【推しを語ることは、自己認識である?】「好き」を言語化する技術|三宅香帆

「好き」を言語化する技術
  • どうしたら、自分の表現を豊かにできるでしょうか。
  • 実は、「自分の言葉をつくる」というアプローチが大切です。
  • なぜなら、人は、普段「誰かのつくった言葉」で生きているからです。
  • 本書は、自分の言葉を持つための秘訣を説く1冊です。
  • 本書を通じて、自分で世界を描写するヒントを得ることができます。

推しカルチャーを生きる?

本書は、三宅香帆さんによる「自分の言葉」を知るための1冊です。

三宅香帆さんは、日本の文芸評論家で、京都市立芸術大学非常勤講師です。こちらの投稿「【「半身」で生きよう!?】なぜ働いていると本が読めなくなるのか|三宅香帆」でも著書を取り上げさせていただきました。

今回の1冊『「好き」を言語化する技術』においては、自分の言葉を持つことについて語られます。本書で印象的なのは、「推し」カルチャーを通奏低音としてチョイスしていることです。

「推し」とは、アイドルやアーティスト、アニメキャラクター、スポーツ選手など、特に応援や支持をする対象を指す日本発の文化現象です。SNSの普及により、推し活動(推し活)は更に多様化し、食べ物や場所、モノなども「推し」の対象となっています。

冷静に考えてみれば、この推しとは、カルチャーやスポーツなどの趣味的領域だけではなく、人生のあらゆる場面で出てくる概念かもしれません。

自分の好きなことについて、素直に表現するということです。もしかしたら、時に就職活動中に就職したい企業かもしれないし、あるはアルバイト先かもしれないし、受験勉強中に相手の大学・高校についてかもしれません。

さらには、マーケティングやブランディング領域でも推しは、大切です。顧客や見込み顧客から企業やブランドがどう支援されるかということを意識してみることも大切かもしれません。

突き詰めて考えていくと、もしかすると自分のビジョンなども推しなのかもしれないとも思ってしまいます。

これまでも「ファン」や「贔屓」といった言葉はありましたが、「推し」という言葉の特徴は、「推薦したい」、つまりは誰かに薦めたい、という感情が入っていること。

ただし、いざ推しを語ろうとしても、自分の語彙が乏しいことに気づく瞬間もあるかもしれません。

いざ語ろうと思うと「やばい!」という言葉しかでてこない。

推しにハマっている、あるいはハマろうとしているはずなのに、一つの言葉しか出てこない、その解像度が全然上がらないというもどかしさは、現代人ならではの悩みかもしれません。

常套句に流されない?

というのも、人が取り扱うことはというのは、人が使っていることが前提になり、それを頻度高く接触しているからこそ、自分が使える(あるいは、使って意味がある=相手に伝わる)のです。

そして、現代は、SNS等のメディアを通じて、人の言葉に触れる機会が莫大に増えました。マスメディアがつくった言葉だけではなく、市井の人々の言葉がダイレクトに流れ込んでくる時代です。

すると、表現の技法もよりたくさん使われて、なんとなく共通認識が生まれる単語に集約される傾向がより強化される可能性もあるかもしれません。

問題は、他人の言葉を自分の意見だと思い込んでしまうことです。

他人の言葉を使っている時点で、私たちは、自分独自の考えや感性を十分に表現できているわけではないのです。

ありきたりな表現(フランス語では「クリシェ」といいます)が、私たちの感想を奪っていきます。

以下のような表現、よく見聞きしませんか?

  • 「泣ける」
  • 「やばい」
  • 「考えされられた」
  • などなど。

感想界のクリシェで、自分を覆ってしまうことで、自分自身に対する理解について、あやふやにしてしまうのです。

他人の言葉に支配されない

自分がなぜ、推すのか?について、解像度を上げるということは、自分という存在を理解するとても重要な機会なのです。

自分の言葉を見つけよう?

冷静に自分の好みを言語化することで、自分についての理解を確実に深めることが可能です。

それでいて「推し」について説明することは、自分自身の解釈を深めるだけではなく、他者に対してもベクトルが向いているので、すると、他者との関係性を考えていくことになっていきます。

自分の言葉で、自分の好きなものを語ること、それは、自分が自分に対して信頼できる「好き」を作ることになります。

自分がなぜ、それを好きだと思っているのかを知ることができれば、外の世界や他者の評価によって意識が揺らぐことがなくなります。つまり、自信を持つことができます。

自分の「好き」を言葉で保存しておく。

すると、「好き」の言葉が断片として溜まっていくことによって、自分の価値観や人生を俯瞰することにつながって、自分という存在を俯瞰して理解することが可能です。

推しを語るということは、すなわち自分を語るということです。そして主体的に、さらに深く推すことが可能です。

「推し」について語ることで、自分の人生も捨てたもんじゃないな、と思えてきます。

自分という存在の理解にも繋がりますし、さらに、相手との関係性を作り出すことにもなりますし、その関係性をさらに広げていくことも可能なのです。

推しを自分の言葉で語っていくためには、以下のメモをしてみる!ということを大切にしてみましょう。

1)よかった箇所の具体例をピックアップしてみる。
2)感情を言語化してみる。
3)忘れないようにメモをしてみる。

メモは誰かに見せる前提というよりも、ひたすら孤独に積み重ねていくことが大切です。まずは、自分との対話を大切に、言葉の断片を集めてみることからはじめてみましょう。

まとめ

  • 推しカルチャーを生きる?――人生自体が推しの連続で構成されているかもしれません。
  • 常套句に流されない?――自分の言葉を持つことで、自信を持って他者と繋がりましょう。
  • 自分の言葉を見つけよう?――推しに対する断片を集め、まずは自分を理解してあげましょう。
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