- どうしたら、よりよい思考のもと、他者と共に働くことを、見出すことができるでしょうか?
- 実は、哲学的思考にヒントがあるかも。
- なぜなら、哲学的思考は、一貫性、伝達、理解、創造それぞれの力をもたらす問いを起点とするものだからです。
- 本書は、そんな哲学的思考とは何か、どのように使うのかを説く1冊です。
- 本書を通じて、仕事、人間関係、人生のあらゆる悩みや迷いに効く視点を得ることができます。
哲学的思考とは?
哲学的思考といっても、本書の中で取り扱われるのは、いわゆる哲学者が語るような内容ではありません。哲学の概念を広げて考えてみましょう。哲学とは、ものごとに対して批判的に、かつ、創造的に向かい、問いを立て、それに対して答えを探索し続ける行為です。そう考えてみれば、哲学的に難しい言葉を使わずとも、日常で感じる疑問やモヤモヤについて、考える行為も含まれることに気づきます。
哲学的にものごとを捉えてみつことは、つぎの4つの力に効きます。
- ぶれない力:自分だけのぶれない軸を身につけることができるでしょう。
- 伝える力:自分の頭で考え、自分の言葉で伝える方法を身につけることができるでしょう。
- 理解する力:自分とは異なる意見を深く理解する視点を身につけることができるでしょう。
- 生み出す力:問題を深く理解し、新しい価値を生み出す心が目を身につけることができるでしょう。
これらの力は、「問い」によってもたらされます。
「問い」とは、日常的に感じるような違和感や、モヤモヤを言葉にしたようなことです。たとえば、なぜ人は仕事をするのか?とか、幸せってなんだろうか?とか、そういう答えがありそうで、一つでなくて、自分で考えるほど、わからなくなっていくようなことについての出発点です。
こうした問いについて、日常的に考えなくても、対して問題は起きません。なぜなら、社会や他の誰かが、問いに対する答えを「当たり前」や「常識」として用意してくれているからです。でも、そうした誰かの答えを生きていることは、自分の人生との向き合い方を検討するチャンスを逃します。
自分で感じたことや考えたことを大切にしていくと、自分で自分の人生を解釈できるようになり、それが積み重なることで、主体的にいまここについて幸せを感じることができるようになるかもしれません。
自分自身が自分の言葉で、経験で、環境で考え語ること、そして自分の考えをどんどん変えていく必要があります。「哲学思考」では、それを目指していきたいのです。
だれかの言葉でなく、自分の考えにもとづき、「問い」に向き合ってみることから、新しい世界観が広がっていくのです。
批判が創造を生む?
哲学的に考えるというアプローチが最終的に目指しているのは、「自分の軸」を作りあげていくことです。それは、すなわち、「自分や世間にとって当たり前となっている考え方を疑い、自分なりに再構築すること」によります。
世の中「わかりやすい」ことが歓迎されるムードがあります。企画書とか、考え方とか、志とか、さまざまなことが「わかりやすい」ことを理由に評価されているような風潮です。でも、「わかりやすい」というのは、いつでも価値になるでしょうか。
反対にいうと「わかりにくい」ことは価値がないのでしょうか。
実は、「わかりやすい」 or 「わかりにくい」という2分論でものごとを見続けていくこと自体が、自分のあたまで考えない行為につながっているかもしれません。他にも実は判断軸があるはずです。その都度の状況や、シーン、あるいは、自分の感じ方にあわせて捉え方は変わるはずなのですが、「わかりやすい」という自分や他者にとっての「通りの良さ」だけを見つめていく弊害は大きいものがありそうです。
自分をないがしろにしてしまうという点です。自分も他者も一緒で、自分の感性や考えを否定することにもつながってしまうかもしれません。世間一般というありそうでないような、ふわふわした存在に自分を覆い隠してしまうことは、なんとももったいないことです。
哲学思考では「わからない」状態を肯定します。わからなくていい。大切なのは、それに「しがみついてみる」忍耐力です。
いまや、アップルやグーグルという世界的企業は、社内に哲学者を抱えて、仕事によりよいフィードバックとなるように、従業員との対話を続けているようです。
社内哲学者たちとの対話を通じて、次のような「問い」に対して向き合い続けているといいます。
- コンプライアンスや倫理規定だけでなく、ミッションやビジョンを強固にしたい。
- 商品やサービスの価値を高めるためにコンセプトや学問的な裏付けが欲しい。
- 哲学対話を通じて、職場環境やコミュニケーションを改善し、離職率を下げたい。
- 自社事業に役立つ哲学の知識や哲学思考について、研修や講演による従業員のアップデートをはかりたい。
答えがひとつに収斂されない時代だからこそ、仲間とともに考え続けていく心構えと方法論を手に入れることはとても重要なことです。
本当は考えたいことがたくさんある。
一見よくわからないことでも、よくよく解像度をあげていくと、それは実はとても大切な「問い」につながっていることもあるかもしれません。そうしたことに、一人ひとりが生きるヒントを、企業組織が存続のヒントを見出し続ける時代であるとも捉えられるのだと思います。
哲学思考は開く?
哲学的思考を、別の言い方をすると、「批判的思考」「創造的思考」の合体であると捉えられます。
批判的思考、というと、日本語の語感から、どうしてもネガティブな方向性を連想してしまうのですが、必ずしもそうではなく、既存のものごとや解釈に対して、それを「いったん疑ってみる」という視点のことです。
他者や世の中への好奇心が増す
他者や世の中に対する興味関心が起点となって、こうした批判的思考を持つことができるようになります。批判的とはいえ、それは、絶えず関連を持ちたいという、「ポジティブな気持ち」をよりどころとすることがわかります。
本当に何かを知りたくなったなら、自分の不完全で限界のある思考より、他者の見解に耳を傾けてみたい、他のことももっと知りたいという気になるからです。
哲学的思考を進めていくことは、他者とのつながりを再構築して、改めて大切にするという行為でもあるということです。「考える対象」に対してだけではなく、「他者」や「世界そのもの」に対する関心や好奇心が芽生えてきます。
常に「開かれていること」こそが、哲学で最も大切なことなのです。
情報革命と言われる世界でも、それでも答えが出てこないものはたくさんあります。そして、そうしたカテゴリーに該当する「問い」こそが重要であるとも言うことができるでしょう。
自分の頭で考える苦労を知り、限界を感じ、それでも「問い」に向き合うために、「他者」と共に考える行為を繰り返していくことが求められるのです。
哲学では「ググってもわからないこと」を考える
哲学的思考によって、新しい概念や言葉、価値を創り出していきます。それを技術やシステム社会規範として適用することで、社会は維持され、そして変化を続けていくことができます。
もしかしたら、私たちの根本的な「問い」から社会が作られていると言っても過言ではないでしょう。
- 私たちの認識は本当に正しいのか。
- 善悪の境界はどこにあるのか。
- 神は存在するのか。
- 美しいとはどういうことか。
単一の答えや統一した答えではなく、「問い」続けていく自体が、実は答えになっていくような、そうしたジレンマに陥りそうだけれど、実は本質的なことに気づかせてくれるようなヒントを、哲学は与えてくれます。
次回の投稿についても、さらに哲学思考の特徴についてフォーカスし続けてみたいと思います。
また、哲学思考については、こちらの1冊「【人との出会いを大切に!?】はじめて考えるときのように 「わかる」ための哲学的道案内|野矢茂樹,植田真」もぜひご覧ください。
まとめ
- 哲学的思考とは?――当たり前や常識と言われているようなことでも、根本的なことについて考え続ける姿勢です。
- 批判が創造を生む?――自分や世間にとって当たり前となっている考え方を疑い、自分なりに再構築することです。
- 哲学思考は開く?――「問い」を持ち続けていくということは、自分を開くことに繋がります。