- ユーザー(顧客)に向かうために、どんなことが必要でしょうか?
- 実は、自分の所属する組織や事業のことを深く理解することです。
- なぜなら、顧客に向かう意義意味の共有がポイントだからです。
- 本書は、どうしたら真に顧客視点を持つことができるか知る1冊です。
- 本書を通じて、相手ありきの経営についてヒントを得ることができます。
顧客体験を考えるには?
あらゆる事業は顧客のためにあります。そしてその顧客のペインを解決し、バリューを発揮するために絶えずバージョンアップしていく活動こそが、事業の存在意義を作り、そして最終的に企業の存続に寄与します。
そういった意味で、UX(顧客体験)について検討することが、すなわち自社の事業と自社そのものを考えることに繋がります。
UXを考えるうえで、大切な視点は2つ。
1.ユーザー視点に基づく、リサーチの品質の高さ。
2.事業視点に基づく、組織・事業への深い理解。
これらの好循環が、UXリサーチが活きる素地をつくり出します。
事業に関わるなら、ユーザーを知る必要がある。
ユーザー視点とか、顧客視点とか、当たり前のように語られますが、どの程度、実践に落とし込めているでしょうか。本当に大切なのは、自分たち組織が変容することです。自分たちの都合ではなく、他者(他社)の状況に合わせて、自らの行動を逆算して決めていけるか?という論点には、マインドセットの転換と調整が必要になります。
そしてこれらの変容は、1人でもたらさせるものではなく、チームや組織によってもたらされるということを意識する必要があります。
独力か、どうかということは特に仕事をするうえで、あるいは、顧客視点になるために重要なイシューではありません。むしろ、協働を前提とする「仕事」において、そもそもその問いは、機能しないかも知れません。
大切なことは一人でやり切ることにこだわりすぎるのではなく、チーム全体で行っていくことに、大きな力の根源があることに気づくことです。
誰しもが不得意を持ちますが、同じように誰しもが得意領域を持ちます。
顧客に向かっていくために、仲間を増やし、一緒に考え、そして顧客を知る行動や活動をともにしていくことを忘れないようにしましょう。
もしメンバーがユーザー視点を率直に受け取れる状態なら、メンバーを巻き込んで企画・進行する方が、よりリサーチが活きた状態になるという仮説を持っています。
マインドセットと行動が伴うように、チームでユーザー(顧客)に向かう意義意味を確認し合うということも大切なアクションになるでしょう。
- 顧客は何に困っているのか?
- 顧客の本当のビジョンはどこにあるのか?
- 顧客はどのように運営をしているか?
- 顧客はどのように自らを表現しているか?
- 顧客の真の望みはなにか?
これらのことは、単純に顧客に聞いても現れないことかも知れません。
だからチームで顧客と対話をしながら、絶えず気づいたことについて、チーム内外で話し合いながら、論点を抽出し続けることが大切なのです。
論点はどこにあるか?
本書の著者である瀧本はろかさんは、従業員としての仕事目線、開発目線、いち生活者としてのユーザー目線、あるいは、専業主婦や子育ての経験から主婦、母目線など、さまざまな立場からの目線を行き来することによって、ものごとや組織の本質を見出しています。
本当に大切なことは、調査のテクニックや手法論ではなく、心構えを作り、チームをいかに運営し続けていくかということを、本書の中で一貫して語ってくれています。
そうした志は次のような言葉にも現れています。
ユーザー理解が大切なのと同様に、チームの理解が大切。
ユーザー(顧客)と聞くと、得意先やクライアント、あるいは、エンドユーザーの方々だけを思い浮かべるかも知れません。でも、それだけでしょうか?
仕事をすることを、「はたらく」といいます。この言葉の語源は、「はた(傍)」を「らく(楽)」にすることであると言われています。つまり、隣の人(はた・傍)を楽にすることが、はたらくということ、すなわち仕事になります。
そう考えてみると、何も顧客の方々だけが顧客ではないということに気付きます。
そうです。実は社内も顧客であるのです。
だから、自分自身が仕事をして(例えばユーザーリサーチをすることなどして、リサーチ結果を届けるとして)、その先の相手(社内外)の顔やニーズ、ジレンマが見えているかどうか、その理解が非常に重要なキーであるということです。
組織は、コンテキストをまとっています。
AIが仕事をしているわけではなく、人間が業務にあたっているので、当然です。
言葉にならない文脈を理解することがとても大切です。これらは言葉にならないため、キャッチアップすることが時に難しい場合があります。
しかしどのような立場で、どのような流れの中で、思考を巡らせて、言葉を発して、行動しているかを知ることはとても重要なことです。
まるで前提条件だけれど、なかなか表現されないそのコンテキストを理解して、乗る(ノリを良くする)ことで、相手との同期を早めることができます。
仕事は、プレゼント?
ユーザー視点と事業とが強固につながっていると、ユーザー視点が事業に及ぼす影響が大きい状態(開発プロセスに組み込まれている、意思決定に使われている、など)になっています。
この状態にあるということは、すでに自分の力量以上のことが行われている可能性があります。テクニックや、スキルなどではなく、環境による影響が非常に大きな状態です。
チームで仕事をするには、こうした状態をいかに目指すことができるか、ダイナミクスを信じて、実装することができるかについて検討する必要があるでしょう。
また、こうした状態を作りやすい組織があるのも事実です。例えば、次のような特徴を有する組織です。
- 事業の成り立ちにおいてリサーチを実施してきた過去がある
- リサーチした結果をもとに事業の方針を決めてきた
- リサーチを実施した先任者がいる
- プロダクトやサービスのユーザー体験が競合優位性になっている
一方で、その反対も存在します。
- 事業の成り立ちにおいてリサーチを実施してきた過去がない
- リサーチ結果以外の方法で事業の方針を決めてきた
- リサーチを実施した先任者がいない
経営者のアイデアが素晴らしく、マーケットにも結果的にフィットしてきた商品を生み出している企業で、永続性が担保される場合もありますが、それは稀です。
また、経営者の存在が強みでもありリスクになるため、組織の永続性を守っていき、雇用やノウハウの離散を社会のために守ることを考えた場合には、やはりどこかでプロダクトアウトだけではなく、マーケットインの発想やチーム作りにも着手する必要がありそうです。
リサーチは、事業を成功に導く手段の一つにすぎません。
著者・瀧本はろかさんは、「リサーチは、プレゼント」といいます。
プレゼントは、相手のことを想い、相手のことを知り、相手を気遣ってこそ、よりよい機会となります。
相手ありきの話であるということを、そのための接点をアップデートすることができるか、ということを忘れてはならないのかも知れません。
――日常においても、社内のささいなやり取りにおいても。
企業変革の可能性についてはこちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」もぜひご覧ください。
まとめ
- 顧客体験を考えるには?――(自社の)組織体質自体を変革する必要があります。
- 論点はどこにあるか?――結局は、チーム作りにあります。
- 仕事は、プレゼント?――どんな仕事も相手が必ずあるということです。