- 私たちは、どうしたら幸せで、豊かな人生を歩むことができるでしょうか。
- 実は、企業にとっても重要な考え方、自画像を描き、その目標に向かって実現のため尺度を運用していくことが参考になりそうです。
- なぜなら、企業も人も、豊かさを求めていく本能を備えているという点では同じだから。
- 本書は、あのクリステンセン教授による人生のための授業です。
- 本書を通じて、人生を豊かに経営するためのヒントを数多く得ることができます。
人生を経営せよ?
クレイトン・クリステンセンは、経営学の世界に革命をもたらした思想家として知られています。ハーバード・ビジネス・スクールの教授として長年活躍し、「イノベーションのジレンマ」という概念を提唱したことで広く認知されました。
1992年にハーバード・ビジネス・スクールの教授に就任して以来、革新的な教育者として名を馳せました。彼は「イノベーションと一般経営」コースを担当し、その授業は学生たちの間で最も人気の高いものの1つとなりました。
教授の独特な教育スタイルは、理論と実践を巧みに融合させ、学生たちに深い洞察力を培わせることで知られています。また、ケーススタディ方式を用いて、学生たちに実際のビジネス課題に取り組ませ、創造的な解決策を見出す能力を養成しました。
さらに、クリステンセンは多くの博士課程の学生を指導し、次世代の経営学者の育成にも尽力しました。彼の指導を受けた多くの卒業生が、今日、世界中の一流企業や学術機関で活躍しています。
彼の理論は、成功している大企業が新興企業に市場を奪われる現象を説明し、ビジネス界に大きな影響を与えました。クリステンセン教授の洞察は、テクノロジー産業だけでなく、教育、医療、そして個人の生き方にまで及び、多くの人々の考え方に変革をもたらしました。
彼の著書は世界中でベストセラーとなり、今日も多くの経営者や起業家に影響を与え続けています。
そんな彼の著書から本日は、こちらの1冊『イノベーション・オブ・ライフ:ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』をご紹介したいと思います。
日頃は、経営の理論を説くクリステンセン教授ですが、本書では、企業と人生をシンクロさせながら、ものごとの道理に触れて、豊かな人生を送るための視点を数多く示してくれています。クリステンセンさんは、自らが教えた生徒がよりよい人生を歩むことを願い本書を執筆したと語っています。
それだけ誰にとっても、人生を考えていくことは重要な課題であるということです。それが、たとえ、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業したごく一部のエリートと呼ばれる人であってもとても難しい課題となります。むしろ、エリートかどうかということよりも、なにか別のファクターが豊かな人生を左右することは確かなようにも感じます。
人生の根源的な問題を手軽に解決する方法など存在しない。だがわたしに与えられるものがある。それは、人生の状況に応じて賢明な選択をする手助けとなるツールだ。
私たちが心から満足した人生を送るためには、まず「心から素晴らしいと信じる仕事」をすることが重要でしょう。自分が愛する仕事を選択し、心を込めて実施することで、私たちは自分が理想とする形で社会と関わることができるようになります。妥協をするのではなく、心の問題と同じで、そういう仕事が見つかれば、人生んいついてもピンとくるようになります。
上記は、アップル創業者であるスティーブ・ジョブズが語った言葉です。
私たちは絶えず予期せぬ結果をもたらす流動的な環境の中を生きています。脅威とも取れるし、機会ともとれるその中で、希望を見失わずに、何が起きてもそれを常に主体的に解釈をして乗り越えていく力を養っていくためには、日頃から、そうした環境と積極的に関わりを見出すスタンスが重要です。
そのためには、自らが愛する仕事をいかに見つけていくか、が重要になります。仕事は既存のものでもいいし、自ら作ってもいい、もちろん、家事や育児などのホームケアでもいいかもしれない。でも重要なのは、自分がそれに対して愛情を注いで、どんなときも前向きにトライできるなにかが必要であるということです。
資源配分を検討せよ?
資源配分という点でも、人生と経営はリンクします。限られた時間・お金・ものをどういうふうに配置していくかで、結果がガラリと変わってきます。また同時に、何をどれだけ配置するかについて検討するためには、ビジョンや思想が不可欠です。
1日1日を過ごしながら、正しい方向へ確実に向かっていくには、自分の資源がどこに流れているのかについて、注意を払うことが大切です。
資源配分の方法が、自分の決めた戦略を支えていなければ、その戦略を実行していないのと同じだ。
生きるべき方向性や、あるいは、思想を見つけたならば、それにふさわしい資源配分を1日1日積み重ねて行うようにしましょう。自分自身が望み通りの人生を送れるか、意図したものとはかけ離れた人生を送るかは、自分の資源をどのように配置するかで決まってくるのです。
企業戦略とは、すなわち限られた資源の配置にほかなりません。人生を経営する視点で、自らの資源を棚卸しして、1日の間になににどれだけ配置しているのかについて検討してみましょう。
資源の中でも特に重要なのは、時間です。時間をないがしろにしてしまうことは、すなわち人生をないがしろにしてしまうことと、等しいといっても過言ではないでしょう。自分の時間が何にどれだけ使われているのか点検することをおすすめします。
3つの視点で時間を分析してみるとよいでしょう。それは、必要な時間を使う「消費」、未来のために時間を使う「投資」、そして、ムダな時間の使い方「浪費」です。浪費をゼロにすることは難しいかもしれませんが、「いま浪費をしているなぁ」と意識しているかいなかでは、中長期的に時間に対する感覚が全く異なってくるでしょう。
時間の投資に関する論点については、こちらの1冊「【時間を、信頼の貯蓄に変える!?】投資思考|野原秀介」もぜひご覧ください。
アマル・ビデ教授は、著書『新規事業の起源と進化』のなかで、「最終的に成功した企業の93%が、当初の戦略を断念していた」と指摘しています。つまり7%のみが、当初の戦略通りに成功をおさめたということになります。企業も、人生も、当初の想定通りに行くことの方が少ないのです。むしろ大切なのは、見直し前提で、資源配分の余力をどう残しておくかということでしょう。
見直しをしよう!と思い立ったタイミングに資金をはじめモチベーションや体力、時間などの資源が乏しくなってしまっていれば、成功へのハードルを高めてしまいます。
自画像、信仰、そして、ものさし?
自分自身がどのようなカルチャー(文化)を醸しているか、についても知ってみるのがいいかもしれません。エドガー・シャイン教授は、文化について次のように説明をします。
文化とは、共通の目標に向かって力を合わせて取り組む方法である。その方法はきわめて頻繁に用いられ、きわめて高い成績を生むため、だれもそれ以外の方法で行おうと思わなくなる。文化が形成されると、従業員は成功するために必要なことを、自律的に行うようになる。このような自律性は、一夜にして身につくものではなく、従業員の共有学習を通じて生まれる。
上記の場合は、組織論として語られますが、これは個人のレベルにおいても十分に当てはめて考えることができます。私たちも、なにか行動をしてみたり、なにか言ってみたりした時に、反応を確認して、うまくいく方法をこれからも運用をしよう!と思って継続的に取り組みをしていくものです。
選択した方法が問題解決に役立っているとき(完璧である必要はなく、十分な成果をあげればよく)、文化が形成されていきます。たとえ、明文化されているものでもなく、私たちの行動を縛り、強化するものです。
しかし、こうした文化は慣性が効くため、自らが意識的に絶えず変えていこう、見直していこう!と思わない限り、永続してしまうものでもあります。環境は絶えず変化を続けているため、実は文化が足かせとなって、衰退した組織は非常に多くあるものです。
いかに慣性を活かし、いかに感性を磨き、見直しをはかっていくか、そのバランス感覚の上に、人生が編み出されていくのかもしれません。
誤解のないように言っておくと、文化は臨むと望まざるとにかかわらずうまれる。唯一考えなくてはならないのは、それが生まれる過程に、どれだけ積極的に影響を与えようとするかだ。
バランス感覚については、こちらの1冊「【私たちは、二者択一にとらわれている!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」がおすすめです。人生を二分する考え方ではなく、両取りの戦略で、現実的な戦略指針を見出すために非常に興味深い示唆を提供してくれます。
経営の大家、ピーター・ドラッカーは、次のような言葉を残しています。
企業が自らの目的と使命を十分に考え抜くことは、まずない。このことが、企業の挫折と失敗を招く、最も重大な原因の一つなのだろう。
目的を持たない企業にとって、どんな経営理論がほとんどが価値をなさないのと同じことが、人生ついても言えるようです。自らがどのような人生を歩みたいのか、具体的でないにしても、おぼろげながらその方向性が見えている方が、ものごとを検討するさいの選択基準としてより良いフィードバックを提供してくれます。
3つのポイントをおさえておきましょう。
1)自画像を意識する。
企業と同じように、自分自身をいかに客観的な視点で具体的に描写できるかどうかが重要です。この道を行った先にどのような展開が待っているのか、事前に検討してみることがワクワクを生み出します。
2)信仰と呼べるような献身さを見出す。
理想とする自画像を見出していくために、上述のような資源配分も含めてよりよい活動を積み重ねていくことが欠かせません。
3)人生経営の尺度(ものさし)を持つこと。
経営がどのように進んでいるのか定量的に把握していくように、人生にとっても定量的な尺度と目標設計を持っておくと良いでしょう。ただし、これは、目的ではなく目標であることを忘れないことです。お金を代表とするような定量的な目標は、目的にはなり得ないものです。
自分自身がなりたい人物像、つまり自分が人生で目的とするものについては、誰かに任せるのではなく、自ら描き出してみることがなにより欠かせません。明確な意図をもって、構想し、選択し、管理していくものであるべきなのです。
あなたが人生を評価するものさしは、何だろう?
自らの人生を企業のように捉えて経営スタンスを持つことは、主体的に豊かな人生を作り出していくために大きなヒントとなります。こちらの1冊「【自分で自分を営もう!?】「自営型」で働く時代――ジョブ型雇用はもう古い!|太田肇」でも同様のスタンスの在り方を深く知ることができます。
まとめ
- 人生を経営せよ?――より良い状態を目指す普遍的な行為を人生にインストールしましょう。
- 資源配分を検討せよ?――限られた資源の配置が、人生を形作っていきます。
- 自画像、信仰、そして、ものさし?――3つのポイントで人生を経営しましょう。