【行動が、問いを生む!?】問う方法・考える方法 ――「探究型の学習」のために|河野哲也

問う方法・考える方法 ――「探究型の学習」のために
  • どうしたら、教養をいかすことができるでしょうか。
  • 実は、哲学的な考え方がよいかも。
  • なぜなら、哲学は「全体を回復する知」だからです。
  • 本書は、哲学的思考のための1冊です。
  • 本書を通じて、どのような思考が、教養を活かすための知の分断を解消するアプローチになるのかを知ります。

学びとは?

学びとは、何でしょうか。

自分の人生で、今何をすべきなのか、どうすれば自分の目標を達成できるのか、どういう人生が幸せな人生なのか。自分にとって何が課題なのかを発見し、それがどうすればよくなるのか、その解答を見つけていく。これが本当の勉強のはずです。

こうした学びを続けていくためには「探究型」の学習がもっとも重要になるはずです。探究型の学習というのは、自ら問いを立てて、それに対して現状を分析して、新しい発見や内容をまとめて結論をアップデートしていく方法です。学校で勉強している人だけではなく、社会にすでに出ている人にとっても、とても大切な学びの機会を提供してくれます。

これからの社会は、「研究すること」と「生きていくこと」が分離できない社会になっていきます。仕事(働くこと)と探求・研究の結びつきは今よりも強くなっていくと思われます。

人生の中では、数多くの課題と出会うことができます。それを既成の考え方を借りてきて答えを出して、なかったことにすることは可能です。でも、それでは、いつまでたっても、自分で覚えた違和感やモヤモヤを解消しないままです。頭では理解しているけれど、身体は解決していないことを抱えたままでは、なにか釈然としません。

私たちが、自分自身であるためには、思考と感覚とが一緒であることが大切のように思います。身体で感じたことをないがしろにしないで、思考できるように、ものごとの探求を深めていくことが、「自分を生きた」ということにつながっていくのではないかと思われます。

これまでの社会よりも、自由に人生を選べるような雰囲気を感じます。大学を出て、一度就職してしまえば、生涯その企業で終わる・・という人生観はすでに昔のものになっています。仕事をかえたり、パラレルで行ってみたり、あるいは仕事の範囲も必ずしも対価を得るだけの考え方から、生活そのものへと拡張しています。こうした時代背景の中で、「何者か」ではなく、「何を学んでいるのか」がフォーカスされるはずです。

「何者か」というのは、例えば、**大学出身とか、**株式会社の**部長とか、そういう肩書のことです。これは過去です。これからの時代は、むしろいまここで、何を突き詰めようとしているのか、そのためにどのような学びを積み重ねてきているのかということが問われているように思えます。

人と人が連携する時に、その人の実態を表すものとして、学びの蓄積とベクトル、そして今現在の活動が求められるのは、当然です。なぜなら、所属や属性では、とうていわからない「その人」の特性は、学びの活動によって養われていくためです。

学びを積み重ねていくためにも、問いを持ち、それに対して、自分の頭で考える習慣を持つことです。

全体性を取り戻そう?

探求や、哲学的な考え方は、ひとつのものごとをさまざまな視点から検討させてくれます。典型的な例が、常識についてでしょう。常識や当たり前と処理されてきたことについて、哲学はそれは、本当なのか?唯一の真実なのか?と、批判的かつ創造的に問いかけを好みます。

実は、当たり前や常識として考えられていたことは、背景や環境が変われば、すぐに揺らいでしまうことに気づきます。想像しやすいところでいうと、文化風習でしょうか。とくに海外へ足を伸ばしたときに、自分の国や毎日がとても異質なもののように感じたり、あるいは、相手の文化の特徴に気づいたり、いかに自分が「いつもの空気」の中で、意識することなく過ごしていいたことに気づくことができます。

いろんな階層で、いろんなものごとについて、そうした新しい見方というのは、存在しています。そのことに気づき、意識してみることで、問いをアップデートして、考え続ける原動力になります。

「教養」の重要性がいま、フォーカスされています。なぜなら、現代はあまりに学問や学びが細分化されてしまって、その狭く深い専門性の中に奥深く入っていくことで、他のものごとに俯瞰的になることが難しくなっているからです。人の営みは、学問や学びの領域に規定されないものであるはずです。文系理系という区分がなくても、人は確かに生きていけるし、人生の苦労や楽しみは存在します。

現代社会では、専門性が進んでいるからこそ、ひとつの事柄をさまざまな視点から検討し、他の分野や一般社会と関連づけて考える力が必要とされています。それが教養と呼ばれるものです。

さまざまな学問や学び、専門性やバックグランドを持つ人との対話がこれまで以上に価値あるものとして認められていくようになるでしょう。対話を通じて、前提を疑いながら、新しいものごとの見方を見つけながら、全体性を回復していくような試みを試していきたいものです。

問題はより複雑です。例えば、「働き方を改革する」ということを考えてみましょう。

重要となる視点は次のようなことがあげられるでしょう。

  • 生産性の向上
  • ワークライフバランス
  • 多様性の尊重
  • テクノロジーの活用
  • 人材育成
  • やりがい・いきがい・充足感

などなど。そして、すぐに気づくことはこれらの論点は、さまざまな専門分野が紐づいています。特定の領域だけで解決しようとしても、それは、根本的な問題解決に到達しないことに気づきます。

そもそも、「働き方」とはなにか?それを改革しようとしているのはなぜか?という、原点となる問いも大切かもしれません。誰のための何なのかを検討せずに、いきなり手段をあげたところで、意味を持たなくなるからです。

一律的なアプローチ、短期的な視点、テクノロジー偏重、だれかの押しつけ、成功論の過度な真似などが、結果として見出されて、何も本質的には解決しないような状況を作ってしまっては、もったいないです。

まずは行動してみることから?

探求とは、知の連鎖、統合であるとも言えそうです。

学校で学んだこと、他の専門性、他の人の考えなどに触れて、統合して答えを出していくようなアプローチです。一見、互いに関連しそうもないようなことがらが、つながる中で、新しい価値が見出されることはよくあります。

例えば、以下のようなビジネスの創出においてもそうです。

  • Uber (ウーバー):スマートフォン技術、GPS、決済システム、そして個人の車を組み合わせて、革新的な配車サービスを生み出しました。
  • Airbnb (エアビーアンドビー):空き部屋、インターネット予約システム、そして旅行者のニーズを組み合わせて、新しい宿泊サービスを創出しました。
  • ナイキ+ (ナイキプラス):スポーツウェア、センサー技術、スマートフォンアプリを組み合わせて、パーソナライズされたフィットネストラッキングサービスを開発しました。
  • ネスプレッソ:高級コーヒーとカプセル式マシンを組み合わせて、家庭で簡単に本格的なエスプレッソを楽しめるシステムを開発しました。

社会課題、人の行動やニーズ、テクノロジーなどを専門性で閉じることなく横断して考えていくことで、ビジネス創出のヒントを見出すことができるかもしれません。

何もビジネスのアイデアに結実せずとも、自らの頭で社会や世界、人生という壮大なテーマについて問いを持ち考え続けていくことは、前のめりの自分になり、せっかくの時間を豊かにしようとする気持ちを高めることができそうです。

人は、どんな時に、「学ぼう」とするのかですが、2つの大きな動機があります。

  • 「世界がどうなっているかがわかりたい」に応えるための見取り図が欲しい!と思ったとき。
  • 「何かができるようになりたい」に応えるための発想を覚えたとき。

また、これらの動機は互いに関係し合います。「何かができるようになる」ためには、先人の残した見取り図が役立つでしょう、さらに「何かができる自分」が、見取り図を更新することだってあります。

自分が上記のような強い動機をおぼえるためには、最初の1歩目として、「経験」が必要です。

それは、まさに何かをやってみたり、あるいは、だれかが何かをやっているのを見たりして、それが苦しみを取り除き、楽しみを与えてくれているのを知る経験から生まれます。

学びとは、自らの衝動に近い、発露によって、行動をしていくことから、世界との関わりの相互関係の中で、より強化されていく行動です。

自分の衝動を抑えることなく、まずはなにかにトライしてみる、そのことを続けていくことで、考えるは自ずとついてくるのかもしれません。そして、学びというのは、生きている限り常にできることを知り、それこそが生涯の課題なのであると認識してみることも、人生を豊かにしてくれる心構えになっていくのかもしれません。

衝動の可能性については、こちらの1冊「【自分を「型」から解放するには!?】人生のレールを外れる衝動のみつけかた|谷川嘉浩」をぜひご覧ください。

まとめ

  • 学びとは?――自ら問い、人生や世界に関わるものごとをつなげていこうとする力です。
  • 全体性を取り戻そう?――専門性の中の安らぎではなく、横断的な冒険へと身を置いてみましょう。
  • まずは行動してみることから?――他の人の行動の結果が刺激となり、自分の動機になります。
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