- どうしたら目標に向かって、よりよい習慣を作ることができるでしょうか。
- 実は、行動経済学を味方につけることが、効果的かもしれません。
- なぜなら、行動経済学こそ、人の理性と衝動を注意深く見つめてきた学問だからです。
- 本書は、無意識領域の多すぎる自分をコントロールするための1冊です。
- 本書を通じて、いかに習慣をつくるのかアプローチを知ります。
行動経済学を味方に?
努力したいのに、できない、あるいは、続かないというもやもやを抱えたことのある方は少なくないのではないでしょうか。理性と衝動のせめぎあいの中で、どうしても、衝動が勝ってしまうことって結構あります。
そんなときには、行動経済学の知見から自らを俯瞰してみて、意識しなくても行動をいかに作り上げていくかを検討することが良いかもしれません。
行動経済学がまさに、理性と衝動を注意深く見つめてきた学問だからです。
人間の意思決定や行動の特徴には、特定のパターンがあります。
例えばバイアスと呼ばれる特性もその一つです。バイアスは、私たちの日常生活や意思決定に大きな影響を与える心理的傾向です。これは、特定の情報や状況に対して、無意識のうちに偏った見方や判断をしてしまうことを指します。
バイアスには様々な種類があり、例えば確証バイアスは自分の既存の信念に合う情報を優先的に受け入れる傾向を指します。また、ステレオタイプバイアスは特定のグループに対する固定観念に基づいて判断してしまう傾向です。
これらのバイアスは、時として合理的な判断を妨げ、不公平な結果をもたらす可能性があります。特に、職場での採用や評価、メディアの報道、政治的な意思決定などの場面で問題となることがあります。
難しいのは、こうしたフィルターでものごとをみているとか、先入観を持っていると言う状況を、自分で気づくことです。なぜなら、自分自身の意識にそもそもフィルターがかかっているので、自分自身の決定や判断も色眼鏡で常に見ていることになるためです。
行動経済学では、「人間が合理的であるならば、どのように振る舞うのか(理性面)」と「実際の人間がどのように意思決定し、どんな行動をとるのか(衝動面)」の両方を比較し、ズレを生むものについて研究されてきました。人の性を俯瞰して知ることによって、自分の行動を自分が考えるように、誘導していくことを志向してみましょう。
将来を信じられるか?
2つの選択肢があったとします。例えば「今」10,000円をもらうか、「来年」10,500円をもらうかという選択肢です。1年待てば、500円余計にもらえるということになります。いずれにしても10,000円は確実に貰えそうなので、1年で5%の利潤をもらえる仕組みについて考えているということになります。
これらを比較するため、行動経済学においては、時間割引率という考え方を用います。
「今」10,000円をもらうか、「来年」10,500円をもらうか
この選択において、多くの人は「今」の10,000円を選ぶかもしれません。なぜでしょうか?
- 即時性:今すぐ使えるお金の方が魅力的に感じられます。
- 不確実性:将来のお金には何らかのリスクが伴う可能性があります。
- インフレーション:将来のお金の価値が下がる可能性があります。
- 個人の選好:人によって将来の価値の評価が異なります。
この例での時間割引率を計算すると: (10,500 – 10,000) / 10,000 = 0.05 = 5%
つまり、1年後に5%多くもらえるにもかかわらず、即時の報酬を選ぶ人がいるということは、その人の時間割引率が5%よりも高いことを示しています。時間割引率は個人の経済的決定、特に貯蓄や投資の判断に大きな影響を与えます。
そして努力の習慣化について結びつけて考えてみた場合、次のようなことが言えます。
時間割引率の高い人は努力をしない傾向にある。
将来にえられそうな視点や成果のために、今がんばれるということは、時間を信じることができるかどうかにかかわってきます。時間を信じられるかどうかは、過剰に割引率が高ければ難しいということになります。
とはいえ、だれそれが、割引率○%ということで、固定的に能力的に決まっているわけではないと思います。割引率も状況や環境次第で、揺れ動くととらえてみることが素直かと思います。
例えば、空腹時の1h後のラーメン1杯と、お腹いっぱいのときの1は後のラーメン1杯、どちらが魅力的でしょうか。空腹時の方が、すぐに食べたい気持ちを抑えるのに苦慮しますが、お腹いっぱいのときにはそうでないことに気付きます。
時間軸というのも自分の状況や環境の力を借りれば操作が可能になりそうであるという手応えを持ってみましょう。
行動をデザインしよう?
割引率とか考えると結構複雑だなぁ、と思ってしまうかもしれませんが、人間そうでもない側面もあります。習慣とは恐ろしいもので、よりよい習慣も、悪い習慣も、続けていることで単純に習慣になることがたくさんあります。朝コーヒーを飲むのも、同じチェーン店に入ってしまうのも、同じメニューを選んでしまうのも、継続の賜物です。
考え方を変えてみて、とにかく続けてみることで、反対に続けないことに対して違和感をおぼえるようにしてしまえばいいのです。
その時大切なのは、初期設定を考えることです。より良い方向へのベクトルを見出すというイメージでしょうか。例えば、作家になりたいという夢があなたにあるとしましょう。そのとき1日の過ごし方を考えて、「とにかく原稿をアウトプットするために、書籍1冊と原稿1枚を書き続ける」とした場合と、「ネタを仕入れるために、毎日とにかく居酒屋で飲みまくる」とした場合、どちらが夢により良い形でリーチできそうかを検討してみてほしいのです。
後者は極端ですが、何を習慣という具体的な行動にするかで、その後の誤謬につながってしまうこともありそうです。
誤謬(ごびゅう)とは、論理的な思考や推論における間違いや誤りのことを指します。簡単に言えば、正しくない理由づけや結論に至る思考の過程のことです。
初期設定が大切だな!と思える事例について、獲得系広告をみていきましょう。
次の4つのリンクのうち、より効果的なものはどれでしょう。商材は、投資信託の購入サービスであるとします。
1)商品購入リンクを直接貼る。
2)「はず始めるならこの商品で!」とコピーを書く。
3)「一度始めればあとはほったらかしでOK!」とコピーを書く。
4)オンライン3ステップで口座開設が可能!」とコピーを書く。
ご想像の通り、効果的なのは、3番めです。ここで上述の論旨に触れながら2つの示唆を得ることができます。
まず、初期設定がとても大切であるということ。何をするか(この場合、「投資信託」をかい続けるということ)を具体的に決めて、その行動を続けていけば、習慣になります。
そして、もう1つは、人はほったらかしや、手間がないことをやはり好むということです。努力を習慣化するには、意志の力だけに頼って、頑張ることを続けていくだけでは、達成しづらいのです。無意識の力を借りて、取り組んでいなければ違和感を感じてしまう状況をいかにつくるかが、努力を継続して行っていくための秘訣ということになりそうです。
「未来の自分」に押し付けた理想は実現しない。
実際に、今の自分に難しいことは、今後いつかの自分にとっても難しいことにほかなりません。何もしなくて、時間が立つのをまっていても何ら実現しないでしょう。大切なのは、自分を変えていく勇気と行動です。
自分が変わることができれば、そこから新しい行動が作れ、習慣となり、新しい人脈を創造することにより、自分の夢にリーチする可能性をより色濃くすることができるかもしれません。夢というようなたいそうなものでなくても、自分がなんとなくいいなぁと思っている方向を常に向いている力を持つことができそうです。
本書は、いかに努力を続けていくかについて具体的な行動経済学の視点を多用しながら、行動喚起を繰り返ししてくれるすばらしい1冊だと思います。何かをはじめたいかもしれないなぁ~と、考えている方はまず本書を手にとって、最初のページを読んでみる!というアクションをしてみるのがいいかもしれませんね。
0と1は雲泥の差ということです。
行動経済学について深く触れてみたい方は、こちらの1冊「【人は操作できるの!?】教養としての行動経済学入門|エヴァ・ファン・デン・ブルック,ティム・デン・ハイヤー」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。
まとめ
- 行動経済学を味方に?――自分自身の行動特性を知り、制御する視点を獲得できます。
- 将来を信じられるか?――将来を信じて、今行動できるかがキーです。
- 行動をデザインしよう?――具体的な行動のみが、未来に形をもたらすことができます。