- よりよい意思疎通のために、どうしたら言語化が上手になるでしょうか。
- 実は、「読む」「聞く」「まとめる」「言語化する」をワンセットで捉えることかもしれません。
- なぜなら、アウトプットを前提とした準備が絶えず行うことができるからです。
- 本書は、書評サイト・フライヤーでご活躍される言語化のプロによる1冊です。
- 本書を通じて、言語化された情報とどう向き合うかについて、ヒントを得られます。
アウトプットがあるからこそ?
フライヤーというサービスは、「書評(レビュー)」ではなく、「要約」を行い、忙しいビジネスパーソンに情報をコンパクトに届けることを目的としています。だから、書き手の主観を入れるのではなく、執筆者の文章の全体像と(読者にとっての)重要ポイントを素直に伝えることを目指します。
著者の松尾美里さんは、フライヤー創設初期から編集としてご活躍されている方です。1冊1冊との向き合う方には、「言語化」の力が不可欠だといいます。本を読む力、話を聞く力、情報を整理して言葉にする力、これらはすべて言葉に関連する力です。
言語化が上手になっていくためには、何が必要でしょうか。
ポイントは、日頃から接する情報の質にあります。より良い質のインプットを続け、それにもとづき、アウトプットを欠かさない習慣を身に着けてみることです。また、言語化は、たくさんの人とのコミュニケーションを行うことでも養われていきます。誰一人同じ感性や情報のインプットの癖を持っている人はいません。
立場や状況が異なれば、受け取り方も千差万別です。いろんな属性の方と情報のやり取りをすることで、さまざな球種を見分けて、受け取り、さらにコントロールして投げ込むことができるようになるかもしれません。
あるいは、「能力」として磨かれるというよりも、色んな場面に遭遇することで、言語化やコミュニケーションというのは当然のように多様なものだという、前提を素直に受け入れることができるようになる、というのもとても大切なことかもしれないと思います。
言語化というのは、ひとつ自分のアウトプットをすることを前提とする考え方です。自分の言葉を紡ぐには、そのための準備が必要です。
大切なポイントは、「読む」「聞く」「まとめる」「言語化する」をワンセットでとらえるということです。これにより、アウトプット=言語化を想定したインプットをすることが可能になります。アウトプットを前提とすれば、情報に対して主体的に関わることができます。
アウトプットを考えて聞いているからこそ、相手がエンパワーされるような働きかけを自然体でできていました。
これは、著者の松尾美里さんが、とあるインタビューでの出来事を振り返る言葉ですが、その時、自身の「問い」という準備が相手との距離感を縮め、よりよい関係を作ることに寄与したといいます。情報という概念は難しく、非常に広範囲のものごとを指します。すでに言語化されているものごとも情報ですし、まだ言語化されていない側面や状態にフォーカスしてみることも情報であるととらえることができると思われます。
ものごとにいかに向き合うかという姿勢の問題に尽きるのかもしれません。そのことによって、一見同じように見えるアウトプットでも深みが異なってくる・・そういう体験を積み重ねていくことが、言語化には必要なのです。
また、同時に、情報というのは取りに行かなければ、言語として加工できないということも、松尾美里さんはおっしゃっているのだと思います。受け身ではなく、その情報や状況の中に飛び込んで、主体的に見出したものが、自分の言語として見出されていきます。
「問い」をいかに持てるか?
言語化には、5つの効果があります。
1.「聞く力」「読む力」が身につく
2.対話がうまくなり信頼関係が築きやすくなる
3.思考の整理力が身につく
4.本質を掴む力(要約力)が身につく
5.言語化力が高まる
「本質」とは、相手の話や文章の「ここだけは伝えたい」という核心の部分です。ここで特に重要なのが、本質を掴むための理由です。だれの、なんのために、本質を見出さなければならないか、という前提がない限り、核心に触れることは難しいものです。
目的を意識しながら、情報に向き合うことで「著者の主張」や「一番伝えたいこと」をアウトプットすることを習慣にすることができます。
また、言語化で特に重要なのは、必ずしも上手な言葉や美しい言い回しをすることがポイントにならないということでうす。むしろ大切なのは「切り口」「視点」「視野」あるいは、「解釈」です。自分が主体的に入り込んで見出した、内容を切り出す力というのが、大切だということになります。
言語化の質を高める工夫は、次の2点を意識してみることにあります。
1)アウトプットに(そもそも)繋げられるか
2)独自性や希少性があるか
また、事前に「問い」を持って相手やものごとに向かうことも大切です。
仮説を持つことで、相手により質の高い質問や問いかけができるようになります。
自分自身の問題?
とくに取材の現場では、2つの人格を使い分けてみることを意識してみましょう。
1人は、共感する自分です。相手の持つ考え方や思考に入り込みながら、相手の立場と共鳴して、同じものごとを観る視点視座をシンクロさせます。そうすることによって、相手の表現している状況や場面を追体験することに繋がり、「何を伝えているのか」に想像をはせることになります。
そしてもう1人は、その場を俯瞰して見つめる人格です。もしかしたら「読者」の視点と言っても間違いではないかもしれません。俯瞰的に見る視点があれば、状況の課題や問題点の骨子に迫る質問や「問い」を持つことが可能になります。
究極的に捉えていけば、言語化とは自分自身と向き合うことにつながっていくのかもしれません。自分は、どんな問いを持っているのか、相手の何に共感をしているのか、相手との関係性の中で何を見出すことができたのか・・そういった問いの根源には、自分自身の存在があります。
「自己認識」「自分を知る」ということを重ねる過程で、言語化とは磨かれていくものです。またそれは、多くの経験をしながら、自分がどんな時に、どんな気持ちになるのか、という辞書を広げていく活動であるとも言えるかもしれません。そうした辞書を増やしていくことで、相手に寄り添う言葉を取得することができるし、あるいは、俯瞰した視点に立った時に、状況を描写するにふさわしい言語を見出すことができるのです。
それは「話や言葉を聞き出そう」ではなく、「想いを聞き出そう」とすることです。
言語は、想いが形を変えたものです。そして、言語は万能ではないので、残念ながらその想いのすべてを雄弁に描写できるとは限りません。いくら言葉を尽くそうとも語れない想いは、必ずあります。そうした想いにいかに触れていくか、ということが言語化を“いかに上手に”できるようになるか、ということにつながっていくのだと思います。
自分とはどのような人間なのか。何を成し遂げたいのか。
自分は何が好きで、何に情熱を感じるのか。
「自分自身の源」を理解していくと、自分の言動が精神と一致してくることを感じます。結果的に、周囲に対して、あるいは取材相手に対して、信頼関係を築くヒントとなり、よりよい言語化につながっていくのだと思います。
言語化とは、一見、相手や外の世界の描写と見せかけて、その原点には、自分自身を知るという自分の中の問題に行き着くところが、本書の魅力的な考察だと私は思います。
自分を知るためには、こちらの1冊「【「私メッセージ」を大切に!?】アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法|平木典子」も大変貴重な視点を提供してくれると思います。おすすめです。
まとめ
- アウトプットがあるからこそ?――アウトプットを前提とするからこそ、インプットの質がUPします。
- 「問い」をいかに持てるか?――主体的にものごとの核心に迫る力を得ることができます。
- 自分自身の問題?――言語化は、そもそも、自分自身を知ることです。