【自分の仕事の“定義”をアップデートしよう?】上司がAIになりました|橋爪大三郎

上司がAIになりました
  • AIとの協働をどう捉えていけばいいでしょうか?
  • 実は、計算機としてのAIを見つめると、連携の視点が見えてくるかも知れません。
  • なぜなら、AIには感情や意志がなく、人間のそれらが相対的に重要になる時代が来るからです。
  • 本書は、AIが実装されていく社会を考えるための1冊です。
  • 本書を通じて、人としてあるべき姿のヒントを得ます。

AI理解の解像度を上げると?

生成AIとともに仕事を行っていける時代になりました。当たり前のように対話パートナーとしてのAIの可能性に驚かされながら、模索をし続けています。

これからさらにAIがいろんなビジネス、生活のシーンで溶け込んでくる中で、どのように考えを巡らせながら、一緒に活動していくことが理想でしょうか。

大切なのは、まず、AIの正体に迫ることでしょう。

AIは、人間が、なにか質問をするとそれにふさわしい回答をしてくれます。その回答は人間の答えと同じようで、不自然なところがありません。回答は十分に信頼できる内容です。しかし、AIは、人間ではないのです。人間ではないのに、人間と同じように言葉を生み出すことができます。

人間の場合は、言葉と並行して(相前後して)、思いがあります。生成AIの場合は、何も考えていません。そもそも意識がないのですから、自分がないということになります。何か言葉を出そう!あるいは、こういうことを言おう!という意識がなく、単純に入力(質問)から出力(回答)を導き出す計算メカニズムがあるのみのです。

要するに、ChatGPTは、なにも考えていない。空っぽの計算メカニズムだ。

ではなぜ、ChatGPTなどのAIが人間のように“自然な”言語を使うことができるかと言うと、それは、自然さを損なわせないように一度、言葉のまとまりを分解して、もう一度、組み立てて、並ばせているからです。

その時々に使われるであろう最適な組み合わせを計算して、置くことができるので、人間が読んでもきわめて自然に感じることができます。

しかし、人間も自分は言葉を創造的に使っている!と思うかも知れませんが、本当にそうでしょうか。人間だって、実は、紋切り型の言葉を使っています。挨拶やスピーチや、打ち合わせのよくある言い回し、どこかで聞いたことを耳したり読んだりすると安心感があるものです。

日常や特にビジネスで使われるような言葉は、一定程度、紋切り型で、済んでしまう内容が多いのかも知れません。

人間とAIとの協働を考えていった時に、「人間はしばしば、言葉を書きあぐねる」ということに行き当たります。

とにかくAIは、入力(質問)さえあれば、どんな内容でも言葉をひねり出してくれるため、その言葉を読むなり見るなりして、人間が「こういうことを書きたかったんだ!」とか「こういう内容を意図したかったんだ!」と気づいて、文章を作っていくことができるようになります。

気づきの大切さについては、こちらの1冊「【頭がいいは、視点で決まる!?】メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける|澤円」もぜひご覧下さい。

自分の意志に気づくことのかけがえのなさについては、こちらの1冊「【まだ言葉になっていないこと?】インサイトブースト:~経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本~|下總良則」もぜひご覧ください。

AIで仕事がかわる?

社会は、AIを含む形で最適化し始めていくでしょう。なぜなら・・・

人間が社会のことを考えようと、考えまいと、社会は独自の法則によって変化するのだ。
どうしてか。
社会は、人々が言葉を交わすことを前提にして、できている。

そうした前提を加味して、さまざまな制度ができています。だから文字が生まれたとき、印刷術が生まれたとき、電話や無線が生まれたとき、ラジオやテレビやインターネットが生まれたとき、社会は変化したのです。

生成AIがうまれたら、やはり社会は変化する。

この変化は、これまでのものよりも格段に大きく、そして、本質的でしょう。

今後、産業のあらゆることが、次々と自動化(無人化)されていきます。そしてその過程で、人間の労働が消えてしまっても、経済が回り続ける現象が起きます。

しかし、一方で人間の労働の重要性はますます増大します。少なくともどこかの産業では、人間でしか労働ができないような分野が必ず残り、そして相対的に非常に高度で付加価値の高いものとして認識されることが前提となるのです。

自動化が進む分野としてマネジメントがあげられます。会社の特に中間管理をしている職業、特に情報集約と定型業務を行っているレイヤーは、どんどん機械に置き換わっていくことが予想されます。

その企業の人件費は節約されて、財務が改善します。競争力が強まることから、そうした舵取りをしていることが、スタンダード化していきます。

そして、経営になる?

「経営」の考え方を広げておくとよりよいかも知れません。こちらの1冊「【自分で自分を営もう!?】「自営型」で働く時代――ジョブ型雇用はもう古い!|太田肇」もご覧いただければと思います。

そして、人が行うべき、仕事は、「経営」に集約されていきます。経営とはなにか?それは、意思決定です。外部と内部の情報を創造的に見て、わからないこともあるが、最適であると思われる答えを見出し、絶えず行動を行っていき、その結果からフィードバックをシステムに返しながら、新しい一手を繰り出していく。そうした、推進力というものは人間にしか持つことはできません。

なぜなら、「なぜあるのか?」について明確な意志を持った答えを導出できるのは、人間にしかできないものだらからです。

  • いま人間がになっている企業の本社業務を分析し、そのうち置き換え可能な部分を、生成AIに置き換える。
  • 人間は、本社業務のうちいちばん大事な、マネジメントに集中する。

これらが実現すれば大きく社会が変わることになります。

提携処理を行っているホワイトカラーが労働市場で、より人間に求められる最適な配置に転換されることによって、社会全体の変化が加速されていきます。

生成AIソフト「未来マネジメント」が動く本社では、従業員は、現場(一線)の職員か、さもなければ経営者(取締役)である。

ピラミッド組織ではなく、トップと現場のシンプルな2層構造で運用されていきます。

その中では、もしかしたら人の可能性を絶えず発揮できる場所やチームというものがAIがヒントを提供してトップがディレクションしていく世界観があるかもしれません。

これで見えていなかった、人の解像度が高くなっていく可能性を感じながら、自分自身のできること、提供できることについて、解像度をあげていきましょう。

次回も本書『上司がAIになりました 10年後の世界が見える未来社会学』をレビューさせていただきながら、さらに人の新しい「学び」や「教育」の必要性やあり方に関する解像度をあげていきましょう。

まとめ

  • AI理解の解像度を上げると?――相対的に人の役割が見え、意識・意志・判断の重要性が浮き彫りになります。
  • AIで仕事がかわる?――中間のマネジメントがなくなり、人生は「経営」になります。
  • そして、経営になる?――自分の人生を「経営」していくというマインドセットを備えよう。
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