- どうしたら、よりよい経営スタイルを持ち企業の持続可能性を担保することができるでしょうか。
- 実は、ヒントは、経営のアルゴリズム化にあるかも。
- なぜなら、全社システムによるリアルタイムな定型業務化を志向することになるからです。
- 本書は、経営と現場を変革する視点を提供してくれる1冊です。
- 本書を通じて、自社の問題点を俯瞰するヒントを得ることができます。
ヒトに労働させないように!?
前々回の投稿「【仕事は、本来正しく“厳しい”!?】ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか|村田聡一郎」、前回の投稿「【無責任なカイゼンを見直そう?】ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか|村田聡一郎」に続き今回もこちらの1冊『』をレビューしていきたいと思います。
前々回では、なぜ日本の生産性が上がらないのか、その原因をホワイトカラーの仕事に求め、ブルーカラーのそれとは全く異なるアプローチが必要であることを知りました。
さらに、前回の投稿では、カイゼンという部分最適だけではなく、全体最適による、経営からの方針と実効性が、労働生産性を抜本的に高めていくためには必要であることを学びました。特に大切になるのが、いくら時間を創出してもホワイトカラーが時間を浪費してしまう“グレーゾーン”の仕分けです。
経営者として大切なマインドセットしては、本来的に“厳しい”状態を自らと、自分がマネジメントする組織に課すことができるのか?という視点です。というのも、仕事というのは、より効率的に行いながら、その空いた時間を付加価値の高い仕事へと振り分けていくことが大切になるのです。これをサボって、“グレーゾーン”のあってもなくてもよい仕事に時間を浪費していては、いつになっても会社の労働生産性は上がらず、日本の経済も上向きになりません。大切なのは実は、経営の覚悟でもあるのです。
仕事を本来の「厳しいけれども、やりがいがある」ようなポジションに復権させてなくてはなりません。とくにホワイトカラーの力を解放させるような、人本来のより良いところを引き出すことができる組織に生まれ変わらせていくアプローチが今求められています。
トップは現場に対してカイゼンせよ!とはっぱをかけるのではなく、「少人化しよう!そのためには、グレーゾーンの業務を辞めて、もっと**な仕事をしよう」ということまでを指示し、共有せねばならないのです。
ホワイトカラーでもブルーカラーでも、企業経営にとってヒトは価値の源泉であるが、人件費はコストだ。コストは少ないほうがよい。したがってコストをかけてよいのは、コストをかけてよいと正当化できる場合に限られる。
ブルーカラーの現場では、そのために、できるだけ定型化→機械化による少人化を達成してきました。ヒトはできるだけ機会化できない部分に特化してきた努力です。
ホワイトカラーの現場でも、本来的には、定型化→ソフトウェア化を進めて、ヒトは定型化できない業務(実は付加価値の源泉となる、新規事業企画、新商品開発などのイノベーティブな業務)に割り振りをする努力をするべきなのです。
そもそも「仕事を回している」のが「人間」であるところに問題があるのだ。
ヒトという貴重な(でも、ともすると機械よりもアウトプットクオリティが一定化しないという見方もできる)資源をこれ以上浪費してはいけません。
経営アルゴリズムへ?
ホワイトカラー業務の少人化のプロセスの中で、ソフトウェアやITに頼ることになります。ホワイトカラーが、扱っている情報を大規模に処理してアウトプットすることで、ホワイトカラーの定型業務を代替し、さらには、創発に役立つデータをアウトプットすることが目的です。
ホワイトカラーの扱う媒体がデジタル化されるということは、それすなわち、データを絶えず生み出しているという状態になります。このデータを活用して自社の経営をより高度化、効率化していくのが、経営アルゴリズムです。
経営アルゴリズムとは、「自社の経営状態をリアルタイムに数値(=データ)で表し、数値ベースで微調整を重ねながら、会社を運営していく」仕組みです。
- なぜこの判断になったのか?
- それは、どの数値が、基準値に対してどのくらい上回ったからか?(あるいは、下回ったからか?)
これらをあらかじめ示しておく、ということになります。「データドリブン経営」と別の言い方をしてもよいでしょう。経営陣や管理職の意思決定は、実はかなりの部分まで定型化し、自働化できます。経営陣はいわば飛行機のパイロット。パイロットは飛行の最終責任者であり、刻々と変わる外部の環境や内部環境に対して、その能力のすべてをかけて対応し、機を地上におろさないといけないという責任を負っています。
つまり、そう考えると、システムやIT機器だけを入れれば、DXは完了するとは言い難いことに気づきます。経営から現場にいたるまで、すべての業務を一度見直し、これからの時代を生き残っていけるような全社的な変革活動であるのです。
データのあり方とは?
全社システムを検討する際に重要視したいのは、まず現在の業務を見える化し、再構成することです。システムやデジタルありきの変革を志向してはいけません。そして、もう一つ大切なのが、「ワンファクト」です。ファクトを一つにせよという当たり前のことですが、そうなっていない会社も多いのでは?
例えば「売上高」や「原価」などが、部門ごとに散在していて、経理の数字とダブルスタンダードになっていることもままあります。
また、非常に多くの企業において課題となっているのが、マスターデータの不統一(マスターデータが複数存在していること)です。製品マスター、部品マスター、顧客マスター、人事マスター、購買マスターなどのデータが部門のシステムごとに保持されていると、これらの整合性を取るだけでも大仕事になります。
「ワンファクト」を維持するベストな方法は「ワンプレイス+リアルタイム」つまりデータを保持するシステムを全社システムの1箇所だけにしておき、それらをリアルタイムに参照し、また更新する、というやり方です。
ワンファクト・ワンプレイス・リアルタイムの原則を保持することが、ホワイトカラーに新しい働き方を実現し、経営トップの経営スタイルを革新するために不可避なアクションということになります。
まとめ
- ヒトに労働させないように!?――ヒトが従事するべきは、労働ではなく仕事です。
- 経営アルゴリズムへ?――データ活用によって、経営と現場の判断を定型化していきましょう。
- データのあり方とは?――ワンファクト・ワンプレイス・リアルタイムの原則を守りましょう。