- 前提を覆すような成長路線を見出すためには、どんな視点が大切でしょうか。
- 実は、2倍ではなく10倍のレベルを目指すことです。
- なぜなら、2倍は量、10倍は質が前提となるためです。
- 本書は、そんな質的成長を目指す「変容」のための1冊です。
- 本書を通じて、前提条件を疑い、全く異なるものへのトランジションを志向するヒントを得られます。
2倍とは?
グーグル社の新研究所「X」最高経営責任者であるアストロ・テーラー博士は、次のように語ります。
10%の改善を目指すと、会社はたちまち『頭の良さ競争』に巻き込まれる。世界中の人間を相手にした『頭の良さ競争』に、従業員全員を突っ込むことになる。我が社に勝ち目はない。報酬をどれだけ出そうと関係ない……しかし、10%ではなく10倍の改善を目指すと、100倍の苦労をほぼしなくても100倍の成果が得られる。
時として、10倍を目指すほうが、簡単に成果をもたらすことができます。それはなぜでしょうか。
10倍を実践するということは、心の底から追い求め、最も胸踊る将来像に基づいて生きることにほかなりません。10倍の将来というフィルターは、今の生活にとって欠かせない視点をもたらしてくれます。いまの生活に必要なものと、まったく不必要なものを見出すことを簡単にしてくれます。
歴史上の偉大な起業家や歴史家は、みんな10倍と2倍の違いを理解していました。
ほんの少しだけ先にあるもの――たとえば、昇進、あと少しのお金、個人新記録等など――これらをつかもうと目指している人がほとんどではないでしょうか。
これらは緩やかな進歩を目指す2倍のマインドセットです。基本的には、これまでやってきたことの改善を実践していくことになります。これらを目指す人は、これまでのやり方を踏襲しているのです。これまでの延長線上で行って行く先には、たしかに5%、10%、あるいはどこかの地点で2倍の成長を得られるかもしれませんが、残念ながら10倍や100倍の成長には程遠いでしょう。しかも膨大な努力や苦しみの割に、成果が低減されてしまうかもしれません。なぜなら、より多くの人がそうやって、小さな利益や成果を切り出そうとしているからです。競争が激しいレッドオーシャンなのです。
2倍は線形的だ。
2倍の努力によって2倍の結果をだします。2倍は疲弊するし、気持ちも萎えます。
10倍とは?
でも、10倍はどうでしょうか。
10倍の成果のために、10倍の努力ができるでしょうか。これは現実的ではありません。
だから人は、10倍の努力を捨て去ります。しかし、一部の人は知っています。10倍の成果を目指す時に、全く異なるアプローチが必要で、それは必ずしも非現実的ではないということを・・・。
大切なことはまず、10倍のためにやるべきことについてです。
10倍は、より多くではなく、より少なくという考えだ。
例えば、Apple社のスティーブ・ジョブズさんの思想を照らしてみましょう。彼は、“極端なシンプル化”に熟達していました。例えば、iPodを設計した時、音楽の所有に関して消費者が臨まない要素をすべて捨て去りました。音楽の体験を“10倍楽しく簡単に”することを目指したのです。具体的には、聴きたい1曲のためにお店に出向いて12~15ドルを支払いアルバムごとに買うのではなく、その1曲だけをその場で聴けるようにしました。あるいは、お気に入りの曲をポケットに入れられるように、驚くほど小さく、かつ直感的に操作できるデバイスを開発しました。
10倍は「より多く」ではなく「より少なく」であるのと同時に、“量”ではなく、“質の問題”でもある。
10倍は、その前後で質的に変化することであり、大規模なイノベーションと質の向上をもたらすことができます。10倍はまるで馬車からクルマに乗り換えるのと同じです。ここには「非線形的な」変化が起こっています。
2倍は線形的で、非創造的です。一方、10倍は非線形的な、創造的な行為でもあります。また、この10倍の思想は、いまここでものごとを取捨選択するためのフィルターとして機能します。何をするにも、2倍か、あるいは10倍なのか、に割り振ることができます。
10倍を実践する人は、“非常に限られた対象”にしか注意を向けない。
しかし、的を絞って集中するので、そこで圧倒的な影響力を発揮する。
そして、10倍の志向は圧倒的な集中をもたらし、次のような効果を生みます。
- 将来の向けたビジョンや基準を劇的に向上させる。
- 戦略やフォーカスを単純明快にする。
- 本質的でないものを見つけて除外する。
- 自分のビジョンの下で働いていくれている人を導き、力を与える。
10倍に生きるということは、素直になるということでもあります。だから、実は2倍よりも実はとっても簡単であるのです。10倍はなにか特別なことをするのではありません。自分の意識にシンプルに生きることが10倍に生きるということほかなりません。これは能力であり、まるで生きるためのオペレーションシステム(OS)として駆動していきます。
10倍ビジョンから始めよう!?
事実、多くの起業家が、現在の会社の規模に事業を拡大した年数を思い出してみましょう。想像以上に短いのではないでしょうか。実際に10倍の思想でものごとが実現されているからです。
10倍は、“量的”ではなく、“質的”なものに絶えずフォーカスし、そのことで、結果を生み出しやすくなる証左です。
すべてにおいて劇的な効果が出る。
自分自身を振り返ってみましょう。
- そこにすべての力を注げば、自分の価値が10倍上がり、影響力も10倍増すと思われる、あなたの20%とは?
- 成功と楽しみのほとんどをもたらしてくれる希少な仲間や活動は?
- あなたを疲弊させ、将来の飛躍を最終的に妨げている80%とは?
これは、生き方に関する問題でもあります。自分自身を見つめて、自分の毎日の活動にフィードバックしてみることです。
現実不可能に見える目標は、可能な目標より役に立つ。
一見不可能な目標によって、人はいまもっている知識や想定の範囲を越えようとするからだ。
大切なのは、将来の「ビジョンとフォーカス」を一段上に求めることです。特定の相手やものごとに対して、これまでとは違う価値と影響をもたらすことが可能になります。
大切なポイントを以下にまとめてみましょう。
2倍や10%の改善ではなく、10倍の成果を目標にする。
↓ そのことによって
より成果をもたらすことのできる20%に集中せざるを得なくなる
↓ これで
より多く働くのではなく、より少なく働くことができる。
↓ すると
人生の中で最も貴重な資源である時間を有効活用することができる。
↓ そして
これまでとは異なる価値や影響を、相手やものごとに対してもたらすことができる。
↓ 最終的には
より多くの成果を得ることができる。(10倍の達成)
10倍の行動原則とは、次のような3つで語られます。
1.指数関数的に考える。大きくかつ非線形的に考える。
2.量より質に過剰なほどのこだわりを見せる。
3.自分が質にフォーカスできるように、ほかの仕事をチームに任せていく。
10倍を目指していく過程において、質と変容をもたらすことができるため、競争とは無縁の存在になることができます。誰よりも優れているとか、そういう視点ではなく、唯一無二の存在として、個性を発揮しながら自然体を通じて、価値を提供し続けることが可能となります。
10倍は質と変容を伴う、頂点を目指す道だ。
2倍は量と競争を伴う、底辺を目指す道だ。
自らの中に強い動機を求めていきましょう。あくまで外ではなく、自分の中に10倍を欲する心を見出すのです。
1)必要とする人は、外の世界に動機があるのに対して、欲する人は自分の中に動機があります。
2)必要とする人は、安心を求めて動くのに対して、欲する人は自由を求めて動きます。
3)必要とする人のマインドは乏しさが前提にあるのに対し、欲する人のマインドは豊かさが前提にある。
4)必要とする人は受動的であるのに対し、欲する人は想像的である。
自分が“最も欲するもの”にコミットするのが、自由になる唯一の道だ。
ここまで読んで、10倍は無縁かもしれないと思った方もいるかも知れません。でも、実際に私たちは何度も10倍をすでにこの人生で経験しています。
例えば、文字を読めるようになった時、10倍を手に入れたし、言葉を話せるようになった時、10倍を得られました。さらには、友だちを作れるようになった時だって、10倍の自分になれたのです。クルマを運転できるようになったときだって、10倍です。
10倍の躍進をしたあなたは、以前とは異なるあなたになれたのです。アイデンティティや、心理状態すべてが異なったはずなのです。だから自分のこれまでの10倍を大切に、これからだって、たくさんの10倍をつくっていけばいいのです。それには、絶えず行動し、量ではなく質を意識できるように、自分が何を欲するのか、という選択基準が欠かせません。
コアとなりうる20%を見出した時、また、あなたは10倍を手に入れる道に立っています。
本書は、非常に明快に、何に集中するべきかを説いてくれる1冊でした。本書の著者ダン・サリヴァンさんと、ベンジャミン・ハーディさんは、過去にも素晴らしい1冊「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」を執筆してくださっています。また、両方の本にふれることで、さらによりよい人生に対する考え方をブラッシュアップすることができるでしょう。おすすめです!!
まとめ
- 2倍とは?――量でものごとを捉え、これまでの延長線上でものごとを捉えます。
- 10倍とは?――質でものごとを捉え、抜本的で偉大な成長をもたらす基準です。
- 10倍ビジョンから始めよう!?――自らの中に、欲するものごとを見つけ、集中しましょう。