【いかに企業の変革は可能か?】企業に変革をもたらす DX成功への最強プロセス|小国幸司

企業に変革をもたらす DX成功への最強プロセス
  • いかにDXを成功させることができるでしょうか。
  • 実は、自社の存在意義を再検討することがキーです。
  • なぜなら、これからの時代にあわせた変革がDXの本質だからです。
  • 本書は、デジタルありきに陥らないための、DXの考え方を記した1冊です。
  • 本書を通じて、ものごとの本質をつく着眼点を養うことができるでしょう。

プロジェクト成否のキーとは?

DXを考えるとき1つの世界的事件になぞらえていくと、その成否について深く検討を進めることができます。あるいは、この事件は、プロジェクトに共通する示唆を提供してくれるかもしれません。

その事件とは、南極到達を目指したノルウェーのアムンセン隊と、イギリスのスコット隊のアプローチ手法です。1911年、前人未到の地である南極点に向けて、2つの大国がアプローチを仕掛けました。

南極点到達を目指したノルウェーのアムンセン隊とイギリスのスコット隊は、対照的なアプローチを取りました。アムンセン隊は綿密な計画と経験に基づく戦略で成功を収め、スコット隊は多くの困難に直面し悲劇的な結末を迎えました。

アムンセン隊は犬ぞりを主要な移動手段とし、軽量で機能的な装備を選びました。また、食糧補給を適切に配置し、効率的な移動を実現しました。1911年12月14日、彼らは南極点に世界で初めて到達しました。成功の要因は、計画の緻密さと極地探検における豊富な経験、そしてチームの緊密な協力です。

一方、スコット隊は多様な移動手段(犬、ポニー、モーターソリ)を使用しましたが、これらは南極の厳しい環境に適していませんでした。さらに、装備や食糧補給の計画にも欠点があり、防寒具の選定ミスや食糧不足が彼らの帰還を困難にしました。1912年1月17日に南極点に到達したものの、帰還途中で全員が命を落とす結果となりました。

アムンセン隊の成功とスコット隊の悲劇の違いは、計画の詳細さ、装備の選定、補給の管理、そして環境への適応に起因します。この対照的な結果は、極地探検におけるリーダーシップと準備の重要性を浮き彫りにしています。

2つの部隊の成否を分けたもう一つの理由が「目的」であったといいます。

アムンセン隊スコット隊
装備アザラシなどの安い革
犬ぞり
保湿性の高い牛革
速い馬たくさん
目的南極点到達南極点到達
+地質調査など複数
1日に進む距離必ず20マイル可変
アムンセン隊とスコット隊の条件

スコット隊が複数の目的を想定しているのに対して、アムンセン隊はたった1つの目標に集中することができました。また、どんなに調子が良くても、悪くても同じだけの進行をするように全員に明示したのです。

「背伸びのない選定」、「北極星(南極点の到達)の設定」、「着実に実行できる行動計画(1歩1歩)」を上手に規定したことが、プロジェクトの成功に繋がり、もっとも貴重な命というかけがえのないものを失わずに済み、さらに、目的も達成することができました。

DXの工程に非常に似通っている。

上記の事例から私たちが学ぶべきことは多くあります。例えば、最新式で高級で性能のよいツールを得たとしても、それを正しく運用できなくては、成果に繋がらないのです。過酷な環境においては、ツールの適用性もとても重要になりますし、それを正しく運用できるか、人のスキルセットなどのノウハウも重要です。

背伸びをしてはならず、自分の身の丈にあわせた計画がキーとなります。

DXについての答えの大半は組織の外ではなく中にあります。

社内や現場から課題や問題点、その解決策を見出すという泥臭いような工程を避けて通ることはできないということです。自己認識を避けて、DXが成功するということではないということを、刻みたいと思います。

DXのステップとは?

DXに関わる人、すべての考え方のアップデートが必要です。素直に人の話を聞き入れながら、受け入れて、着実に実行するためにこれまでの常識を捨て去る必要があるためです。また、DXの担当者は、全社的に縦のレイヤーからすべての人材を投入し、意識調整の上、プロジェクトにあたっていくことが大切です。

経営自らがその目的や必要性を認識したうえで、全社最適の視点から、現場を主導していくことです。そうでなければ、全社をこれからの時代に合わせた変化を続ける組織体にしていくことは難しいのです。

重要なのは、会社の内部だけでものごとを考えるのではなく、外部との接点をポイントに、自社がいかに価値を生み出し提供し続けられるかという発想で、最適化をしていくことがキーです。

改革や革新を行っていくには、次のようなステップを検討しましょう。

ステップ1)基本方針の検討と経営層などの責任者の合意
ステップ2)現状の把握と情報収集
ステップ3)テーマとなる具体事項の推進

これらのステップを循環させ、外部環境の変化にあわせて、あるいはそれを取り込みながら、自社をアップデートしていく行動を絶やさないことがポイントになります。

それぞれのステップの特徴と意味は次の通りです。

ステップ1:基本方針の検討と経営層などの責任者の合意

DXの最初のステップは、組織全体の方向性を決定する基本方針の策定です。ここでは、DXの目的、目指すべきビジョン、具体的な成果指標などを定義します。この段階で重要なのは、経営層や他の主要なステークホルダーの合意を得ることです。経営層の支持と理解がなければ、組織全体の協力が得られず、DXの成功が難しくなります。また、基本方針が決まれば、それを社内外に明示し、DX推進の共通理解を形成します。

ステップ2:現状の把握と情報収集

次に、現状の業務プロセス、システムインフラ、デジタルスキルのレベルなどを詳細に把握する段階です。これには、各部署やチームの現場の声を集め、既存の問題点や改善可能な領域を特定する作業が含まれます。また、業界動向や競合他社のDX事例など、外部の情報も収集して、組織の現状と将来のDX戦略の基礎を築きます。この段階での情報収集が適切であれば、DXの方向性がより具体的かつ効果的になります。

ステップ3:テーマとなる具体事項の推進

最後のステップでは、DXのテーマとなる具体的な施策を推進します。ここでのテーマは、現状分析から導き出された課題や改善点に基づいて設定されます。例えば、新しいデジタルツールの導入、業務プロセスの自動化、データ駆動型の意思決定の促進などが考えられます。各施策には、責任者を明確にし、具体的な目標と期限を設定します。また、進捗を定期的にレビューし、必要に応じて軌道修正を行うことで、DXの推進を確実にします。

大半の企業のDXプロジェクトにおいては、経営陣から「DXを行いたい」という要望があり、その具体策を考える過程でさまざまな社内の意見や思惑、時には足の引っ張り合いが発生しプロジェクトは混乱します。

それを修復し続けながら、最適な答えを探し続けるスタンスを保つためには、ビジョンを最初に持つことです。アムンセン隊の成功を参考にするべきなのです。最初に何を目的にするか。

しかも、その北極星たる目的をシンプルに描き出すことなくして、DXや変革プロジェクトはなし得ないということです。

DXの起点にあるものとは?

ビジョンの設定において特に重要な点は、自社内の関係者の合意形成と納得、そして共感を得ておくということです。これをなくして、チーミングは困難です。目標やビジョンの設定の場面では抽象的・理想的な言葉や流行語が使用される傾向にありますが、そうした“かっこいい”あるいは“聞こえのいい”言葉を必ずしも使う必要はありません。

自社の現状に即した内容を反映するキーワードを活用して、関係者の理解の深さを求めていきましょう。

重要なことは、具体性です。

例えば、「DXを行うことで何か経営にインパクトを出したい」という要望が出たとします。漠然とした要望だけでは、何を行って、どんなインパクトを出すのかがはっきりしていません。

これでは、何を具体的に変革していけばよいのか、所与の条件がわからずにプロジェクトが発散してしまします。

そこで、企業の現状や改革の工程、さらには、その結果もたらす効果とビジョンについて、事前に検討して具体的な表現として落とし込んでおく必要があります。

さらに、その先に見つめておきたいのは、顧客との関係性です。企業が存続するためには、利益確保が不可欠ですが、利益というのは顧客価値の裏返しです。顧客価値というのは、顧客の定義が欠かせません。当社がどのような顧客に対して、どのような価値を提供していくのか、その関係性を改めて考えてみるというのが、実は、DXの起点となるということになります。

DXの本質として重要なことは、企業が時代に合った形に生まれ変わり、競争力を確保していくとうことです。

大切なことは、デジタルありきではじめるということではなく、自社の問題は何なのか、そこから見出される課題は何か、その先に実現していきたい顧客や社会との関係性というのはどういう姿で描けるのか、ということを把握することです。

DXは決して難しいことではなく、このシンプルな営みにより生まれるのです。

自社の本質(存在意義・存在価値)に向き合うプロセスこそが、DXの出発点であるということを意識しましょう。

起点として、パーパスの設定を大きなヒントとして見出すことができるかもしれません。パーパスについては、こちらの1冊「【理解してる!?】パーパス「意義化」する経済とその先|佐々木康裕,岩嵜博論」をぜひご覧ください。

まとめ

  • プロジェクト成否のキーとは?――背伸びのない選定、北極星の設定、着実に実行できる行動計画です。
  • DXのステップとは?――3つのステップを循環させアップデートを図っていきます。
  • DXの起点にあるものとは?――自社の存在意義です。
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