- どうしたら、一人ひとりが自分と組織のミッションをすり合わせしながら、よりよく活動することができるでしょうか。
- 実は、ディズニーの運営にヒントを求めるのがいいかも。
- なぜなら、ディズニーでは従業員個々のモチベーションに頼るのではなく、仕組みがあるのです。
- 本書は、オリエンタルランドの人材教育に20年間携われた大住力さんによるマネジメントの1冊です。
- 本書を通じて、一人ひとりが素直に動ける視点のヒントを得ることができます。
仕組みが大切!?
一人ひとりがモチベーション高く、組織に参加してくれて、自らのやりたいことを自発的に行っていく状態を作れるとどれだけいいことがあるでしょうか。多くの経営者や人事担当者の方、あるいは現場リーダーの方をはじめ、そうしたことを想像しながらも、現実とのギャップを認識して、どうしたらいいものか・・・と悩んでいる人は少なくないのではないでしょうか。
高いモチベーションが目的であったとしても、モチベーションを高めることに専心していては、なかなかモチベーションを高めることにならないというジレンマがありそうです。というのも、そもそもモチベーションというのは、何らかの活動により自分自身で結果的に見出すようなものとしての側面もあるからです。
また、モチベーションだけに頼ることをしてしまっては、それは長続きしません。個人のやる気はとても大切ですが、それに過度に依存することが大切なのではないし、やる気を奮い立たせることを目的にしてはならないというのが、まず大前提にあります。
理想的な状態とは、以下のようなありたい姿を組織全体として描けているかどうかです。
組織自体に強い意志があるとともに、蓄積されたノウハウを体系的に整理し、人材教育につなげていることです。
この状態は、やる気と方法論を見出すことが仕組み化されている状態と捉えることができるでしょう。まさに、本書の著者である大住力さんが、20年間ディズニーの人材管理にあたっているなかで、見出した組織としてのひとつのありたい姿です。
ディズニーでは、従業員の個々のモチベーションに頼ることなく、全員が一定の成果を出せる仕組みを整えています。夢の国は、仕組みで運用されているのです。
具体的には、ディズニーにおいて、会社の最終目標(ゴール)を全社員と共有し、ミッション、チーム、コミュニケーションの3つを相互に作用させるシステムを構築しています。「ハピネス(幸せ)」創出の裏側には、人が思わず動いてしまい、そしてそのことが、成果につながりやすい状態を作る仕組みがあります。そして、その仕組み自体が稼働することにより、従業員がやる気と自信を感じやすくなり、好循環が生み出されるモデルがあります。
2つに分けて考えよう?
「ハピネス(幸せ)」が最終目的のディズニーですが、実は手段として一人ひとりの感情(モチベーションややる気も含む)に頼ることをしていません。
ディズニーの人材育成では、感情を持ち込むことなく結果を出せるようにするシステムが必要だという考え方が土台にあります。
これはある種アメリカナイズされた、合理的な考え方だと思われます。人というのは、ムラがあります。一人の人の1日の時間軸の中にもムラがあるし、あるいは、人それぞれで、指向性や特性にムラがあります。これらのムラは時に増城効果を発揮させて、とてつもない強みとして組織に恩恵をもたらすこともあれば、放置しているとサービス品質というアウトプットにもムラをもたらしてしまう可能性があります。
そうした前提を考えた時に、「誰もが」「アタリマエのこと」を共有して、それを実行できる「仕組み」を最低限要してあげることが、組織運営には欠かせない土台になります。ムラを認識して、土台で足場を整えてあげる。品質向上や特性発揮というのは、その後ということになります。
こうした考え方が現れているのが、次のキーワードです。ディスニーでは2つの仕事の捉え方をします。
デューティ(DUTY):量的仕事
ミッション(MISSION):質的仕事
両輪を動かして、仕事を練り上げてプロフェッショナルになることを一人ひとりに求めます。
量的仕事とは、入社したら誰でもやらなければならない仕事のことです。できないことは認められません。パフォーマンスを発揮しにくい人でも、まずは量的な仕事をきちんとできるようになるように、マニュアルを整備して、誰もができる仕事ができるようになります。
量的仕事は、誰もができる仕事ですが、決して重要でない仕事ではありません。リーダーの方が「その仕事」の意義を言語化してしっかりメンバーに伝えられていることがキーです。
しかし、会社は量的な仕事だけでは成り立つわけではありません。仕事は、質的仕事をこなす力も必要となります。質的仕事とは、レベルアップした仕事・・・周りから、「いい仕事をするなぁ!」「助かるなぁ」と感じてもらえる仕事も大切です。(どちらかというと、こちらが先にフォーカスされちゃって、なかなか量的な仕事の仕組み化が進まないのが多くの企業にとっての問題点かも?しれません)
デューティ:ミッション=6:4というバランスで、ディスニーはマネジメントを運用しています。
デューティに若干のウエイトがよっているのがポイントで、「型を作って仕事を与えれば、漏れがなくなる」という考え方に基づいているからです。その代わり、ミッションについては、「自分の頭で考えるもの」と書いてあるだけで、個人に仕事の内容を考える自由が与えられています。
この余剰は、責任感ももたらします。そして、その責任感こそが、自分がその組織(ディズニー)で働く意義や意味、そして組織が目指そうとしている先や、その組織の役割に対して意識を向けるきっかけとして機能させます。
3つの要素を組み合わせよう!?
ウォルト・ディズニーが人材教育のメソッドとして作り、ディズニーの企業価値を生み出す要素としていまでも大切にされているのは、ミッション、チーム、コミュニケーションです。この3つのすべてが達成されたときに初めて、企業価値が生まれてきます。
- ミッション・・働く目的や最終的な理想像のことです。
- チーム・・「全員が機能する集団」を意味します。1+1ではなく、掛け算の関係を目指します。
- コミュニケーション・・チームメンバーの一人ひとりをつなげるものです。
これらの3つの要素が充当されることによって、どんな人でもモチベーション高く、運営していくための活動を見出すことが可能となります。
個人の力を育てる3つのステップがあり、ミッション、チーム、コミュニケーションをなすためには、それぞれのステップにあたって個人のスキルセットとマインドセットを向上させることが可能となります。
1.ファンクション・・個人の働く目的・ミッションの理解
2.スタンダード・・自分がやることの基準の理解
3.ナレッジ・・知識・知恵・体験の継承
これらを経るとミッション、チーム、コミュニケーションの基盤を運用できるメンバーとしての基本的な状態が整うというイメージです。
ここまでの話は、社内についてフォーカスしていますが、実は、一人ひとりの人材は社内だけで育つだけではありません。社外の状況に触れたり環境から刺激を得る形で、新しい視点や行動を見出すこともできるようになります。実際に、「越境」というキーワードで、一人ひとりの従業員が外で活動することの利点が語られ始めています。
例えば、こちらの1冊「【越境人材は、2度死ぬから、生きる!?】越境学習入門|石山恒貴,伊達洋駆」もご覧ください。
そして、ディズニーでも、こうした越境の論点は重視されています。「SWINGする」というキーワードで、語られています。SWINGするということは、振り子のように左右に振れることで、外の世界や外部環境と、自社や自分自身の行動を比べ、行動の変容を心がけましょう!ということです。
SWINGで動くと、「何かおかしいな?」「私はこれでいいのかな?」「うちの会社はこれでいいのかな?」という視点を得ることができます。これは当たり前を疑うことになり、絶え間なく自分自身の行動を向上させていくきっかけを作ることになります。
WINではなくHAPPYの視点へ
ディズニーは、Hapinessを共有することが、パーパスの根底にあります。これはゲストだけではなく、キャスト・従業員に対しても同じ視点を持ちます。「みんなにとっての幸せとはなんだろう?」という根源的な思い(問い)を真剣に考える結果、デューティやミッションという絶妙な区分けとバランスを運用するのに至ったのかも知れません。
根本的な問いをもつ重要性については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧下さい。おすすめです。
まとめ
- 仕組みが大切!?――やる気やモチベーションに頼らない運営が大切です。
- 2つに分けて考えよう?――デューティとミッションのバランスを検討しましょう。
- 3つの要素を組み合わせよう!?――ミッション、チーム、コミュニケーションを組み合わせましょう。