- どうしたら、本質的なDXを果たせるでしょうか?
- 実は、デジタルを一旦忘れることかも。
- なぜなら、フィジカルな領域にこそトランスフォームのヒントは隠されているからです。
- 本書は、本当にDXを目指すときにケアしておきたい最初のマインドセットに関する1冊です。
- 本書を通じて、いかに改革を実施するか重要なポイントを押さえることができます。
デジタルで得られる恩恵は?
そもそもDXを行っていく時に、デジタルを活用することになりますが、デジタルの特徴とは何でしょうか。それは次の5つに分類することができます。
1.膨大な量のデータを、処理できること。
2.距離を超越できること。
3.時間を超越できること。
4.複雑な論理も処理ができること。
5.創造的になること。
複雑な問題を、膨大なデータを駆使し、分析することで、思考に自由が与えられて、より正確にタイムリーに判断を下しながら、新しい価値創造の活動を検討することができるようになります。
イノベーションへのアプローチも容易になります。
大切なのは、デジタルとは上述のとおり、あくまで手段であるということです。人の活動のサポートをすることがデジタル活用の前提ということになります。
だから、大切なのは、人の活動をどうデザインするのかということが起点にないかぎり、単にデジタルツールやSaaSを導入してみた・・以上!ということになりかねないのです。
そもそもDXとは、何を指すのでしょうか。
経済産業省によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「企業がビジネス環境の急激な変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、業務そのものや組織、企業文化を変えることにより、競争優位性を確立すること」を指します。
具体的には、単なるITシステムの導入や改善を超えて、デジタル技術を中核に据えた業務の全面的な見直しや、新しい価値の創造が求められます。この定義では、企業がデジタル技術を活用して既存の事業プロセスやビジネスモデルを革新し、市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応することで、持続的な競争力を確保することが強調されています。DXは、企業が市場環境の変化に対応しつつ、成長を遂げるための必須の戦略とされています。
キーは、ビジネスモデル、業務プロセス、企業文化にいたるまでの改革をするということです。会社全体を新しい変化の時代にふさわしいものとしてアップデートするトランスフォーメーションであることを前提に検討を進めていくことにしましょう。
DXの3つのキーとは?
DXを要素分解してみましょう。
DXには、欠かせない3つのCがあります。
1)コミュニケーション(Communication)
2)コネクション(Connection)
3)コラボレーション(Collaboration)
DXの成果によって、業務プロセス自体が変革します。例えば、これまで発注をするには、見積依頼書(紙)→相見積もり(紙)→提案→発注先決定→発注書(紙)送付→納品→検収(紙)→生産依頼(紙)→・・みたいな行程を、
デジタル上のカタログ(最低価格保証済)から、1クリックで発注し、自動で伝票が経理に回っており、適切な費目で自動に処理されるような、そんな変革です。
業務プロセス(あるいはビジネスプロセス)とは全社に張り巡らされたコミュニケーションネットワークのようなものです。そのネットワークに絶えず情報が流れ込んできて、あるいは情報がやり取りされて、価値を生み出していくこともあれば、ムダやグレーゾーンの仕事を膨大に生み出していくこともあります。
全社員の連携もこうしたネットワークの一部として機能してきます。DXにおいては、その関係性とやり取りの方法、さらにはその行程の意義・意味からも疑いながら、無理ムダを排除していくアプローチを経ていきます。
この結果、DXを通じてビジネスプロセスマネジメントを図ることで、ひとりひとりの従業員や部署・部門のネットワークを再構築し、協力関係を引き出すことを経て、「全社的集合知」の形成をもたらしていきます。
何より重要なのは、ホワイトカラーの業務は情報を取り扱っているという事実です。情報は目に見えません。だからこそ、変革の初期段階ではいったん目に見えるように見える化し、誰もが一緒に取り扱い検討できる形に落とし込んでみることが欠かせません。
2つめのコネクションというのは、経済産業省の「製造基盤白書(ものづくり白書)」2018年版第1部第1章第3節「価値創出に向けたConnected Industriesの推進」の中で、次のように発信している内容が参考になります。
“Connected Industries”とは、データを介して、機械、技術、人など様々なものがつながることで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方である。
モノとモノがつながるIoTによる付加価値創出だけではなく、人と機械・システムの協働・共創による付加価値の創出なども視野にあります。ここでも重要なのが、システムや機械に人が合わせるということではなく、“人間本位”というスタンスにたち、人がどのような創造的な仕事により深く従事できるか、という視点になるでしょう。
最後のポイントのコラボレーションとは、コミュニケーションやコネクションの延長線上に位置する考え方であると整理できます。社内外を問わず、コラボレーションをしていくには、「相手が考えていること」を知る必要があります。「何を求めているのか?」「何にまだ気づいていないのか?」そもそも「何をしているのか?」を知り合うことで、互いの資源を融通し合いながら、新しい価値を生み出す取り組みを作っていくことができるようになります。
こうしたやり取りの基盤としてデータ活用できるプラットフォームは、コラボレーションを誘発する一つの重要なコネクションになるでしょう。あらゆる状態がデータとして互いがリアルタイムに、遠隔地であっても把握することで、前提条件を共有することを省きながら、新しい価値創出の活動推進に集中することが可能になります。
そもそもなぜDXを目指すか?
DXの3つのポイントを前提に、社内に考え方を浸透し、実装していくためには、5つのステークホルダーの意識改革と調和が必要です。その5つのステークホルダーとは、以下の方々です。
1)経営者(リーダー)
2)役員(会)
3)経営企画部門
4)現業部門(部長)
5)IT部門
トップがまずDXの本質を理解し、現場任せにしないということが大前提になります。これまで日本の製造業を中心としたものづくりの業界では、現場主導のカイゼンがものを言わせてきました。たしかに昭和時代には、ひとつひとつの現場発想の改善の取り組みが生産性を向上させ、Japan as No.1の礎をなしてきたと言っても良いでしょう。
しかし、ブルーワーカーの現場の生産性はたしかに向上したかも知れませんが、残念なことにホワイトカラーの現場はまだまだ改革の余地があります。
ホワイトカラーの現場は、情報を取り扱うことから目に見えず、自ら無理ムダな仕事を膨大に生み出すことも可能にしてしまっています。結果として、あったほうがいいかもしれないし、なくてもよいかもしれない、いわゆる“グレーゾーン”業務を増殖させ、何のためにあるかも明確になっていないような会議、書類、コミュニケーションに忙殺されているのが日本のホワイトカラーであるという指摘もあります。
こちらについては、「【仕事は、本来正しく“厳しい”!?】ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか|村田聡一郎」もぜひご覧ください。
ホワイトカラーの改革において大切なのは、トップリーダーから全社的に「どのような仕事をしてほしいか」を明言することに尽きます。「とにかく、仕事を効率化してほしい」と茫洋に語るのではなく、「意味のある仕事のためであれば、グレーゾーンの仕事をどんどん辞めてもいい」ことを明確に指示することが重要です。
その思想のもと、5つのステークホルダーが互いに対話を深め、業務プロセス自体を意味あるものに変えていく過程こそが、DXとなっていきます。
また、そもそもなぜDXをするのか?という問いも重要でしょう。これについては、「これからの時代になぜ、当社は存在していくのか?」という問いにも繋がり、さらには、パーパスの規定が意味を成す大切な起点となる問いとなります。
デジタルトランスフォーメーションにおいて、達成すべき「目標」は、デジタルを活用して、この「インタンジブル=顧客満足度を向上させる企業の能力」を向上させることです。
当社が存在するのは、当社のためではなく、関係各所ステークホルダーのためです。顧客だけではなく、その先のエンドユーザー、生活者、従業員とその家族、取引先企業、業界、行政などのステークホルダーのために当社は、どんな価値をもたらし貢献することができるのかを、リデザインする取り組みが、DXの根幹を形成していくと言えます。
まとめ
- デジタルで得られる恩恵は?――時空を超え、情報を分析し、人の労働生産性を向上させます。
- DXの3つのキーとは?――コミュニケーション、コネクション、コラボレーションです。
- そもそもなぜDXを目指すか?――人が、本来的な意味のある仕事に集中するためです。