- 考えることを、考えるときのヒントはどこにあるでしょうか!?
- 実は、モデルを想定してみることかもしれません。
- なぜなら、モデルは人の考える枠組みだから。
- 本書は、ものごとの大切な部分を掴み取るための1冊です。
- 本書を通じて、モデルを用いて考えるためのヒントを得ます。
モデルとは?
本書でいう「モデル」とは、考える対象となるものごとを吟味して大切な要素のみを選び出し、選び出された要素どうしの関係性を見出すことによって、現実のまねごと(模型)をつくることです。
このモデルを作るときに、当事者の目的を達成する枠組みとしてうまく機能するように作ることができれば、役立つツールになります。
私たちが、目の前のものごとを考えるときには、それをそのまま捉えることは不可能です。世界は複雑で、あまりにも多くの要素同士が関係して存在しているからです。いまだに、きままに動き回る台風の予測は難しいし、マーケティングのモデルだって、それを作ること自体が大仕事過ぎて、本来の顧客に価値を届けるということを忘れがちです。
それだけ、世の中というのは複雑に成り立っているということです。
だから、私たちはものごとについて考えるときに、目的にあわせて、要素を取り出し、シンプルな関係性を描写して、考えるための小さな箱庭を作ります。要素のことを著者・栗田治さんは、部品であるといいます。重要な部品を組み合わせてつくった世の中を目的に合わせて代表するモデルを、触っていくことで、世の中を簡易的にとらえ、考えることができるようになります。
そういえば、プラモデルという言葉があります。これまたプラスチック製の部品を組み立てるおもちゃ、模型ですが、何分の1かのスケールで、本物を手元に引き寄せて取り扱う様子は、まさにモデルです。
「誰のために」「何のために」という目的を伴っている、ということです。
モデルには、必ず目的があります。
- 組織の利益を大きくするために
- 人々の安心・安全のために
- 家計を維持するために
- 自らの喜びを大きくするために
などなどの目的を伴って、要素を選び出し、組み合わせていく必要があります。そうでなくては、変数があまりに増えすぎて、シンプルなモデルになりません。シンプルでないモデルは取り扱いがとても難しくなってしまいます。
モデルは、ファッションで捉えてみるととても身近に感じることができます。
例えば、TPOのコーディネートを検討するという目的で、ファッション=トップス+ボトムス+アウター+靴 という関係式を見出してみましょう。
すると私たちは、4つの要素(トップス、ボトムス、アウター、靴)を上手に組み合わせることが、TPOに即したファッションを構成するということを理解し、変数を検討することができます。
モデルの作り方とは?
3つのステップでモデルを作り、取り扱いましょう。
1)ものごとの大切な部分だけを取り出して部品をつくります。
2)部品同士の関係を論理的に突き止めます。こうして突き止めた式がモデルになります。
3)理解し、目的のために、役立てます。
モデルを作り活かすハイライトは、ステップ1にあります。複雑な世の中から大切な要素を抽出するということがとても重要だからです。
モデル志向というのは「捨てる技術」なのです。
モデルを作り出すメリットは、次のようなポイントで説明できます。
1)モデル分析の多面的な方法を理解して、意識して用いれば、思考の幅を広げることができる。
2)学問を修めるプロセスにおいて、自分がどのようなタイプのモデルを学んでいるのか触れることができる。
3)研究を行う上で、自分の立ち位置を意識して、さらに変えていくことができる。
4)文化系の人が、理科系のモデル分析の要諦を理解することで、その典型的な方法を役立てられる。
5)理科系の人が重要な文化系(社会学領域)の概念を理解することで、人間の特性を読み間違って考える恐れを減らせる。
モデルに触れ続けることによって、「いったい、どのようなモデル分析によって導かれたのだろう?」と思考をさかのぼることができるようになります。このことによって、抽出するべき要素の点検や、関係性の問題点などについて、指摘することで、新しいものごとの捉え方や考え方について、示唆を提供することが容易になります。
モデルは世の中にに存在する複雑な減少から、一般的な法則や命題を導き出したり、事実を関節整理してわかった要素同士のなかから、新たな「正しいと思われること」を見つけ出すものです。
モデルは目的次第?
目的にあわせて、モデルを設定する段階で、4つのフィルターをどのように働かせるかで、異なるモデルを出現させることになります。
1)どのような論理を用いるか
2)対象物の、どの側面を明らかにすることを目指すか
3)どの程度の緻密さで記述するか
4)時間によるフィルターをどのように設定するか
もでるをこしらえる営みは一種の「アート」ですから、その有りようは千差万別です。
モデルは目的を持つということを意識することが大切です。そして、その目的自体も見直し続けることが大切かもしれません。誰の、何のためのモデルなのかを絶えず検討することは、モデルを通じてものごとを捉えるとき、欠かせない視点になります。
なぜなら、モデルの中でものごとを捉えているとそれが、世の中すべてを説明するように捉えられてしまって、なにか他に大切で検討するべき要素がないかどうか、見つめることを蔑ろにしてしまうこともあるからです。
例えば、離島に居住する人の暮らしやすさのためにさまざまな交通手段を検討するモデル式を見出したとします。その中で、もっとも安く、安全で、利便性の高い手段として「橋の建設」という答えを導いたとします。
確かに「橋」は、離島の人にいつでも本島との間を往来できる利便性を提供することができます。一方で、不利益と捉えることもできるできごとを招きます。
例えば、地元の商店街が需要を本島のチェーン店に取られてしまって、衰退してしまったり、本島に居住地を移し離島の文化が衰退してしまったりと、橋をかけたことが、予想しなかった結果を生むこともあるのです。
このように、立派なモデル分析に基づいて進められる大きなプロジェクトが、別の問題の所有者を切り捨てる恐れをもつことを、為政者は知らねばなりません。
モデルとは目的合理的な思考を下支えするために不可欠なツールでありながらも、目的やその要素次第では、大きく判断を誤る可能性を秘めていることにも注意が必要です。思考のための「モデルリテラシー」という概念を念頭に、モデルを上手に活用していきたいと思います。
目的を検討するために、あるべき姿(ありたい姿)を最初に描いておくことが大切なのかもしれません。
上記の例でいれば、離島の住民の利便性とは具体的にどんな状態を言うのか、現在、どんな具体的な問題が起きているのか、あるいは、そもそも既存の解決策は機能していないのか、などをあらかじめ問うておくことで、起点となるモデルの在り方からして、より良く検討することができそうです。
同じようにモデルを通じて、ものごとの本質にアプローチすることを示唆する1冊としてこちら「【モデルとダイナミズムを見つめよ!?】本質思考:MIT式課題設定&問題解決|平井孝志」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。
まとめ
- モデルとは?――複雑な世の中を扱いやすくするための関係式のことです。
- モデルの作り方とは?――要素を抜き出し、関係性を見出し、式(システム)とすることです。
- モデルは目的次第?――目的に応じてモデルはさまざまな答えを導びくことができます。