- 目標を描き達成に向けて、行動を積み重ねていくためには、どんなことが効果的でしょうか。
- 実は、未来の自分を具体的にイメージすることです。
- なぜなら、人はギャップを埋めることに熱心になれるからです。
- 本書は、未来からバックキャスティングしてみる発想で人生を拓く1冊です。
- 本書を通じて、自分の描いた通りの人生を歩むヒントを得ることができます。

未来の自分を思い描く?
ハル・ハーシュフィールドさんは、UCLAアンダーソン・スクール・オブマネジメントの教授です。
専門は、マーケティング、行動意思決定、心理学であり、「未来の自己」というコンセプトをかかげ、多くの研究で受賞歴を持ちます。プルデンシャル・ファイナンシャル、消費者金融保護局、メリルリンチなどの多くの企業・組織においてコンサルタントも務めている方です。
「未来の自己」という研究コンセプトは、「幸福を最大化しつつ、人々を“今の自分”から“未来の自分”へと成長させるためにはどうしたりいのか」という内容を深めるものです。
教授は言います。幸せを感じられる人生を目指すためにはどうしたらいいのか・・
それは「未来の自分を具体的にイメージすることによって」だ。
何をしたらいいのかわからない人にとって、未来とは、さらにモヤの中に包まれた謎の状態です。
ポイントは、「何をしたらいいのか」ではなく、「未来の特定の時点で、どうなっていたいのか」を検討することで、TODOは見えてくるということです。
そのなりたい状態に近いキャラクターを“演じる”ことで、いまここの行動を変えて、なりたい状態に近づくことができます。
キーは、なりたい姿を鮮明に想像できるかにあります。
また、もうひとつ大切なことは、その想像した未来の自分を非常に身近な存在であると感じてみることです。
未来の自分を赤の他人だと感じてしまえば、いまここの自分がその未来の状態に向けて行動をすることができません。反対に、未来の自分とのつながりを感じられるように親しい関係性をおぼえることができれば、その未来の姿に向けて自然な逆算した行動を取ることができるようになります。
さらに、3つ目に大切なのは、「今の自分」に左右されないということです。いまどうであれ、未来の時点では大きく変わっている可能性があります。
いまの状態や感情に流されることなく、未来の時点を自由に思い描いていいのです。
未来の自分と今の他者のために?
心理学者のマーティン・セリグマンさんとジャーナリストのジョン・ティアニーさんは共に寄稿したコラムで次のような言及をしています。
生物としての種を分かつのは「未来を熟考する能力であり、我々は未来を思い描くことで前進する」。
人間は未来を想像することができます。そして、その想像はたしかにいまここの時点では、現実ではないのですが、その想像に向けて行動や言葉を調整し続けていくことが可能なのです。
未来の自分についての思考は、現在と未来の自分に大きな影響を与えるのです。
未来の時点の自分と、今の自分のギャップを認識することによって、現在の行動や言葉に方針を打ち立ててみましょう。すると言動に一貫性が出て、きっと周りの人も気づいてくれるようになります。周囲との関係性がよりよいものに変わるなかで、さらに未来の姿に向けて歩みを進めることが容易になります。
未来を見据え、計画を立て、実行することで、自分自身を変えることが可能になる。
未来の特定の自分を自分であると思えるか、その境目は、「道徳的な特性」によるものだとされています。これはペンシルベニア大学ウォートン校のニーナ・ストローミンガー助教と共著者のコーネル大学のショーン・ニコルズ教授は、「自分らしい自分と、そうでない自分の境界線」の研究によります。
道徳性とは、親切かいじわるか、共感的か無慈悲か、礼儀正しいか無愛想かなどの特性です。
実際に、若い日の自分と歳を重ねた自分を結びつけ、切り離すのは、こうした特性の連続性によるものです。
未来の時点においての自分について、どんなパーソナリティを持つ状態なのかを検討しておくことも大切であるということでしょう。
その際には、現在の自分がどういう人格=道徳性を持っているのかを、知ってみることが欠かせません。その自分の道徳性を含む未来の自分を描くことが効果的であるからです。
教授らは、道徳性を別の言い方で「優しさ」とも表現します。
時間が経っても「あの人は昔と変わらない」あるいは「変わってしまった」と認識する決め手は、他者との関係性の根底をなす「優しさ」なのですね。

時間バイアスを取り除け?
遠い未来の自分に親しみを感じる人は、「忍耐強い」選択をすることができます。
その遠くの誰かに「優しさ」を一貫して感じることができれば、いまここの自分の行動を利他的に行うことができます。そして、その優しさというスタンスは、きっといまここの(本当の)他者に対しても利他的に行動できるプログラムであるはずです。
一見自分のためであっても、遠い未来の自分はたしかに、いまここの自分ではありません。でもそんな遠くにある自分かも知れない、もしかしたら別人かも知れない人のために、いまなにかをし続けるということを身につけるということは、利他の練習に最適なのかも知れませんね。
実際に著者ハル・ハーシュフィールドさんの研究によると、将来の自分に親近感をおぼえる人ほど、貯蓄額も高いし、総合的にみて、経済的に豊かだそうです。
そうした状態を作り出すのは、やはり自分自身だけのために行動するのではなく、他者のためにいかにあることができるかを考え続けているからだと思われます。
自分と親しい人々――親友や親、恋人など――について考えたときの脳の活動は、自身について考えたときの活動と大差がなかった。つまり親近感は脳の活動に反映されるのだ。
未来の自分、いまここにあるつながりを歓迎して、他者のためにいかにあることができるかも検討してみましょう。すると、未来を引き寄せたり、未来に向かって進んでいく今の繋がりをさらに強くすることができます。
遠い未来は、感覚的に本当に「遠い」のです。
遠い未来の1日と、明日の1日とでは、明日の1日の方が長く感じますし、遠い未来の1万円と、明日の1万円とでは、明日の1万円の方が価値を感じます。
これは感情においてもそうで、明日の感情と遠い未来に感じるはずの感情では、明日の感情が優先されます。
時間は「今」から遠く離れれば離れるほど、圧縮されて感じるのだ。
将来について考えているのにもかかわらず、現在の自分の状況やバイアスを払拭できずに感がてしまうクセがあるということを知りましょう。過剰に割り引かれて感じてしまうことについて、意識的に、未来を想像してみることが大切なのです。
私たちが、「自己肯定」をしてしまう生き物であるということも、未来を想像するうえでとても大切な要素です。
ほとんどの人は自分のことが好きです。自分の性格や行動は他人にとって魅力的であると(信じたい)と思っています。そして自分の価値観はどんなときでも称賛されると無意識のうちに思っているのです。
すると何が起こるかと言うと、未来の想像をするときにも、今の自分の状況や活動を前提に考えてしまうということになりえます。
今後のキャリアの方向性や仕事の見通しについて考える場合、自分が何を重視するかの判断を誤ると、のちに後悔するような道を選択する(あるいはそもそも選択しない)ことにもなりかねない。
自分の好みや嗜好は絶えず変化していることを知りましょう。現在の自分を起点にものごとを未来の状態を想像して、選択するのではなく、変化の可能性について加味しながら、多様な自分の可能性を想定してみるのです。
時間に対して成熟した視点を持ち、与えられた未来に向けて計画を立てながらも時間の経過とともにその計画に違和感を感じたら、更に修正を図っていくスタンスを大切にしてみましょう。
本書がもっとも伝えたいのは、時間という貴重な資源をいかに活用していくのか、そのための見立てが重要であるということでしょう。
未来に向けた計画のためにはこちらの1冊「【ビジョンを持ち、語ろう!?】ひとりの妄想で未来は変わる|佐宗邦威」もおすすめです。

まとめ
- 未来の自分を思い描く?――そこから未来に向けたいまここの言動を再構築できます。
- 未来の自分と今の他者のために?――相手(他者そして未来の自分)のために、利他は効きます。
- 時間バイアスを取り除け?――未来の地点への先入観を排除して考えてみましょう。
