【レイヤーで思考しよう!?】コンサルが「マネージャー時代」に学ぶコト|高松智史

コンサルが「マネージャー時代」に学ぶコト
  • 仕事のクオリティをどのように捉えることができるでしょうか。
  • 実は、立場によってバリューを俯瞰できるかが大切かもしれません。
  • なぜなら、現場とマネジャーの連携のいかんによっては仕事のクオリティはがらりと変わるのです。
  • 本書は、コンサル会社のマネジャーが「学ぶこと」を通じて、マネジャーと現場の立場について考えるヒントを得る1冊です。
  • 本書を通じて、何が「バリュー」であるのか、レイヤー別にヒントを得ることが可能です。

キーは論点にあり!?

現場とマネージャーの違いについて、知的創造の究極の場でもあるコンサル企業からヒントを得てみましょう。大切なことは、マイクロマネジメントとマクロマネジメントの両方の視点をまず知ることかもしれません。

マイクロマネジメントとマクロマネジメントは、管理スタイルの違いによって組織の運営方法が異なります。まず、マイクロマネジメントは、上司が細部まで介入し、従業員の作業を厳密に監視するスタイルです。これにより、短期的には効率が向上することもありますが、従業員の自主性が損なわれる可能性があります。

一方、マクロマネジメントは、上司が全体的な戦略や目標設定に集中し、従業員に自主性を持たせる管理方法です。これにより、従業員は自分の仕事に責任を持ち、創造的な解決策を見つけやすくなります。このように、マイクロとマクロの違いは、管理の範囲とアプローチにあります。

変化の多い時代において、必ずしもすべての現場において、マネージャーがマイクロマネジメントをしていくと、仕事の効率と現場の自主性を阻害することになり、資源の有効活用が互いにできなくなります。大切なことはすべての現場において共通してマイクロマネジメントを実施するのではなく、必要に応じて、マクロマネジメントのスタンスも使い分けていくことです。

現場の状況にあわせた介入をしていくことが大切なのです。そう考えるとマネージャー=えらいというレイヤー上層のイメージというよりも、現場がまずあってそれに対してマネージャーが支援するという逆転の立ち位置を見出すことが可能となります。

サーヴァントリーダーシップにヒントを得ることも大切です。

サーヴァントリーダーシップは、マクロマネジメントと密接に関連しています。サーヴァントリーダーシップとは、リーダーがチームメンバーのニーズに対して奉仕する姿勢を持ち、彼らの成長や成功をサポートするリーダーシップスタイルです。このスタイルでは、リーダーが細部にまで干渉するのではなく、チームが自律的に働ける環境を整えることを重視します。

マクロマネジメントと同様に、サーヴァントリーダーシップは、リーダーが全体的なビジョンや目標に集中しつつ、メンバーが主体的に行動することを促す点で共通しています。したがって、サーヴァントリーダーシップは、マクロマネジメントの一つのアプローチとして考えることができます。

また一方で、どのような現場であっても、マネージャーという立場を利用して、価値を提供するためには、俯瞰した視点でものごとに対して新しい見方=つまり、論点を提供すると言うことがありそうです。

こんな声が聞こえてくるようなマネージャーを志向してみることが大切です。

あのマネージャーとミーティングすると、新しい視点をもらえて進化できるよね。
(中略)
クライアントの論点がピンッと来なかったけど、なるほどなぁ。そういう感じで理解して、サブ論点、サブアブ論点を立てれば良かったのか。まじ神。

神かどうか、は別として、大切なのは論点です。

クライアントや社内のメンバーと議論して論点を定めることができれば、あとは、サブ論点、サブサブ論点という形で、プロジェクトや仕事をラダリングして検討することが容易になります。しかし、大本の論点が決まっていない場合、チームが同じ方向性に向かうことも難しいし、そもそも提供先のクライアントが価値を感じてくれるかどうかが、不明です。

マネージャーとは、原則的にサーヴァントリーダーシップを発揮しつつも、俯瞰した視点でものごとを理解し、クライアントとの対話を通じて論点を定め、「何を考えるのか」を決めることを支援する立場にある人と、定義することが可能でしょう。

また、サーヴァントリーダーシップとして大切なのは、相手の思考や認識を駆り立てること、という役割もありそうです。人というのは、自己決定感が欠かせません。自己決定したものでは、人は行動しやすくなるし、行動することができれば、一定の成果を生み出すことも可能になります。だから、介入の対象者(現場)が自ら論点を見出し、推進していく力を支援していくというのが、マネージャーの理想の姿です。

なんでもかんでも、助言をすればいいということはないということですね。

相手が自然と気付き、理解して、昔から「私はこの考えだった」とはしゃがせる。

これが、実は“最高”の「説得」でもあります。

これについては、クライアントに対してバリューを提供するときにも重要ですね。

論点命!?

論点とは具体的にどういうものを言うのでしょうか。例えば、次のような事例を通じて論点の感度を高めてみるのは、いかがでしょうか。

(Q)満員電車を解消する方法は何か?

(A論点)鉄道会社は、今、どのように「満員電車」を生み出してしまっているのか?

A1)「満員電車」が生まれてしまう構造はどう捉えればいいのか?

  • そもそも、「満員電車」はどの列車で起きているのか?
  • 海外でも同じ「満員電車」は問題になっているのか?

A2)例えば「池尻大橋駅」を例にした場合、「満員電車」は“いつ時点”で満員電車なのか?

  • 「二子玉川」「三軒茶屋」などの1つの駅でドカッと乗車して満員電車 vs 駅ごとに少しずつ乗車して満員電車?
  • 一度、満員電車になったらずっと vs 乗ったり降りたりを繰り返して、2,3度満員電車になる?

A3)ちなみに、過去のデータから「ダイヤ」をいじることで、満員電車は机上の空論としてなくすることはできるのか?

  • 「その電車しか無理」「+-5分ならOK」「+-10分まではなんとかOK」など、顧客の感度はどのような構成になっているのか?

A4)「満員電車」を解消することによる経済効果はどのくらいあるのか?

  • そのほかのメリットは何か?。例えば、「痴漢がなくなる」「喧嘩がなくなる」「ムダな駅員がなくなる」など。

A5)現在、「満員電車」に乗らざるをえない乗客の皆さんは、どのような対策をしているのか?

  • 1時間早く動き出す vs 遠回りでも他の交通手段を使う ( vs 我慢)。

論点とその論点からのラダリングは、答えのないものです。

これが答えだ!ということは常にありません。

だから、自分が想像していたものと比べながら、常にチームの議論や論点がどこにあるのかをレイヤーごとに知りながら、見つめつつ、検討していくことが大切です。同時にリソース(とくに絶えず時間)は限られています。どこにどの程度、注力することが、本来的なバリュー(意味)をもたらすのかも、あわせて検討することが大切です。

また、絶えず、こうした論点については、クライアントと対話を通じてすり合わせをしながら、解決するべき事象を確認し続けることが大切です。

論点ワードを書けるならワークプランは楽勝です。

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』という名著がありますが、その通り、論点をあらかじめ定めることによって、その後のプロジェクトのアウトプットやアウトカムが、何倍も変わってきます。何に、集中するのか、何が今回仕事として認められるのか、をシビアに判断して適切な介入を検討しましょう。

真因ってほんとに必要?

よく、真因を特定すると言うことが重要視されることもあります。確かに重要ではあるのですが、本書では、むしろ真因というのは、「打ち手」の都合によって便宜的に特定されるものであり、他の問題点と何ら変わりないと示唆を提供してくれます。

「原因」と「真因」には、言葉ほどの差異はない。
どちらも「原因」にすぎない。

次のようなポイントを重視して、ものごとの本質を突き詰めていくことを進めていきましょう。

1)「これが課題だ!」と思ったらもう一段、
  「これが課題もどきだとしたら?」と思考する習慣を
つけましょう。
2)そのうえで「なぜ?」を繰り返すのですが、
  そこに「構造的に考えてみると」をつけると思考しやすくなります。
3)原因と真因の区別は恣意的なものでしかないので、
  まるで正しい答えがあるかのように「真因」を神秘的に扱わないようにしましょう。
4)むしろ「真因」は打ち手の裏返しで、便宜的に設定したものと思いましょう。

この考え方にはなるほどなぁと思います。現場の分析をしていくと、原因がいくつも現れることがあります。たしかに優先順位はつけられそうですが、最後の4~5個位になってくるとどうしてもどれも同時に解決したくなってきます。

しかし、例えば、研修の機会や提案の場においては、「真因」という形で、特定の問題にフォーカスしておくと、“わかりやすさ”としてつながるため、設定しやすくなるし、そのほうが、「施策」の必然性を見出すことができるので便宜的に設定してしまうことがよくあります。

でも現実は、複雑系であるので、何を1つだけどうこうすれば、すべてがオセロの駒を裏返すように良くなっていくということはなく、大切なのは、案外複数にわたることがあるものなのですね。

魅せ方の1つとして、「真因」についても俯瞰して自分なりの見解を持っておくべきものという感じでしょうか。

まとめ

  • キーは論点にあり!?――サーヴァントリーダーシップを発揮しながら論点を提供しましょう。
  • 論点命!?――論点を考えることに慣れましょう。そして論点はツリー構造です。
  • 真因ってほんとに必要?――真因は都合によって変わります。大切なのは問題の質です。
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