【対立は、変化の機会である!?】High Conflict よい対立 悪い対立|アマンダ・リプリー

High Conflict よい対立 悪い対立
  • いかに、局面をとらえなおし、あるべき姿に向けて勇気をもって進むことができるでしょうか。
  • 実は、すべての対立から避けないことです。
  • なぜなら、対立にはよい側面と、悪い側面とがあるからです。
  • 本書は、よい対立と悪い対立を比較し、私たちに対立の解像度をあげさせてくれる1冊です。
  • 本書を通じて、人生の中で避けて通れない対立についてポジティブに解釈するヒントを得られます。
アマンダ・リプリー,岩田佳代子
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対立には2つの側面がある?

今回レビューさせて頂く『High Conflict よい対立 悪い対立 世界を二極化させないために』の著者であるアマンダ・リプリーは、アメリカの著名なジャーナリスト兼作家です。社会問題、教育、紛争解決を主なテーマに執筆活動を行っている方で、本書において、人々が激しい対立に陥る過程とその解決策を探求し、現代社会の分断問題に新たな視点を提供しました。

他にも「The Smartest Kids in the World」で世界の教育システムを比較分析し、「The Unthinkable」では災害時の人間行動を研究するなど、幅広いテーマに取り組んでいます。The AtlanticやTime誌にも寄稿する彼女の作品は、複雑な社会問題を一般読者にも分かりやすく解説することで高く評価されています。ジャーナリストの経験を生かした取材と研究に基づいた著作により、重要な社会課題に対する考えるヒントを提供し続けてくれています。

アマンダ・リプリーは、よい対立と悪い対立に分けて考えます。

まず、よい対立は、私たちがよりよい人間になれるように支援してくれるものです。許すことや屈することではなく、ストレスが溜まったり、激しく相手とやりあることはあっても、私たちの人としての尊厳が損なわれることはありません。

社会のあり方を大きく変えたり、地殻変動をもたらすような可能性に満ちた状態が、よい対立です。

しかも昨今は、その必要性がますます高まってきている。

一方で、こうしたよい対立とまさに対立するようにもう一つの悪い対立も存在します。真っ当なルールがないからこそ、対立を深め、さらに感情的に泥沼になっていくような対立です。脳も通常とは異なる働き方をして、どうしたら自分が優位に立つことができるかという、思い込みが激しくなり、相手のことがますますわからない存在へ追いやってしまいます。

実際には、こうした負の感情は相対する人それぞれが同じように抱えてしまうことはよくあります。でも、悪い対立に陥ると互いに話し合うことなく、それぞれの気持ちの交換をすることもなく、決裂に向かってしまうこともよくあることです。

対立とよりよく向き合いよい対立にする路線を目指すことができるのか、そして、そうした状態へ導くにふさわしいテーマでの対立なのかを冷静に見極めていくためにも、まずは、「直感に反して」状況を見定めてみることが肝心です。

対立には、強いポジティブな力があります。

同意できないことを理解できるようになる。

対立は、人を単に消耗させるものから、自分に必要なものへと変えていく力を持つのです。

変化の大きな時代と呼ばれる現代を生きる私たちにとって、外的な変化を受け入れて、自らも新しくなり続けていく力を養うことはとても大切でしょう。変化に対して、頑なに拒み続けていく態度よりも、柔軟に受け入れて自らを変え続けていくことを比べてみれば、後者の方がよりよい方向へと自らを動機づけ、そして実現していく柔軟な力に満ちていることに、気づくことができるはずです。

対立とは、自分と他者、あるいは、自分が属しているグループと自分が属していないグループというように、「自分と相手」という構造の中で起きがちであると思われるかもしれません。たしかに、そうした対立もありますが、実は自分自身の中でも対立は起こりうるのだと思います。

今の自分と過去の自分のように、自分の中における対立もあるのです。

例えば、過去に信じていたことがどうやら違うことに気がついたとき、人は一貫性を失うことを恐れて、本当にいまを受け入れていいのかを自問自答するものです。こうした状況は、「葛藤」として、例えば、多くのヒューマンドラマの作品などで頻繁に描かれるテーマです。

対立とは、想像以上に身近なものです。対立について考えることは、他者理解だけではなく、自己理解も含めた、変容のチャンスを自らにもたらす大きな要素となりうるのです。

人生をより良くしていくための、「変容(トランジション)」については、こちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」もぜひ合わせてご覧ください。

感情がじゃまをする?

なぜ、悪い対立に私たちが陥るのか、それは、感情によるものが大きいです。感情的になると、論理的に状況を分析して判断する力を失います。これにより対立の負の側面ばかりに注目が及んでよりよい判断が難しくなります。悪い対立は、停滞されることが目的であるとでも言うように、対立をさらに泥沼化していきます。その場に留まることなく、対立自体を避けてどこか別のところへ向かうべきなのではないか、とさえ思えてくるのが、悪い対立です。

人は新しい情報を自分のそれまでの信念や先入観をもとに解釈しがちです。これは「確証バイアス」と呼ばれるものです。

確証バイアスは、人間の思考や判断に影響を与える認知バイアスの一つです。このバイアスにより、人は自分の既存の信念や仮説を支持する情報を優先的に探し、受け入れる傾向があります。同時に、自分の考えと矛盾する情報を無視したり、軽視したりします。

確証バイアスがフル稼働の中では、人はよりよく対立と向き合うことは困難です。自分の信念だけを見つめる視点があまりに強すぎるため、それ以外の可能性を見つけることが難しいのです。こうした状況が続くと、人は何らかの状況打破を試みたいがあまり、感情にはけ口を見つけてみたり、逃避してしまったり、対立と向き合うことを避けるのです。

怒りながら好奇心を抱く状況を想像してほしい。

当然のように難しく感じるでしょう。怒りのせいで脳の中にある関心を生み出す部分へのアクセスができなくなるからです。対立とよりよく向き合うことができないがために、私たちはつかの間の満足と引き換えに、人生の充実感を失うことになり、その代償は非常に大きなものになります。

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そこに感性はあるか?

私たちがどのように自分や自分たちを理解しているかということも、対立に関わる大きなポイントです。というのも人は個人よりも、グループ・集団が存在していると言われた途端に、脳が自分の意志に関係なくグループを受け入れる傾向にあるという報告があるのです。

人がこれまで生き残ってくることができたのは、地位や立場の違いを意識して、自分が所属するグループや広く捉えて社会の状況をもとに個人の行動を決めることができていたからです。

自分たちの社会においてはどのようなカテゴリーが重要かを、ありとあらゆる、静かで陰湿な方法で学ぶ。

こうした人としての当たり前に備えている学習機能が、グループという存在を誇大に私たちに感じさせる原因となってしまいます。また、その結果、対立を深めて対立について出口を見えにくくされるのも事実です。

1対1の対立よりも、多対多の対立の方が複雑で、解決困難な問題のように映ります。

グループや集団がどのようなインサイトを持っているのか?について、知ることも大切ですが、同じようにひとりひとりの解像度で、自分が何を大切にしているのか?何を本当は思っているのか?について、感性を磨くことも、対立の本質について触れるヒントとなりそうです。

ある意味で、集団は対立そのものとも言える。

ほとんどの場合その力は、善なるのものためのものであります。そして集団の互いが同じように善なるもののために、特定の何かを信じ、自らの思想を持ち、育んでいるのです。

そもそも集団が形成されたのは、誰かの問題を解決するためでした。民族、宗教、同族、人々を結びつけ、生きながらえるための智慧や自然に対する解釈を養っていく必要があったのです。何十年もの間、人々は比較的平穏に過ごすことができても、やがて問題は起こるものです。そして、土地や金銭、あるいは政治的な争いが、古くからの不満に新しい命を吹き込んでいきます。

そして対立が激しくなればなるほど、本音ではなく建前が幅を利かせてくるようになる。

対立をよりよく見つめていくために特に大切なのは、対話です。その時、いかに相手の言葉を聞けるかということがキーになります。

話し手と聞き手では、その情報のとらえかたが大きく異なる。

残念ながら、相手の真意を100%理解することは難しいでしょう。

ですが、よりよく聞くことは可能なはずです。相手が何をみて、何を感じ、どんな思想を育んでいるのかについて検討してみることが大切なのかもしれません。このように聞くことを前提とした対話を重ねていくことで、互いに対立の根本となっている思想について相互の思いを交換する機会を得ることができます。

対話については、こちらの1冊「【対話こそが変革を生む!?】企業変革のジレンマ「構造的無能化」はなぜ起きるのか|宇田川元一」やこちら「【事実とは、現実か!?】現実はいつも対話から生まれる|ケネス・J・ガーゲン,メアリー・ガーゲン」もぜひご覧ください。対立の本質を見つめるヒントとなること間違いありません。

まとめ

  • 対立には2つの側面がある?――よい対立・悪い対立を冷静に見極めることが大切です。
  • 感情がじゃまをする?――感情的になると、人は対立の本質を見つめることができません。
  • そこに感性はあるか?――自らのN=1の感覚を通して、対立を見つめられているか検討しましょう。
アマンダ・リプリー,岩田佳代子
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