【リーダーシップを使い分けよ!?】柔軟なリーダーシップ FLEX(フレックス)|ジェフリー・ハル

柔軟なリーダーシップ FLEX(フレックス)
  • どうしたら変化の激しい難しい局面においても、よりよいリーダーシップを発揮できるでしょうか。
  • 実は、2つのモードを駆使することが大切かも知れません。
  • なぜなら、状況に応じて求められるリーダーシップの機能は異なるためです。
  • 本書は、リーダーシップのあり方を2つに分けて、使い分けを進めるための1冊です。
  • 本書を通じて、リーダーシップの解像度を上げながら、適切な使い分けをするヒントを得られます。
ジェフリー・ハル
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リーダーシップは1つじゃない?

リーダーシップという言葉からどのような印象を得るでしょうか。命令形ではなく、威圧的でないスタイルのリーダーシップのあり方も最近では注目を集められはじめられています。たとえ、外向的な文化の中で生きているとしても、実は、内向型の人がおどろくほど、有能なリーダーとなる可能性をもちます。

リーダーシップのあり方を本書では、2つに分けています。1つは、アルファ。もう1つはベータと名付けれています。

アルファは勝利を希求し、ベータは成長を希求する。

アルファ型は、支配志向ベータ型は何度でも協力をして、分かち合い、関与しようとするリーダーのモードです。ベータ型のリーダーをアルファ型と同じようにフォーカスすることによって、絶え間なく変化する世界、すなわち「出世の階段をのぼりつめる」といった従来の成功が時代遅れに感じられる世界で、より効果的に舵取りをしようとする方向へのマインドセットの変化にほかなりません。

ベータ的に成長を志向しながら、ものごとのアップデートを進めていくマインドセットは、協力体制を作り、ひとりではできないことも行えるような連携を生み、さらには、柔軟な発想に基づいてイノベーションの種を見出すことも可能です。

例えば、グーグルが展開しているGmailという無料のメールサービス、これは、永遠のベータ版であると言えます。発表からこれまで長い期間をかけて、ユーザーエクスペリエンスを起点に、さまざまな機能拡充やUI/UXのアップデートを続けてきました。そして、Gmailはずっと完成がしないものであるかも知れません。これからも、さらによりよいサービスとして、顧客とともにそのニーズに寄り添った向上を続けていきます。

グーグルは完璧、つまり「アルファの状態」への到達を目指すのをやめ、改良し続ける方針に転換したのである。

完璧を目指すことも時に重要ですが、変化しつづける社会に中長期的な視点で寄り添っていくためには、自分たち自身も変化を取り込みながら、絶え間なくアップデートし続けられるようなリソースの配置やマインドセットの構築が欠かせないものとなるでしょう。

Gmailはずっとベータなのだ。

特に重要なのは、アルファ型やベータ型は人によって固定的に見られるのではなく、人が意識的にモードを選ぶことが可能であるということを意識してみることです。

必要なのは、強さと俊敏性を兼ね備えたリーダーシップ筋を鍛えながら、アルファでいくのか?ベータで行くのか、ときどきの状況に応じて、タイミングよく切り替えられるかどうかです。

特徴アルファリーダーシップベータリーダーシップ
意思決定トップダウン方式参加型、合意形成重視
コミュニケーション一方向的双方向的
権限集中型分散型、権限委譲
規律厳格柔軟
目標設定リーダーが単独で決定チームで協議
フィードバック批判的、成果重視建設的、プロセス重視
変化への対応保守的適応的
チーム構造階層的フラット
モチベーション外発的(報酬や罰)内発的(自己実現、成長)
アルファとベータリーダーシップの違い

2つの資質とは?

本書の中では、6つの資質思考態度(マインドセット)について、アルファ、ベータのリーダーシップの特徴を比較しながら、まとめてくれています。

6つの資質は、以下のとおりです。

1)柔軟性:焦点とスタイルを自在に調整する能力
2)意志力:集中力を持ってコミュニケーションを取る能力
3)感情的知性:感情をコントロールして効果的に使う能力
4)真正性:冷静沈着でありながらも謙虚さや弱さを魅せられる能力
5)協調性:実証済みの手法を用いてコーチング、メンタリング、エンパワメントを行う能力
6)積極体関与:職場のエネルギーをうまく調整してチームワーク、創造性、パフォーマンスを最大限に引き出す能力

アルファベーター
柔軟性:何かを決めるときの傾向権威的合意形成主義
柔軟性:活動するときの傾向マルチタスキング一点集中
柔軟性:グループの捉え方宣誓的探究的
意志力:ビジョンを語る事実重視物語重視
意志力:他者をやる気に分析的情緒的
意志力:自分の意向の表明戦略的(何を)意味(なぜ)
感情: 感情の扱い方データ主導直感的
感情: 何かを決めるとき合理的共感的
感情: 仕事をしているとき抑制的表現豊か
真正性:性格自信がある謙虚
真正性:オープンかどうか内に秘める開放的
真正性:リーダーシップ強い弱い
協調性:独立志向か協力か独立志向助け合い志向
協調性:権限の使い方デリゲーションエンパワメント
協調性:部下を導く方法助言コーチング
関与: やる気の原動力生産性重視創造性重視
関与: 職場環境について構造的流動的
関与: 仕事のスタイル高エネルギーバランスの取れたエネルギー
アルファ/ベータリーダーシップの違い

アルファ型とベータ型の特徴の善し悪しを判定していない。なぜなら、どちらが効果的かは状況によって変わるからだ。

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状況に応じた使い分けを?

それぞれのリーダーシップが効果的に機能するのは、特徴的なシーンや状況においてです。いまのチームの状況を知ることで、メンバーのいまに照らして、相対的な自分の役割を知ることが大切です。

以下のような着眼点で、今の状況を分析することでリーダーシップを選択できるようにしてみましょう。

アルファリーダーシップが求められる時:

  1. 危機的状況:迅速な意思決定と行動が必要な緊急時
  2. 組織の立て直し:大規模な改革や再構築が必要な時
  3. 新人や未熟練者が多い組織:明確な指示と指導が必要な時
  4. 厳格な規制産業:法令遵守が絶対条件の業界(例:航空、原子力)
  5. 軍事組織:命令系統の明確さが重要な場面
  6. 短期的な目標達成:迅速な成果が求められるプロジェクト

ベータリーダーシップが求められる時:

  1. イノベーションの推進:創造性と新しいアイデアが必要な環境
  2. 知識労働者の管理:高度な専門性を持つ従業員が多い組織
  3. 多様性の高い職場:異なる背景や文化を持つ人々が協働する場
  4. 変化の激しい市場:迅速な適応と柔軟性が求められる業界
  5. 長期的な組織発展:持続可能な成長と人材育成が重要な場合

有能なリーダーシップを発揮できる人であれば、基本的なリーダーシップOSを持っていると言えるでしょう。そのうえで上記のような状況に応じて、アルファ、ベータのスタンスを使い分けていくことにポイントがあります。

有能なリーダーが持っておきたいOS

1.権力を最大限に有効活用するというスタンス。
2.才能を評価し、育成するスタンス。
3.無関係だった人々を一致団結したチームに変えること。
4.有益で、なおかつ実用性のあるフィードバックを与えること。
5.安全な環境を醸成する(心理的安全性)
6.メンタリングとコーチングで自立力を担保する。

カール・ユングは、人間の成長は生涯続くプロセスであるとし、これを「個性化」と呼んだ。

私たちはそれぞれ自己の構築と解体を通じて、成人へ大人へ、そしてその先に無限に歩みを進めながら、成長をしていきます。生存のためには、帰属意識のもと生成される高い自我が必要出ると一見思われます。しかし、成長のためには、そうした自我を解体しなければならないかも知れません。

硬直、脆さ、破壊はすべて精神が変容しているサインです。変化に対してネガティブな印象だけを見出すのではなく、帰属意識だけに自我や自信を抱くようなスタンスではなく、個人としてどのように社会と向き合っていきたいのか、という個人のパーパスに触れるようなことについても高い認識を持つことでリーダーとしても、個人としても終わりのない向上・アップデートをすることが可能なのです。

人のあり方を考える時、こちらの1冊「【あなたは硬直型!?それとも、しなやか型!?】マインドセット:「やればできる!」の研究|キャロル・S・ドゥエック」も興味深い視点を提供してくれます。

まとめ

  • リーダーシップは1つじゃない?――アルファ型、ベータ型2つがあります。
  • 2つの資質とは?――アルファは権威的に、ベータは協力的にチームの力を引き出します。
  • 状況に応じた使い分けを?――状況を知り、リーダーシップを選択しましょう。
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