- どうしたら考えることを深めていくことができるでしょうか。
- 実は、批判的思考が大切かも知れません。
- なぜなら、それは自分の頭で考えるきっかけをもたらしてくれるから。
- 本書は、哲学的な考え方について学ぶ1冊です。
- 本書を通じて、何が自分の思考を鍛えてくれるのか、ヒントを得ることができます。

問いを重ねよう?
哲学的思考は、「思考のスキル」を身につけることにつながっていきます。使い方次第では、実用的なものにもなります。哲学的思考を、別の言い方をすれば、クリティカルシンキングという言葉が見つかります。クリティカルシンキングとは、批判的思考のことです。ここの批判的思考というのは、日本語の語感が持っているネガティブなものだけではなく、ニュートラルもポジティブも含まれます。
既存のものごとに対する考え方や、見方、常識と呼ばれるようなことについて、改めて検討してみるという姿勢が、哲学的であると言えます。
日常生活の中で、ふと感じる「モヤモヤとした気持ち」を忘れるために既成の考え方を流用して、自分をその枠に当てはめていくので良いのでしょうか!?それは、自分を生きているということにつながるのでしょうか。
「ただ1つの正解」など存在しないでしょう。だからといって、「モヤモヤ」にフタをし、思考を放棄してしまってもよい問いでしょうか?
ビジネスや毎日の現場で現れる、さまざまなモヤモヤの糸をひもとき、思考を前に進めるための思考を前向きに導入していきましょう。哲学というのは、そのように日常生活を生きる人が、「このモヤモヤの正体は何か?」「なぜ?」「いあにあるべきか?」を少しずつ考えてきたジャンルであるとも言えます。
哲学的にあるためには、欠かせないのが「問い」です。日常の中で、自分自身に「問い」かけてみましょう。そしてその時、「問い方」を変えてみるということが大切です。
「ほんとうの私は何をしたいんだろう?」というふうに問うよりも、
「そもそもほんとうの私なんて存在するのか?」と問う方が、どこか肩の荷が下りて、気負わずに柔軟な発想ができる人もいるはずです。
問いは、問いを生みます。
問いの前提や問い方自体を見直してみることで、思わぬ方向へ視点をずらしながら、考えるを前に進めることができます。
前提と背景をさぐれ?
どのような「問い」も何らかの隠れた前提や、思い込みを宿しているものです。
例えば、次のような問いを比べてみましょう。
A)事業の売上アップ(伸ばし方)についての問い
↓
B)事業の顧客(潜在顧客含む)の意識や利用理由についての問い
↓
C)そもそも、事業をなぜやるのか意味や理由についての問い
とある事業に関する問いの順番です。この順番で見つめていくと、まず売上向上という前提でものごとを見ていくことになります。BやCの問いも、売上UPのための手段であることが意識されるのです。
その一方で以下のような順番で問いが立てられている場合はどうでしょうか?
C)そもそも、事業をなぜやるのか意味や理由についての問い
↓
B)事業の顧客(潜在顧客含む)の意識や利用理由についての問い
↓
A)事業の売上アップ(伸ばし方)についての問い
こうして見つめて、比べてみると、下の問いの順番では、そもそも事業の意味や意志について検討をする結果、それを実現するための要素として、顧客との関わり合いや、結果としての売上獲得という前提で、他の問いに触れていくことが可能になります。
このように、問いというのは、順番によってもその意味合いが変わるものでもあるのですが、そもそもの前提条件によって、「問い」が目指そうとしているベクトルに縛りを与える効果もあるのです。
もっというと、Cの奥深くには、「人はいかにより良く生きるのか?」「より良く生きるということはどういうことなのか?」という普遍的な問いが横たわっていることも感じられます。
問題解決の前にかならず
「問い」で「問題の中心」を整理する
哲学的な思考を進めていく上で、大切なことは、まず「問い」を大切にすること。そして、その「問い」の背景についても、感じ取ってみることです。

他者とともに深める?
「幸せ」とは何でしょうか?「良さ」とは何でしょうか?それは一義的に決まるものでしょうか?
実は、私たちは例えば、「幸せ」や「良い」といった言葉をよく使うかも知れませんが、その内容について深く考えることはしません。なんとなくのイメージでそれらの言葉を運用しているのです。確かに、忙しい日常で、一つ一つの「言葉」の「意味」を検討していたら、社会が回らなくなりそうですし、結構疲れそうです。
でも哲学的な思考を導入して、よりよい考えの体質を身につけるためには、そうしたなんとなく使われている「言葉」の「意味」を再検討してみるアプローチはとても有効です。
たとえば、それは、企業の「理念」や「ビジョン」についても同じように言えます。あるいっとき、言葉を見出したとしても、それは当時の感性で生み出された言葉で、社会環境が変化している中で、言葉が持つ意味や背景も変わってくるはずです。その違和感を放置していては、会社組織をひとつにする目的のはずの、「理念」や「ビジョン」は有効に機能しないでしょう。
キーは、言葉の意味やその言葉に託した、内実を紐解くことです。解像度を一人ひとりが上げていくことで、自分の考えに引き寄せて、その言葉を取り扱えるようになります。
何もこうした思考を一人で行わないと行けないわけではありません。他者とともに深めていけばよいのです。
「他者の言葉に徹底的に耳を傾ける」こと。ときには、「自分自身の内なる声に耳を傾ける」ことです。
「問い」を他者と共有することによって、他者とともにその「問い」に向き合うことができます。他者の意見を聞いたり考え方を聞く、さらには、その背景や理由に触れていく中で、自分と同じこと、自分と異なることについて知ることができます。
ついには、自分自身の答えがなぜそういう考え方をしていたのか?という点についてまで、及ぶこともあり、それはつまり「自分との対話」を進めていくことにもなるのです。
以下のような問いの型をときには上手に使いながら、ものごとの「本質」や「意味」について仲間とともに掘り下げていく機会を持ちましょう。
- 理由や根拠を問う
- 「なぜ、**と言えるのか?」
- 「ほんとうに**なのだろうか?」
- 本質や前提を問う
- 「そもそも**って何?」
- 「**が成り立つ前提や条件は?」
- 別の視点や可能性を問う
- 「もし**だったらどうなる?」
- 「ほかにどういう可能性があるか?」
- 具体例や反例を問う
- 「たとえば?具体例をあげると?」
- 「すべてに言えるだろうか?例外や反例はない?」
- 違いや共通点を問う
- 「**と○○の違いは?」
- 「**と○○に共通していることはなんだろうか?」
- 論証の正しさを問う
- 「その推論には飛躍がないか?」
- 「さっき言っていた**と矛盾していない?」
問いを深めていく方法論としては、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」の哲学対話もぜひご覧ください。

まとめ
- 問いを重ねよう?――問いが、新しい問いを生み出します。
- 前提と背景をさぐれ?――「問いが纏うベクトル」こそが実は大切です。
- 他者とともに深める?――自分の根本に触れるきっかけを他者が提供してくれます。
