【成長への信念が「良き文化」を創る!?】なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか|ロバート・キーガン他

なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか
  • どうしたら、チームの力を引き出して、困難を乗り越えていくことができるでしょうか。
  • 実は、リーダーが、自然体であることと、役割を正しく認識していることが重要かもしれません。
  • なぜなら、そうしたリーダーは「本来の自己」と「役割の自己」を高い次元で融合させているからです。
  • 本書は、自分らしさを保ちながら、変化し続けるリーダー、そしてチームを目指すための1冊です。
  • 本書を通じて、リーダーとしてのマインドセットについて、ヒントを得ることが可能です。

人は2つの仕事に勤しむ?

外的な変化に触れながら、自分や自分を取り巻くチームが絶えずアップデートを繰り返していくことが大切です。そうした外的な「変わらざるをえない」プレッシャーと、「人間らしく、自分らしく暮らしたい」という内的な衝動の高まりの中で、どちらか一方に偏るのではなく、バランスの中で、むしろそうした相反する力を学びに変えていけるかどうか、がリーダーには問われていると、言えるのかも知れません。

二者択一かのようにみえる問題は、実は、二者択一ではなく、両立するべき問題であることが多くあります。詳しくはこちらの1冊「【私たちは、二者択一にとらわれている!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」もあわせてご覧いただきたいのですが、どちらか一方ではなく、両方ともという選択を目指す中で、自分のものごとをとらえる枠組みや思考のパターンを俯瞰して理解して、制御していくことも、とても大切です。

そして、その視点や発想こそが、変化を自分の中に積極的に引き入れることにつながっていきます。

リーダーシップのあり方を捉えたとき、カリスマ性のある牽引型で権威型のリーダーよりも、変化の多い中において、どちらかというとメンバーの支援に回るサーヴァント型のリーダーシップモードを選べるほうが、外的な変化に柔軟に対応していくことができるようになるでしょう。

そうしたモードを選べるリーダーというのは、「本来の自己(Authentic Self)」と「役割の自己(Role Self)」が高い次元で結合されていると言われています。

本来の自己とは、上述のような内的なエネルギーです。つまり、本来の自分の感情や感性を大切にしながら、自分らしく生きてみたいと考えるモードのこと。そして、もうひとつの役割の自己とは、チームのリーダー(あるいは、マネジメント)として外的な環境とチームの状況を俯瞰しながら、自分の揺れ動く役割規定を絶えず変更しながら、柔軟に対応していくというモードです。

2つの自己は葛藤しそうですが、両方が実は大切なのです。これら2つは融合し、相乗効果をなすからです。

自分らしさを保ちながら変化しつづけるという、2つの自己を結合させる組織のあり方が浮かび上がってくるかも知れません。

多くの職場において、組織としての公式的に与えられる仕事と、もう一つの仕事に多くの人は邁進しています。そのもう一つとは、「自分の弱さ(=本当の自分)」を隠すという仕事です。できないと思われたくない、頭が悪いと思われたくないなど、ネガティブなイメージを持たれたくない!と、自分を隠してしまうのです。そして、その隠すための行為に労力を割くことが日常的に多くの人の中で、無意識のうちに仕事化しています。

しかし、駆け引きをし、欠点を隠し、不安を隠し、限界を隠すことで、コミュニケーションは複雑になるし、時間もかかるし、そして、シンプルな判断もできなくなります。なにより、本当の自分を隠しているに変わりないので、メンバーがリーダーに対して疑心暗鬼になるし、さらには、自分自身が自分に対して嘘を就いているのと同じなので、自分をないがしろにしてしまいます。

現代社会にありふれた組織、つまり、自分の弱さを隠すという「もう一つの仕事」に誰もが明け暮れている組織の状況を考えてみてほしい。

経営者は、そのような仕事に邁進しているひとにフルタイムの給料を払っていることになりますし、リーダーは、そうして覆い隠される個人の特性の中で、ハンドリングをしていくし、さらにメンバーは、自分を常に隠しながら、心理的安全性が担保されない環境で働き続ける違和感とともにあります。

こうした「もう一つの仕事」は、圧倒的な時間を溶かす、目に見えないコストです。短期的にコストとして企業の経営状態にインパクトをもたらすだけではなく、中長期的には、貴重な人の成長を奪い、人的資本の弱体化をもたらします。なぜなら人とは、そもそもが心理面での成長、進化、発達を目指している生き物でもあるからです。

人の根源的な欲求とは?

事実として人は仕事で燃え尽きません。仕事の負担が重いから、人はバーン・アウトするのではないのです。何が人を燃え尽きさせてしまうのか、それは、成長を感じられずに長く働き続けることです。

だから、弱点の克服に取り組もうとせず、弱点を隠そうとする結果、みずからの人としての成長をはばんだり、その足を引っ張ったりすることの弊害は、あまりに大きい。

近年になって、そうした人が求めることにさらに貪欲になる人が増えているような気もします。特にZ世代以下は、いかに企業が社会に対してバリューを提供している意義意味を求めたりもします。新しいタイプの「所得」を欲する働き手が増えていると言っていいでしょう。

個人としての満足感、充実感、幸福感といったもののことだ。

非物質的に自己を満足させて、内面の充足感を高めるこれらの所得は、心理面に作用します。新しい所得の重要性が相対的に高まっている中で、19世紀に労働運動が登場して以来最大の変化が、雇用者と労働者の関係性に、訪れています。

個人が働くシーンにおいて、過剰に「自分の弱さを隠蔽する仕事」に邁進するのではなく、素直に自分自身の特性を認め、オープンなマインドで、組織やチームと関係性を作っていくためには、次の3つの視点が重要です。

1)エッジ(発達への強い欲求)
2)ホーム(発達を後押しするコミュニティ)
3)グルーヴ(発達を実現するための慣行)

これらの3つの軸が一体となって、発達思考のカルチャー(文化)を組織内にもたらすことが可能になります。

何がオープンなカルチャーを作るか?

それぞれの要素について、OPENなカルチャーが醸成されたとき、人はどのようなマインドセットを持つことになるでしょうか!?以下、の論点を参考に、自分自身の状況やチームの状況を俯瞰してみましょう。

エッジ

  • 大人も成長できると信じる。
  • 弱さは財産になりうる。失敗はチャンスだ。
  • 発達思考の原則に従う。
  • 目標はすべてが一体である。

ホーム

  • 地位には、基本的に特権が伴わないと信じる。
  • みんなが人材育成に携わるというスタンスを持つ。
  • みんなが「僚友(クルー)」を必要とする。
  • みんなが文化を築く構成要員である。

グルーヴ

  • 安定を崩すことが建設的結果につながる場合があると信じる。
  • ギャップに注意を払える。
  • 仕事の完了ではなく、成長のためのスケジュールを設定する。
  • 人の内面もマネジメントする。

これらのポイントを重視しながら、自分や会社・チームの状況が、個人の成長や発達を支援するものになっているのかをチェックしてみることがとても重要です。カルチャーとは目に見えないものです。言語化できていないものについては、意識して捉えてみる行為が欠かせません。会社やチームは、自分やメンバーが真に成長させるための役に立っている女体であるかどうか確認をしてみましょう。

成長というのは、何も成功経験だけによってもたらされるのではありません。時に、失敗や不安定な状況に対してポジティブさを失わずに向き合っていく中で、自分の考え方やスキルセット、自信がアップデートされます。失敗してもよいのだという前提で、それを肯定して、次に進めるよう、そうした感覚を共有できるチーミングを行っていきましょう。大切なのは、よいことも・よくないと捉えられることも、すべてが学びの機会であるととらえられる取り組みをすることです。

具体的には、たとえば、メンバーや小さなチームが獲得した結果について、言語化し、チーム全体のメンバーを通じて、語り合いながら学びの機会が得られるような対話の機会を作ってみることです。その中の発言一つ一つによって、失敗や挑戦を肯定するムーブメントを構築することは可能です。

人は成長するという前提に立てば、「まだできていない」「まだ知らない」「まだ成功していない」と未来に向けて、よりよいビジョンを描きながら、いまここを再定義することも可能です。こうしたスタンスをまずリーダーが持ち、自分をOPENにさらけ出しながら、よりよい対話ができるありたいチームの姿を描きながら取り組みを続けてみましょう。

失敗を恥じなくてもいいのだと伝え、むしろ失敗を祝福している。

失敗には、痛みがつきものかも知れません。でもそれを仲間と共有しながら、学びの機会に変えていくことで、その失敗の経験は次につながるし、そうしたことをOPENにして、語り合った事実がさらにチームメンバー同士のつながりを感情面、理性面、いずれの面からも強固にしていくのです。

営利企業である場合は、利益の追求はとても重要な課題です。これによって企業組織の持続性が担保されます。ですが、利益だけを追求するのではありません。大切なことは、利益の追求と個人の成長を切り離さないように、一体型で考えていくという試みです。両者は相互依存の関係になります。

個人やチームのスタンスが、活動を作り、そして、利益をもたらします。また、結果としての利益が、さらに個人やチームのスタンスに磨きをかけていく原動力となります。

これらの考え方に共通するのは、人は「成長し、変わっていくことができる。そして、それはどんな人でも当てはまる」と信じられる出発点を持つことができるか、ということに尽きます。

人の成長に対する見立てについては、こちらの1冊「【あなたは硬直型!?それとも、しなやか型!?】マインドセット:「やればできる!」の研究|キャロル・S・ドゥエック」を著者も引用します。ぜひご覧いただき、自分自身が人の成長や発達についてどのような先入観を持っているのかに、意識を向けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 人は2つの仕事に勤しむ?――組織のミッションと、自分の弱さを隠すという仕事です。
  • 人の根源的な欲求とは?――それは、自らの成長に集中していることです。
  • 何がオープンなカルチャーを作るか?――成長をいつまでも信じる心です。
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