【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也

ゼロからはじめる哲学対話
  • 不確かな世界をどうやって生きていくのが、よりよいでしょうか。
  • 実は、問いを元に、自分と他者と交わることに多くのヒントがあるかも。
  • なぜなら、自分で考えることに繋がるから。
  • 本書は、そんな考える活動である「哲学対話」について知る1冊です。
  • 本書を通じて、「哲学対話」の内容と方法を知ることができます。
河野哲也
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「哲学対話」とは?

インクルーシブというコンセプトが社会で語られ始めています。一人ひとりの本来持つ多様な特性を、認め、活かすことが、組織や社会がよりよくみなにとって生きやすくなるという考え方です。その場においては、個人を能力や特性で過剰に線引することを避けて、関係性の中で、新しい可能性を見出していくようなアプローチがとられます。

多様な人が積極的に社会に参加していく在り方がこれからの世界線です。会社では、単に指示に従っているだけではなくて自らの意志やパーパスに沿って、主体的な取り組みを作っていったり、あるいは、他者と関係性を持ちながら、協働の中に自らの立ち位置を見つけていくような取り組みが歓迎されていくでしょう。

こうした個人のマインドや集団を作っていくためには、対話が欠かせません。対話というのは、相手ととのコミュニケーションを通じて、自分を知り、相手を知り、そして問題を共有しながらつながりを作っていく営みです。会話のそれとは大きく異なり、本当の対話には不安定でも創造的で、前に進む力がこもります。

対話をする場を組織が持つことができれば、そのために心理的安全性を整えることから始まり、対話によってさらにその安全・安心が深まり、さらに、自分のことや他者のことを知ることによって、一緒に働くことの理由を見つけやすくなります。

そのような集団を作るのに一番有効な方法が、哲学的な対話を行うことです。

対話を一歩深める方法論が、本書のテーマである「哲学対話」です。

「哲学対話」とは、哲学的なこと=日常的にひとりひとりが感じる違和感やそもそも的なことを、みんなでフラットに話し合い、互いにいろいろな答えや理由に触れて、触発を受けていく行為です。

問いとは何か?

「哲学対話」には、特徴があります。

まず、「問い」が先立つということです。「哲学対話」にはテーマや問いがあり、それにもとづき自分の考えを深め、他者の意見を聞きながら、考えを深めていくことを目指します。逆に参加者はそれ以外の情報(例えば、自分の属性とか、職業とか)を話さなくてOKです。むしろ話さないほうが良いとも言えるかもしれません。

互いの職業、地位、履歴、人柄、名前すら知らなくても、テーマや問いを共有していれば、哲学対話は成立するし、その方がよい哲学対話になることがあります。

「哲学対話」ではありとあらゆることが問いとして設定することができます。しかし、取り上げられる問いの特徴をまとめるとすれば、それは「当たり前のことをあえて問う、問い」ということになるかもしれません。

  • 幸せとは何か
  • なぜ善悪の区別があるのか
  • 自由であることはよいことか

などなど、「幸福」「善悪」「自由」などの言葉をみんなが理解して、共有していると思っていますが、本当にそうでしょうか?実際に言葉で認識する世界観や、その理由は人によって異なります。こうした違いを認識しながら、そもそもに迫っていくのが「哲学対話」の特徴でもあります。

さらに「哲学対話」では、答えを出したり、ましてや「ひとつの答え」に修練させることを目的としないということも特徴としてあげられます。

答えが出そうもない問いを、ゆっくり、じっくり考えることは、その結果がどうであろうと、それ自体が大切なことだからです。

日頃の生活の中で、当たり前だと思っていたことが、そうでなかったと知り、そして、その「わからないこと」を共有していくことにこそ意味があります。

答えが出なかったとしても、「わからなさ」を抱えてその後も生活をすることで、粘り強く考え続ける、たくましい思考の態度が育っていきます。

そして、こうした態度を通じて、自分と相手が変わっていくことを「哲学対話」では目指します。自分の考えをかえる自由がなければ、「哲学対話」は成り立ちません。人々と言葉を交わす中で、自分の考えが変わっていく経験ができること、これが醍醐味です。

自分が当たり前だと思っていたことを、疑い、そして「わからないこと」が増えて、そのことで、考えざるを得なくなってしまった状態を歓迎することができれば、自分の目で世界をみて、考えていくことができるようになるかもしれません。また、そうした体験を他者と共有することによって、考えるという営みが、自分の孤独ではなく、他者にもありうる孤独であるということに触れ、ちょっとした安心感を持ちながら、考えることを深めていけます。

自己変容については、こちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」も大変、刺激的です。ぜひご覧ください。

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「哲学対話」の利点とは?

「哲学対話」を行うことで、いくつかの利点を得ることができます。

1.多様な人々の共生を目指すことができる。
2.風通しの良い社会を目指すことができる。
3.まともな集団的意思決定を目指すことができる。

人は、一人で生きていくのではなく、他者とともに生きていきます。誰もが知っていることですが、当たり前のこと過ぎて、少し忘れがちになってしまうことでもあります。対話を通じて、他者と答えのでないような問いについて考えるという態度が共生に向けたスタンスを見出すことができます。

人と異なることがなぜだかネガティブに捉えられてしまうような社会があります。「空気を読む」などという言葉がありますが、自分のことについて明確に発言することがはばかられるようでもあります。

「個人的には・・」「個人としては・・」というような前置き言葉が、最近たくさん聞かれるようになってきました。みんな恐る恐る発言をしているのです。

そんな息苦しさを和らげて風通しのよい社会を築くことに「哲学対話」は貢献します。

問いを封じるのではなく、問いを歓迎する文化、自由に、率直に、語り合うことを楽しむ文化、互いに聴きあい、理解し合おうとする文化、互いの意味を吟味しながら、さらに納得のいく意見を作ろうとする文化……そのような文化のある社会は、どんなに風通しがよく、居心地がよく、生きやすいことでしょうか。

熟考は、それが大切なことになればなるほど、「哲学的な」思考に近づいていきます。人の生き方、会社の在り方、人といっしょにいること(社会)、などなど、根本的な問いを避けては、私たちが生きるビジョンを見出すことは難しいのかもしれません。

「哲学対話」を通じて、大切な問い、でも、難しく答えの見いだせない問いについて、考え続けていく、共に考えていくという態度を見出すことができるようになります。

また、次回の投稿でも「哲学対話」について、深く触れてみたいと思います。「哲学対話」は、多様な時代を生きる私たちにとって、とても可能性ある活動であると思います。

まとめ

  • 「哲学対話」とは?――そもそもを共に、問い続ける態度を養う活動です。
  • 問いとは何か?――普段「当たり前」としていることです。
  • 「哲学対話」の利点とは?――人と共に、考え続け、多様性を認め合う態度を育てます。
河野哲也
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