- 「叱る」に向き合ったことがありますか?
- 実は、叱ることで、人は残念ながら学ぶことができません。
- なぜなら、叱ることは人間の情動に強く働いてしまうからです。
- 本書は、情動に働くからこそ、効果があり、だからこそ勘違いしてしまう叱るに対する冷静な視点を提供してくれます。
- 本書を通じて、どうやって人と向き合うことが理想なのか、ヒントを得ることができます。
叱られると、反対に繰り返す?
叱られた子どもは、なぜ同じことを繰り返してしまうのでしょうか。
その答えは、「防衛システム」と呼ばれる、脳の危機対応のメカニズムにありました。
以下で叱られると、ような行動としてフィードバックされるのかを俯瞰してみましょう。
叱る人が、叱られる人の間違いを定義する。
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叱る人が、叱られる人の間違いと認定した行動を見つける。
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叱る。
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叱られた人は、「防衛システム」を作動させる。
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「防衛システム」により、闘争か逃避かを選択されるように迫られる。
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(なぜ、叱られているのか、という観点では検証をしない)
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いずれかの行動を取り、やり過ごす。
このような、判断を瞬時に下しています。ポイントは、「なぜ叱られているのか振り返る余地がない」ことです。とにかく、その場で、ことを収めようと何らかの反射的行動に出てしまうのが、叱る・叱られるということの真実です。
ここに学びは、残念ながらありません。
叱るという行為の本当の意図は、相手によりよい変化を生むことであったはずです。そして、より良い変化とは一時的なものではなく、その後、ひとりになったとしても、自ら主体的に行動をよりよく選択できるようなロジックや行動原理を身につけるということです。
叱るは短期?学ぶは長期?
叱るということは、とても短期間に強烈なフィードバックを与えるのですが、残念なことに、中長期的に役立つ学習機会を提供できるかというと、ままならないのです。
叱られた人(子ども含む)は、強いネガティブな感情に襲われます。このネガティブな感情は、兎にも角にも排除しなくてはならないものです。人はそうやって太古の昔から生き延びてきたのです。
言うことを聞いたり、謝罪の言葉をのべたとしても、それは逃避によるものであると叱る側が、よりよい知識をもとに、省みることが大切です。
人間という存在は叱られることでは学ばないし、育たたないのです。
また、理解するべきは、叱る人に依存が「叱る」行為に対する依存を助長させるという最悪な負のスパイラルが見え隠れします。叱る人は、相手が自分の信じるより良い状態に向けて、行動を短期間で是正することができたという手応えと、自分の行動が間違っていなかったという確信を得ることになります。このことで、より「叱る」という行動を信じるようになります。
しかし、何度も叱られているうちに、叱られる人には、耐性が出てきます。すると、さらに過剰に叱る人は叱るようになり、最悪な場合DVなどに至るケースも、社会問題化しています。
知っておくべきことは、「人間の性」です。
規則違反を犯した人を罰することで、たしかに脳内の報酬回路系が活性化するという報告もあります。こうした事実に対して俯瞰的に自己を見つめることから、本当の人と人のより良い関係と、学習機会の創出が可能になります。
主語を小さく!?
たしかに、人とのやり取りの中で、やむを得ず叱らなければならないシーンというのは存在します。危険回避や、その他の行動抑制です。そうしたときにも、自分を見失わないために、大切なことがあります。
大事なのは、主語を「叱る人」に戻すことです。
主語が大きいとは次のようなことです。
「約束したことは守らないとダメでしょ」「なんでちゃんとやってないの?おかしいでしょ?」
一方、主語が小さいとは次のような言葉です。
「あの約束を、私は守ってほしかったんだよ」
人が誰かを叱るときには、メッセージの主体を自分に置くということです。人と人の約束や、見立てを伝えることで、相手に対して、つながりを維持しながら、理性的にものごとを伝えることが継続されます。
「どこから来たのかよくわからない正義」のメッセージを、叱る人がまるで「代理人」であるかのように伝えるのです。
そうではなく、自分主語の言葉を大切に自分のなかに存在する「相手のあるべき姿」への希望を具体的に、伝えることを工夫していきましょう。
また、加えて、叱るシーンを事前に作らないこともポイントです。事前に約束やルールの確認を行って、冷静に対話をしておくことで、互いに学びを得ることができます。叱る人も、案外ルールというのは、その場その場で作り出していしまっていることも多々あります。それを対話の中から事前に考えることができれば、相手との関係の新しい気付きを得ることができます。
これを著者の村中直人さんは、「前さばき」の重要性と説きます。
いざ叱るシーンでは、「前さばき」に意識が向かない可能性も出てきてしまいます。それよりも前に、互いにコンセンサスを取っておけば、冷静な頭で、ものごとを考えることが可能になるのです。
村中直人さんの著書については、ぜひこちら「【「叱る」から人は、まったく学ばない!?】〈叱る依存〉がとまらない|村中直人」もご覧ください。
まとめ
- 叱られると、反対に繰り返す?――叱るでは、感情が強く喚起されて学びに繋がりません。
- 叱るは短期?学ぶは長期?――学ぶことを目指すには、その場の叱るという対処以外の方法を検討しましょう。
- 主語を小さく!?――自分と相手との約束という単位を重視してみましょう。