります。

これらの物語は、日常的に言語化されません。なぜなら、日常では、目に見えること、あるいは、言葉で表現されやすい事実ベースのやりとりが中心だからです。

でも上記のような物語は、必ず一人ひとりの中に、あるいは、他者との間に流れているのです。

そうしたことに意識的になり、取り出し、検討してみることが、対話であるとも言えるかもしれません。

無意識下にあるストーリーを見つけ、コンテキストを互いに見つめることによって、互いの意識や価値観、判断軸の変化を生み出すものを、対話という行為が担ってくれます。

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ものがたりの可能性とは?

社会構成主義(Social Constructionism)と呼ばれる哲学的立場があります。

この考え方では、「ものごとの意味とは、客観的事実ではなく、社会的な構成物である」という主張をします。

人々の社会的コミュニケーションによって、意味や意義はつくられるという発想です。

この世の中に存在する、一見、絶対的だと思われるものでも、実は絶対ではないという認識をもたらしてくれることだと思います。

絶対だと思われているものでも、あくまで人々のやり取りの中で「絶対視」されているだけだということを見抜くヒントを与えてくれるのが社会構成主義なのです。

社会構成主義の論点をまとめると、次のようになります。

  • (1)日常生活において人々は、「客観的事実(知識・情報・データ等々)そのもの」ではなく、「客観的事実に対する意味づけ」を通じて、自分の生きている世界を理解したり、行動を方向づけたりしている。
  • (2)しかし、多くの人々は、「客観的事実(知識・情報・データ等々)そのもの」と「客観的事実に対する意味づけ」の違いを意識していないため、しばしば誤解や混乱が生じる。
  • (3)誤解や混乱を避けるには、人々が社会的関係の中での相互作用を通じて、物事(客観的事実)を「意味づけ」ていくプロセスに注目すべきである。逆に言えば、人々が相互に理解を深めるのは、物事を意味づけていくコミュニケーション行為に由来するのだから、それを大切にしなければならない。

価値観や信念という人々が信じるなにかを交換していくための媒介として、コミュニケーションが存在し、そのためには、互いの考えやそれを支持する背景を含めて、ものがたりが成立するような要素を重視して、共有してみるということが大切なのです。

そこには正解不正解などの二元論ではなく、個性的や特性といった形容にふさわしい、その人固有の感性の履歴がおのずと含まれてくるはずです。

対話とは、次のようにさらに定義することができるでしょう。

1.共有可能な緩やかなテーマのもとで
2.聞き手と話し手で担われる
3.創造的なコミュニケーション行為

「雑談」=自由なムードの中での、たわむれのおしゃべり に対して、
「対話」=自由なムードの中での、真剣な話し合い と捉えることができます。

対話を通じて、高次的な学習をもたらすことが可能です。

その学習とは次のような4つのステップを通じて生まれます。

1)人々は、まずそれぞれの視点から、独自の理解を持っている。
2)自己の理解を他者に対して説明するコミュニケーションが生まれる中で、コメント役、説明役といったような役割が自然と生まれる。
3)役割を担いつつコミュニケーションをすることによて、相手が異なった理解をしていることに気づく。
4)学習者間の理解の不一致は、相互の理解をより高次なものに引き上げる。

こうした過程によって、得られたギャップが新しい刺激になり、そして、次回へ続いていく問いとして互いに共有されて、対話という「学び」が続いていきます。

対話の実践については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧ください。対話を通じて、自他変化の瞬間を共有していきましょう。

まとめ

  • 伝わるとは?――価値観や信念は、デジタルに伝わるものではなく、互いがその中で育てるものです。
  • 人の変化を目指す?――互いに変化の中で、新しい価値観や信念を育てる機会を生み出しましょう。
  • ものがたりの可能性とは?――点と点を結び、人に深い理解を促します。
中原淳,長岡健
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