【質問で見抜け?】いたいコンサル すごいコンサル――究極の参謀を見抜く「10の質問」|長谷部智也

いたいコンサル すごいコンサル――究極の参謀を見抜く「10の質問」
  • 最良のパートナーとの出会いをものにするにはどうしたらいいでしょうか。
  • 実は、質問でわかるかも。
  • なぜなら、定石や日頃から考えていることは、答えに現れるからです。
  • 本書は、コンサルティングパートナーとして、自らを客観視できる1冊です。
  • 本書を通じて、自らのスキルセットとマインドセットを俯瞰することができます。

コンサルティング業界は第4世代?

第1の世代は、1980年からしばらく続いていた時代です。この時代において日本では、外資系コンサルティング会社のノウハウが流入し、いわゆる日本における経営コンサルタントのイメージが定着し始めました。

第2世代は、1990年から、一流企業の異分子としてみなし始められ、刺激的な面白い話を絶えず提供するポジションを確立します。

そして、2000年代には、学歴エリートが就職し、「論理的正解」によって「財務的成果」にコミットする精鋭部隊としてのイメージを研鑽します。

ですが、今、コンサルティング業界は非常に広がり、その人的資本も玉石混交であると著者・長谷部智也さんは指摘します。「有象無象」の人材により、労働力の供給元としての色が強くなってしまったということを説きます。これを大衆化の時代として、2010年以降の“コンサル”市場を揶揄します。

長谷部智也さんは、こうした状況に危惧し、採用社が自らコンサルティングパートナーを選択するために、いくつかの質問を元に、コンサルタントの力量をはかる方法を提示します。また、それは同時に、コンサルタントが自らに突きつけられるスキルセット・マインドセットのリトマス紙でもあり得るということを意味します。

スキルは後学可能

大切なことは、コンサルタントも必ずしも天才肌の人材でなくてはつとまらないということではないということです。キーは、そのスキルセットは後学可能であるということです。特別な能力を持つスーパーマンではなく、たしかに多くの経験や場数は必要になるかもしれませんが、コンサルタントに求められる知識やスキルというのは、通常考えられうる経緯で習得が可能です。

つまり、このコンサルタントの力量を知るということはすなわち、コンサルティング会社の教育システムを知るということにもつながっていきます。社内の社員教育が果たす役割は大きく、唯一の資産であるヒトに対してどれだけのコストを割いて、投資を行っているかを知ることが「質問」の意図でもあります。

その「質問」とは?

●「業界構造」に精通しているか?
▼質問 1「わが社の属する業界の歴史と構造変化をどう見ていますか?」

●最終提言を「第 0日に 30秒」で語れるか?
▼質問 2「今回お願いするプロジェクトの最終提言の仮説は何ですか?」

●どんな数字も「自由自在に」つくれるか?
▼質問 3「わが社の中期経営計画で鍵となる施策とその利益効果の根拠は何ですか?」

●能書きではなく「アクション」至上主義か?
▼質問 4「わが社が競合に勝つために取るべき最も重要なアクションは何ですか?」

●すらすらと「定石」が出てくるか?
▼質問 5「わが社の周辺事業への展開についてどうお考えですか?」

●「直言」できるか?
▼質問 6「現在のわが社の戦略で誤っている点、見逃している点は何ですか?」

●組織の「空気感」が分かるか?
▼質問 7「わが社の『意思決定プロセスの特徴』をどう見ていますか?」

●「成功報酬」を歓迎するか?
▼質問 8「今回のプロジェクトは成功報酬でお支払いしてもよろしいですか?」

●「長いプロジェクト」経験が多いか?
▼質問 9「過去のプロジェクトで最長のもの、最大の効果を出したものは何ですか?」

●「パートナー」がしっかりと時間を使うか?
▼質問 10「今回のプロジェクトにあなた(パートナー)自身は、どれだけの時間を使ってもらえますか?」

起用する側に「見抜く力」が必要な時代

重要なのは、質問の内容もそうですが、「論点」であると思われます。経営の舵取りの参考として、その立場を自身が理解し、基本的な定石などの提言だけではなく、本当に会社のためを思ってフィードバックを提供してくれる人材かどうかが問われます。

キーは0日目?

戦略仮説を0日目に持っていることは、とても重要なことです。

コンサルティングをしていくには、実は問題提示や課題提示がされてから調べたり、考えたりしては遅いのです。絶えず日常的に情報を収集しながら、自分で特定の業界でもよいし、社会全体でも良いし、なぜ問題が起こっているのか、そしてその原因は何なのか、論点は特にどのようなポイントがあげられ、それはどうやって解決することが可能になるのか、を検討材料として絶えず考えていくことが、コンサルタントとしての知的筋肉になるはずです。

これは広告会社の人間もそうで、0日目の仮説が案外、最後まで生き残ることもあります。日頃から情報の感度をあげながら、自らの思考の鍛錬を積んでおくことで、チームに貢献したり、他社を出し抜いたりする底力を養うことが可能となります。

例えば第0日目の仮説としては、次のような論点や視点をまとめておくことが大切でしょう。

「第0日」の仮説例――成長戦略

背景:国内A業界のプロフィットプールは持続的に成長しており(2010年X億円→2015年Y億円)、その環境下でX社も過去5年間、着実な利益成長を遂げてきた(市場シェア1.5倍、営業利益2倍)

問題点の把握:今後もプロフィットプールは、年率5%での成長が見込まれるものの、X社にとって必ずしも望ましい形ではない。

  • X社が得意とする富裕層顧客セグメントXでは市場の成長は微増にとどまる。
  • 競合Y社が顧客セグメントX’で安価なサービス提供を拡大し、顧客セグメントXの一部がX’へ流出している。
  • マス顧客をターゲットとするZ社が急成長を遂げ、顧客が体験価値よりも即物的な価値を重視する傾向が、A業界のすべての顧客に広く伝播されてしまうリスクが顕在化している。

課題点と施策:こういった市場・競合環境下、X社が持続的な利益成長を実現するうえで重要な施策は以下3つ

1.顧客セグメントXでの圧倒的優位の構築:顧客ロイヤルティをさらに向上させる上で鍵となるB、C、Dの実施を通じて「顧客内シェア」の向上。
2.顧客セグメントX’で強いY社への対応策:顧客セグメントX’向け専用商品の開発と、E社とのパートナーシップによる大規模拡販施策の展開。
3.マス顧客向け認知向上施策:X社のサービスの上質感をマス向けに認知させるプロモーションの拡大と、デジタルプラットフォームによる効率的な価値提供。

これらの施策によって今後3年で市場シェアF%、営業利益G億円の実現が目指せる。必要投資額はHで、3年で投資回収が可能。

施策を推進する上で鍵となるのは、異なる事業を展開するI事業部とJ事業部の協働体制の構築。これが実現できると業界初のモデルとなり、今中期計画期間に競合を圧倒的に凌駕できる。

こうした内容を事前に想定できるかが問われていきます。そのために必要なのは、経験量もそうですが、それを補うインプットの量であると考えられます。絶えず学びを続ける習慣と体質をいかに構築しておけるかがキーです。

さらに、プロジェクトの開始前に戦略提言に不足してはいけない論点として、Where to play(どこの土俵で戦うべきか、それはなぜか?)と、How to win(決めた土俵で勝つためには、具体的にどういったアクションをとるべきなのか?)という2つがあります。

本当に難しいのは、Where to play, and when, whyという論点です。

これを考えるには、未来を予見する必要があるためです。クライアントの現状の事業領域のみを所与としてしまっては、How to winの視点にのみ固執してしまうことになり、抜本的な成長戦略を見出すことは困難です。むしろ根本から企業の成長を模索するのであれば、まだない市場、あるいは、当社が対応できうる既存の既存の成長市場などの探索と予見が必要となるはずです。

「結果を出せる」コンサルタントは“Where to play, when, why”の難しさを理解しており、そこを突き詰めて考えているので、1枚にまとめた「戦略の提言」でも、その点が伝わってくる

業界の詳細を理解し、暗黙知も含めて理解している得意先(クライアント)からみて、一般論ではなく、業界の事情を含めた点をよく理解し、新しい取り組みや発想についても振られているかどうか、と言うことが出発点となるのです。

コンサルタントの仕事については、「【「変化」を生み出せ!?】コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル|メン獄」や「【知らないと損をする!?仕事のコツとは!?】コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法|古谷昇」や「【コンサル実務とは、なにか!?】新版 問題解決プロフェッショナル|齋藤嘉則」などの投稿もぜひご覧ください!

まとめ

  • コンサルティング業界は第4世代?――“有象無象”とのことです。
  • その「質問」とは?――10個の論点を知り、両者の関係性の基礎としましょう。
  • キーは0日目?――コンサルタントとしての学びの習慣こそが重要です。
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