【変化を味方に?】Business Agility――これからの企業に求められる「変化に適応する力」|山本政樹

Business Agility――これからの企業に求められる「変化に適応する力」
  • 企業が変化の時代における、しなやかな成長力を身につけるためには何が必要でしょうか!?
  • 実は、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)を考えることが重要かも。
  • なぜなら、BPMこそ価値創出の根源であり、競争優位であるからです。
  • 本書は、BPMの重要性と磨き方を説く1冊です。
  • 本書を通じて、アジリティ(対応力)を高め続ける組織の在り方を知ることができます。

ビジネスアジリティとは?

ビジネスアジリティという言葉をご存知でしょうか。

これは、外部の変化に素早く対応するための組織能力を指す言葉です。企業が自らを迅速にトランスフォームする力と言ってもよいでしょう。社会の変化、技術の進展によって、変化が凄まじい勢いで起こる時代です。絶えず外部の接点を重視しながら、自社の内部構造を変え続けていかなくては、存在すら危ぶまれることもあるでしょう。

本書で取り扱われているビジネスアジリティの概念については、こちらのサイトもご参考にされてください。

ビジネスアジリティ向上のキーは、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)にあります。ビジネス、つまりニーズに対応して価値を創出し、相手方にもたらし対価を得続ける仕組みを再構成することが、アジリティを高めるということです。

BPMの活動では、ビジネスプロセスを“End to End”で見つめることが大切です。End to Endとは、企業内の各部門を横断して貫くビジネスプロセスの開始点~終了点を指す言葉です。全体視点を持ち、全体最適の元、ビジネスを再構成するイメージが必要であるということです。

例えば、サプライチェーンであれば、原材料の調達~物流や生産を経て、お客様にとどくまでがひとつのEnd to Endとなります。

なぜEnd to Endを考えることが大切なのかと言うと、結局のところ、上述の通りビジネスというのは外部に対して価値を提供することのみでしか評価されないということにあります。いくら、社内の工程を磨き込んだとしても、最終的に顧客に届ける製品やサービスの品質、あるいはコスト、納期に変化がないのであれば、それはビジネスとは言い難いものになります。

言い換えれば、End to Endとは、顧客志向のもとで自社全体を俯瞰する視点・視野と言っても良いでしょう。

これからは事業戦略よりも組織戦略が企業を強くする

これからの企業戦略は綿密な事業戦略以上に、組織戦略が大切になります。目まぐるしく変わる経営環境のなかでは、事業戦略は日々修正を強いられるため、絶えず外部接点を持ち、絶えず自らの常識を疑い、前例を覆しながら「修正主義」でものごとを進める決断、判断、思考、行動が求められるのです。これらは、まさにひとりひとりのマインドセットであり、また、組織全体の学習能力に関わるところになります。

新規事業の探索も重要なテーマです。新しいチャンレンジをする従業員を育てなくてはなりませんし、新しいテクノロジーを柔軟に取り入れるアプローチだって大切になります。

より長期的な目線に立ち、自社の組織体のあるべき姿を規定し、柔軟な思考と行動を生み出すカルチャーと組織設計を立ち上げていく必要があります。市場の変化を敏感に察知し、常に新たなことに挑戦する強い組織文化を形成し、その文化の上で、さまざまな事業が花開き、伸びる事業に集中的に投資をしていく・・ビジネスアジリティが示すのは、そうした組織像にほかなりません。

ラリーカーは、アジリティが高い?

ビジネスアジリティを見つめていくと、単一の能力ではなく、複数の能力の組み合わせによるものだと気づきます。

例えば、市場のニーズをいち早く掴む能力、迅速に意思決定する能力、当初の見込みから外れた計画をすぐに修正する能力、なにか問題が生じた業務を素早く特定し、修正する能力と言った内容が含まれます。これらが連携して、機能した際に現れるのがビジネスアジリティです。

著者・山本政樹さんは、このビジネスアジリティについて、クルマで例えるとF1カーではなく、ラリーカーであると言います。F1マシンは時速300キロメートルで走ることができますが、サーキットという限られた条件下でしか能力を発揮することはできません。しかし、ラリーカーは持続100~200キロメートルとF1カーよりもトップスピードは劣るものの、あらゆる環境下を走破します。舗装路も、砂利道も、雨や雪の中も、耐久性を試される過酷な環境を持続的に走る能力が試されるのです。

単にスピーディというだけではなく、あらゆる環境の中で、粘り強い能力を発揮し続ける力が求められているということです。

ビジネスアジリティを追求していくことは、これまでの企業組織の構造を大きく変える可能性を秘めています。

このメタファーは事業創造の在り方についての変革も示唆してくれます。これまでのように市場データを充実化させて、そのなかからベストな戦略とオプションを検討しながら、十分に計画をすることよりも、むしろ、小さくテストトライをしながら上手くいった方向性を積み重ねていくことが志向されるべきです。

トライアンドエラーの「修正主義」でビジネスを行っていくためには、実行してみる勇気、そして修正し続けていく粘り強さが不可欠です。

アジリティを高めるための3つの原則とは?

アジリティの根底には、3つの原則があります。

  • 小さく素早くはじめて、大きく育てること。
  • サイロを超えてネットワークで連携すること。
  • 個人が自律的に判断して、行動すること。

この3つです。「修正主義」すなわち、トライアンドエラーを小さく繰り返して、そこまでの成果を絶えず定義することがまず1つめのポイントです。

サイロ化というのはタテワリのことで、自部門等しか目に入らず、部分最適に陥ることです。そうではなく、全社的な観点でものごとを捉えて価値創造を検討していくことが大切です。

また、これからの時代においては、自社ですべてを賄おうとしていると変化のスピードに対応できない可能性もあります。よって、外部の専門家や企業とよりよい関係性を築きながら、対応していく相互依存型のモデルを構築していくこともとても大切です。

異なる所属の人をチームとして取りまとめていく時に、パーパスが欠かせません。何のために私たちは集まって、協業するのだろうか、その気持にこたえる言葉が不可欠です。

パーパスの設定については、こちらの1冊「【あなたのパーパスは、なんですか?】パーパス・ドリブンな組織のつくり方|永井恒男,後藤照典」などをぜひご覧頂きながら、パーパス設定の意義や意味について触れていただくのはいかがでしょうか。

さらに、スピード感が求められる現在、パーパスの元、自律的に駆動する人材の存在がアジリティを高めることは言うまでもありません。経営者は管理職がすべてを判断することは不可能だからです。

現場と経営者の間を情報がいったりきたりしているうちに、最も貴重な資本である「時間」を浪費してしまいます。また、そもそもお客様の志向が多様性を増し、さまざまなビジネスの在り方が存在する今、すべてを経営者が知り、判断していくことは、人間の能力の限界を超えてしまいます。

現場の担当者がリーダーであり、そして、経営者に上がれば上がるほど、実はフォロワーシップを発揮するという視点で、現場に上手に権限委譲していくことがポイントです。

リーダーシップの在り方については、こちらの1冊「【みんなリーダーになれる!?】リーダーシップの旅~見えないものを見る~|野田智義,金井壽宏」も副読本として非常に興味深い視点を提供してくれます。おすすめです。

人の役割がプロセスの実行から構造管理と変革へとシフトする

ここまでのことをまとめると、AI時代の人の役割が見えてきます。定型化された業務を遂行するのは、AIやシステムに任せれば、OKです。むしろそのほうが、効率がよくなります。

一方で、余剰資源としての人の時間が確保できたら、それをイノベーティブで創造性を必要とする業務にあたってもらうことが、アジリティ向上のためには欠かせません。

人の役割が変わった今、業務全体プロセスを見直しながら、どうしたらビジネスアジリティが向上するカルチャーが醸成できるのか、あるいは、組織構造が再設計できるのか、検討をしてみたいものです。

下記の言葉は2019年の秋ロンドンで行われたビジネスアジリティのカンファレンスにおいて、著者・山本政樹さんが聞いたプレゼンテーターの一人の言葉です。この方は、自分自身で給与の自己決定を適用し、自らリーダーシップを発揮し、自立型の組織構築を推進していると言います。

  • 自由と自立はストレスが高く、強いプレッシャーを感じてしまう。
  • 自分自身の価値(給与)を自分で決めることとは最も難しいことの一つである。
  • しかし、そのような試行錯誤こそが自分をリーダーに変革してくれた。

自らのリーダーシップをいかにとることが重要であるかを、問いてくれている言葉だと私も感じました。これからの時代の組織を考えるとき、それは同時にそこに所属する、あるいは関係性を持つ、ひとりひとりが自らがどう生きるかを問うことに、密接につながってくることを知ります。

まとめ

  • ビジネスアジリティとは?――変化の時代、自らをトランジションし、生き残り続ける仕組みです。
  • ラリーカーは、アジリティが高い?――どんな環境も走破し続ける特徴を備えます。
  • アジリティを高めるための3つの原則とは?――トライアンドエラー、協働、自律です。
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